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20230831 日録(力と交換様式ちょっと読んだ)


読書:交換様式って何が嬉しいんだ問題

 テレワーク中のBGMとしてaudibleでなんか聞こう、という機運。小説をいくつか触りだけ聞いてみたが、なんとなく違和感がある。
 結局、柄谷行人『力と交換様式』を聴くことに。第一部終章に入ってすぐのあたりまで聴いた。
 3年くらい前、学部生のころに「多分我々の世代が大学でマル経の講義やってる最後の世代だろうしこの際覗きにいくか」という極めて失礼な理由でマル経のゼミに参加したことがある。そのとき、私は「労働価値などの尺度を規定していない状態で小麦と鉄という異質な事物の間に交換が生じる理由が分からない」と延々とゴネ続け、煙たがられた。どうも本書ではこの辺の議論が部分的にではあるがなされているようで、ちょっと興奮した。しかもそれが、ヴェーバーとマルクスの対立(上部構造は下部構造を規定しうるvs下部構造がすべてを規定する)の対立を解消する種になるとのことなのだから尚更。柄谷は「上部構造」に帰せられてきた「力」の源泉を生産様式ならぬ「交換様式」に求め、交換様式がいかに国家や宗教を生み出すかについて論じている。
 とはいえ、柄谷に興味が全然なく、著作を読むのがほぼ初めてということもあって、聴いてる時は交換様式がどう分かれていて互いにどう関係しているのかがいまいち飲み込めていなかった(こうして文章にまとめてみるとなんとなく分かってきた気がする)。贈与論にやたらこだわる人(前に読んだ山泰幸『江戸の思想闘争』とか…)もそうだけど、贈与とか交換があります!という話をしたがる人のモチベが分からない…というのが聴いていた時の感想ではあった。それと、議論が結構飛躍するので、その度に「は!?」と大声を出してしまったりもした(自宅だと大声出しがち)。ダーウィニズムと資本主義を結びつけるくだりとか、農業/工業と霊を認めない/認める態度の連関とか…。それから、正直なところ、マルクスもフロイトも、とりわけフロイトは議論の説得性に何ら寄与しないのでいい加減葬送していいんじゃないか…と思う。
 とはいえ、今振り返ると「不可能なはずの交換が霊の力により実現し、変節して宗教や国家を召喚してDに至る」というのはストーリーとしてそこそこ面白い気がしてきた。できることなら、霊がどこから生まれるのか、各種交換様式はいかにして生まれるのか、どのように相互作用するのか…について踏み込んで論じてほしい(聞き逃しただけでやってるかも)。
 仕事しながら聴いていたこともあり、細かい議論とかは全然拾えておらず、交換様式ABCそれぞれがどう互いに作用するのかみたいなことも全然掴めてない(そこが本丸なのでは?)。明日、この辺の話してそうなところを倍速で聞こうと思う。案外audibleはこういうやや柔らかめの思想書と相性が良いのかも。普通に紙で読んでたら集中力が切れて床に積んでしまっていた気もするし…

 彼氏と電話。『訂正可能性の哲学』が良かったらしい。実際面白いんだと思う。
 柄谷のモチベが分からんという愚痴を吐き、それからバーグルエン賞とかいうアメリカのよく分からん金持ちが作ったよく分からん賞ーー今まで人文屋でさえほぼ誰も知らなかった謎の賞ーーを柄谷が受賞した途端にやれアジア初の偉業だなんだと騒ぐ連中は誇りをどこにやったんだという怒りをぶちまける(話題が古すぎる)。彼氏から、柄谷は中国で読まれててユク・ホイが推薦したらしい、みたいな話を聞いてやや納得。それから、後期柄谷のモチベは確かに謎だけど文春新書から出てる『「力と交換様式」を読む』が参考になるかも、と教わった。


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