数字を正しく読む

「少子高齢化は社会問題である」と言い切れないのではないか、というお話です。

先日、市の広報を眺めていて気付きました。「我が市は確かに死亡率が出生率を上回っている。そして人口も毎月減少している。しかし転入数と転出数がほとんど一緒で、世帯数はむしろ増えている」と。

そこから我が市の動態が気になったので、調べてみました。参考にしたのは政府統計の総合窓口「e-Stat」です。

まずは人口関連を調べました。

画像1

画像2

画像3

画像4

見事な少子高齢化と人口減少の合わせ技です。典型的な地方都市と言っても過言ではないでしょう。

次に、気になっていた世帯数を調べました。

画像5

やはり増えています。これは核家族が増えたこと、単身赴任者や外国人労働者が増えたこと等が原因と考えられます。

さらに課税対象所得の推移を調べました。市民がどれだけ稼いでいるか、ということですね。

画像6

1995~2000年のバブル期よりは下がっていますが、あまり悲観するような推移ではないような気がします。

ここまでの結果だけを単純に読み解くと、あまり面白くない、むしろ将来に不安を感じてしまうかもしれません。しかし、これらの数値を組み合わせると、興味深い結果が得られます。

まず、総人口あたりの課税対象所得です。市民全体の稼ぎを単純に総人口で割った数値です。

画像7

2010年から2015年にかけて、若干増えています。ただ楽観視してはいけません。「市民ひとりあたりが少しリッチになってきた」と読み解くのは正しくないかもしれません。いわゆる「格差」はこのグラフから読み取れないからです。

15~64歳のひとりあたりの所得割合はどうでしょうか。高校生も入っていますが、いわゆる「働き盛り」世代です。

画像8

これも増えています。ただ、めちゃくちゃ稼ぐ人もいれば、全然稼げない人もいるという現実は、やはりこのグラフから読み取れませんので、まだ楽観視は出来ません。

では、15歳未満のひとりあたりの所得割合はどうでしょうか。

画像9

これも明らかに増えています。15歳未満の稼ぎはほとんどゼロですし、市民の所得は税収に比例しますから、これは単純に「子供ひとりあたりにかけることが出来るお金が増えている」と言えるのではないでしょうか。

くどいですが楽観視できる状況ではありません。少子高齢化を放っておくわけにもいきませんし、地方の課題であることに間違いはありません。ただ、「子供が減っている!」「高齢者が増えている!」「人口が減っている!」ということだけを切り取って物事を考えると、その解決策にズレが生じてしまうのではないかと思います。「そういうことじゃないんじゃない?」と。

先のグラフでは、子供ひとりあたりにかけられるお金が増えている可能性が見えました。こういう「良さげな面」も併せて、地方のこれからを考えていけたら良いなと思います。

ではまた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?