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サンクコストとフリーミアム

「課金」と聞くと、ひと昔前でいえばごく一部の限られたゲーム狂がするもの、くらいなイメージだったが、今では私自身もサブスクリプション制などの課金で得られるアプリケーションを楽しんでいる。

ネットビジネスにおいてほとんどの場合、「フリーミアム」という体制が取られていることがほとんどで、これがネットにおける課金の閾値を下げた効果は大きい。

フリーミアムというのはフリー+プレミアムの造語であり、最初は無料なんだけど、あとあと課金してくださいね、もしくは課金したほうがお得ですよ、という形態のことである。


ゲームにおける課金は「北風型」と「太陽型」に大別される。

「北風型」は怪盗ロワイヤルとか、メイプルストーリーに代表される、今でも大きな部分を占める課金形態ではある。ストーリーを進めるにつれて、周りが強くなっていくために勝ちたいなら課金していこうという形態。この場合、消費者は消耗戦になっていく。課金をした人だけが勝ち残り、課金をしていない人はだんだんと辞めていき、課金ユーザーも際限のないお金の使い方は出来ないので課金継続率も低くなる。外圧をかけて課金させる手法はあまりいい手段とは言えない。

一方で「太陽型」の課金形態はというとパズドラやアングリーバードに代表されるものである。基本的にはフリーでできるけど、コンティニューしたいときは課金してね、という形だ。課金しなくても時間がたてば同じエリアに挑戦は出来るものの、今までかけた時間を考えるとどうにも無駄にしたくない。こういう心理を利用して課金を促す。

今までかけたけど戻ってこない時間=サンクコストと呼ぶが、人は時にこれを過剰に評価してしまう。何年も付き合った相手に浮気や不倫をされたのになんとなく許してしまうのは、いままでかけた時間がもったいないと無意識で感じてしまうからだ。そういう人が読者にいるなら言っておくが、今すぐ別れようそういう人とは。私自身も経験しているが、人付き合いにおいて裏切りにはサンクコストは低めに見積もったほうが良い。

ゲームの開発側もこのサンクコストを巧みに使って課金へと誘導してくる。盤面の終盤になって体力が足りなくなった、あと数回攻撃できれば勝てるのに負けてしまう、そんなときに「コンティニューしますか?」なんて聞いてこられたらイチコロというものだ。

実際に童話「北風と太陽」でも勝利を収めるのは太陽のほうだった。


サブスクリプションはこういうサンクコストとはまた別で、フリーミアムのそもそもの意味と同一化しているが、ゲームにおいても最初は同じ手を使っている。フリーで強化できるアイテムだったり、蘇生できるアイテムだったりを渡すことで、それを使うとどんな効用があるかを事前にお試しさせてくれる。でも毎回はあげない、欲しければ課金してねという形。

こういう課金は消費者に「選んでいる」という実感も抱かせることによって、かなりの課金継続率を維持できるそうだ。人はコントロールが大好きということも相まって、この太陽型の代表とも言えるサブスクリプションは大成功をおさめた。私もネットフリックスやアマゾンプライムから、逃げられない体にされてしまった。


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