僕らいつまで[散文詩]

いったい僕ら、いつまで走らされる?
ありもしない理想郷のために、
誰も為し得ない目標のために、
お互いがお互いを監視しあいながら、
これでいいのかと疑問を持つこともゆるされず、

深い谷底まで
二重螺旋で引きずり込みあって、


君の悲鳴が聞こえた
気がして振り返ったら、もうそこに君はいなかった
君はとっくにつめたくなっていたんだろう。
僕は鈍いから、
僕に力は無いから、
君をすくいあげることはできなかった。救えなかった。


新たなる君は、どう思うだろうか
この声はどう聞こえるだろうか
“僕らほんとうにこのままでいいのか”
“僕らあたりまえの、どこにでもいる、だから貴い生き物だったはずじゃないか”
”あたりまえの、ことさえも、ゆるされなくなるのだろうか”

君には聞こえただろうか
これから先、聞こえるだろうか
月がもう一度満ちる頃には、君のもとまで届いているか?


僕らが望むのは、こんなことじゃないはずだろう?
今いちばん欲しいのは、心の底から湧き上がる声だ。駆け回る姿だ。そして素顔だ。
僕は君に、
君の笑顔に、君の泣き顔に、君の怒り顔に、
そのままで、そのままの君で、会いたいんだ。
余計なものはとっぱらって、
武装は全て脱ぎ捨てて、
僕のところまで。預けてみせて。

どうかこわがらないでほしい。
僕はもとから何も持っていないのだから。
君さえ気づけば、ほら、そこに<封殺すべき敵>なんかいないから。
僕ら最初からすべて、拓いているんだから。



2021/5/22  15:15  表現の一部を変更:L15/届くだろうか