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地図がしゃべくる奇天烈小説「独白するユニバーサル横メルカトル」を読んで

地図がしゃべくりまくる小説、「独白するユニバーサル横メルカトル」を読んだ。平山夢明著。とんでもない奇作だった。
タイトル通り、「ユニバーサル横メルカトル」が独白をすると言う内容なのだが、「ユニバーサル横メルカトル」とはなんなのか。
これは地図の表記の一種なのだ。社会の授業などで「メルカトル図法」を習ったと思うが、UTM図法といって、実際にメルカトル図法の一種として存在するらしい。長いタイトルだが、「じゅげむじゅげむ…」とただ適当な文字を連ねただけのタイトルではないのだ。
主人公である地図「ユニバーサル横メルカトル」図法は、非常に丁寧な言葉遣いで独白を重ねていく。地図界にもプライドは存在するようで、例えばカーナビゲーションシステムは「馬鹿げたゲテモノ」と一刀両断する。

このような馬鹿げた世界観を「ユニバーサル横メルカトル」はつらつらと説明していくいかに自分が「御先代」と絆を結んでいたかを証明するように。
そこからの話がハードすぎて驚く。馬鹿げた世界観と丁寧な語りと「御先代」の冷たい暴力(個人的に役所広司あたりが演じそうな冷たさ)の3つが重なり、物語はどんどんドライブしていく。はじめは「御先代」との絆の自慢だった独白に、物語が乗っかっていくさまが面白い。

おすすめ小説なのでぜひ読んでほしい。ちなみにぼくのいちばん好きな箇所は女の胸の底で唸る〈ぐぅ〉という声である。あなたは?


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