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驚かされた生徒の話

 お越しいただきありがとうございます。

 受験コーディネーターの廣川です。

 29回目の投稿です。


 今回は、塾講師をしていた頃の生徒について書いていこうと思います。

天才的な生徒

 ほとんどの年度で、二クラスあるうちの下のクラス担当だったのですが、何回かは両クラスとも担当したことがあります。そうなるとすべての生徒の実力を把握しているので、生徒のクラス変更もスムーズに出来ますし、そのタイミングも生徒の反応をみて、本人に相談もしやすかったですね。

 授業は両クラスともほぼ同じですが、練習する問題の難易度や問題数が違うので、上のクラスに行ったものの、戸惑いを見せている生徒は、すぐその日の授業後に相談して、戻ると言えば、次の日にはクラス変更していました。もちろん反対に、上がりたいと相談を受ければ、実力差を埋めるために具体的にしなければならないことを伝えたり、気持ちというか意識を高く持たないと本人にとってマイナスになってしまうので、しっかり話しました。

 そのときは受験対策の授業も自分が担当していたので、手作りのテストもレベルに合わせて二種類作成して、毎週授業で時間を割いておこなっていました。授業の開始と同時にテストを20分、その間に自分は生徒の宿題の答え合わせをしておき、テスト終了で答え合わせをした宿題の間違え直しを生徒がしているうちに、自分はテストの採点を急いでやり、終わり次第にテストの解説をしました。テストは70点を合格ラインとしていて、各クラス向けに重要ポイントを強調していました。

 そのテストは、ほとんどが入試問題を利用していましたので、実践的な対策になっていたと思います。ある日、生徒が「先生、それって、そうに解かないとダメなの?」と言ってきました。とても実力のある生徒だったので、ちょっとワクワクしながら彼の解法を聞かせてもらいました。それは自分が説明した方法ではなく、かと言って問題集にある解法とも違っていました。しかし、そのやり方に問題はなく、ただ一般的に誰もが使える方法ではありませんでした。だから「すごいなあ、そうに考えられるのは、かなり問題を解いていないと出来ないと思うよ」と伝えました。本人がなぜそう考えたのかも言語化出来ていましたし、彼の学年1位は伊達ではなかったですね。

 数学好きな自分は、そのあとも彼のオリジナル解答を期待していました。常にオリジナル解答をしていたわけもなく、最短ルートで解答を出すことに秀でていました。彼には自分も勉強させてもらいました。今は立派なドクターになっているはずです。

必死だった生徒

 さらに彼に触発されて、命を削るほど勉強した生徒がいました。中学三年生の10月に授業のあとに相談があると言ってきました。話を聞くと、この地区の上位校にどうしても行きたいんだけど、どうしたらいいのか教えて欲しいとのことです。

 さあ困りました。そこは先ほどのオリジナル解答する生徒の志望校で、相談してきた生徒はそのとき偏差値52くらい、行きたい高校は最低でも65で、つまりかなり厳しい状況でした。本番まで五か月無いような時期でしたので、勉強量が足りるのかあやしいことも伝えました。

 「可能性は無いですか?」

 そう言われて「無い」とは言えませんでした。すると

 「あるんですね? だったら方法を教えてください」

 彼の圧に負けてしまいました。担当している科目は実力が分かっていましたが、他の科目は模試の結果しか知りませんでしたので、総合点で合格ラインを越える作戦を伝授して帰宅させました。

 自分の中では、伝えた通りに出来なかったり、身体を壊すようなら止めようと決めていました。思っていた通り、だんだん瘦せてきて、年明けのころには、かなり元気を感じられない状態になっていました。そろそろ限界なので、ジャッジしなければならないのではと思っていましたが、こんなに頑張っている生徒を止めて良いのかと葛藤していました。

 しかし、残り時間もなくなるので、心を決めました。ジャッジの基準を設定しました。それは授業時間が二時間半の休憩無しなので、途中で休憩の意味も踏まえて、ネタ話をしていましたが、そこで他の生徒と同じように笑っているようなら止めない。もし、その話を聞く余裕も無くなったら止めようと思いました。

 彼は最後までしっかり笑っていました。あとは神様だけが知っていると受験に送り出しました。正直言ってギリギリ、いやちょっと足りないかなあ、が自分の最終評価でした。もう本番の問題に得意な、対策して来たものが出てくれることを願っていました。

 受験生はみんな頑張っていますよね、頑張ったら報われるとは限りません。。当時は、まだ携帯電話も持っていませんでしたので、当日受験した本人に聞くこともなく、翌日の新聞に掲載された問題を見て、彼の合格を確信しました。どうやら彼は神様に好かれたようで、問題に恵まれました

 五か月無い期間で、あそこまで実力を上げたのは、後にも先にも彼しかいませんでした。彼は立派な父となり、今でも頻繫に我が家を訪ねて来ます。


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最後までお読みいただきありがとうございました。

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