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サウナのサチコ『裸の粘土サウナー』

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サウナ支配人や熱波師をかたどった粘土造形を手がけるクリエイターにしてサウナー「サウナのサチコ」のサウナ訪問記。「ととのった」と感じるまで半年かかったという不器用サウナーならではの…
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#エッセイ

待っている女【サウナのサチコ『裸の粘土サウナー』第24回】

待たせる人と、待つ人、人間はその2種類に分かれる。待たせる人がいるから待つ人が出てくるわけで、それは至極当然のことなのだけれど。私はというと、常に「待つ側」だった。「待ち合わせに遅れることは相手の時間を奪うこと」という父の教えを守り、10代までの私は、友達との待ち合わせに遅れることがほとんどなかった。 若い頃はスマホなどなかったため、友達と口約束した場所に10分前には着いていないと不安だった。勘違いによるすれ違いはあったものの、どの相手も30分以内にはやってきた。当時の待つ

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かわいそうな女【サウナのサチコ『裸の粘土サウナー』第22回】

最近SNSを更新できない。スマホやパソコンの画面を見ていると気持ちが悪くなってくる。別に炎上したわけでも、アンチコメントに悩んでいるわけでもない。私は「野球肩」になってしまったのである。言っておくが野球など一度もやったことがない。まあこの「野球肩」というのは別名で、正式には「肩インピンジメント症候群」と言う。 症状としては腕を後ろに広げると激痛が走るというもので、ピッチャーのようにボールを振り投げるような動作をすると痛いというように覚えてもらうとわかりやすい。これになってか

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何のために誰のために【サウナのサチコ『裸の粘土サウナー』第21回】

急に思い立ち、四国に行ってきた。 毎週聴いている高知放送のラジオ。その番組でリスナー飲み会をするというから、高知まで行くことにした。体力がないくせに、変なことに馬鹿みたいな力が出る。いつもラジオから流れる声で姿を想像するだけだったパーソナリティやディレクター、私と同じようにメールを番組に送り続けている人たち、彼らを実際に見ることができるのだ。面白そうというそれだけで、私はもう自分を止められなかった。 急に旅に出るのは、そう簡単じゃない。私にも仕事がある。一人にできない母がい

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やりちぎる女【サウナのサチコ『裸の粘土サウナー』(第17回)】

その女と出会ったのは偶然。ある温浴施設のレディースデイ。出入りが激しいせいで、ちっとも熱くならないテントサウナ。口には出さないが、誰もがこんなはずじゃなかったと思っていた。 するといきなり一人の女が立ち上がった。そして「私の汗がついたタオルで悪いけどっ」と言いながら、首に巻いていたタオルで室内の熱を攪拌し始めた。潔癖な私はすぐ外に避難しようと思ったが、時すでに遅し。女は私に向かってタオルを振り始めた。冷え切っていた室内のどこにあったのか、熱さの塊が私の体に直撃してきた。なん

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【サウナのサチコ『裸の粘土サウナー』】第14回「アップダウン」

私はかなり運の良い人間です。「いやあんた鬱じゃん!」と突っ込まれたら何も言い返せませんが。鬱でも運がいい人間はいるんです。ただ私の場合、結果的に運が良かっただけかもしれませんが。 先日、女優の鈴木杏さんのアトリエ展に行ってまいりました。杏さんがサウナーであることを、皆さんご存じでしょうか。私は全く知りませんでした。2年前、杏さんが私のインスタをフォローしてくださるまでは。

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【サウナのサチコ『裸の粘土サウナー』】第13回「占いからサウナへ~よしかわ天然温泉ゆあみ」

ホームサウナを持たない私が、6月だけでもう5回も行っている。 どうしてと聞かれると「近いから」と一応答える。が、電車だし乗り換えもあるし、本当はそこまで近くはない。まぁ駅近で便利ではある。 改札を出て最初の交差点を渡ったらいきなり見えてくる。

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