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今日を肴に、今宵も一杯。③春巻き

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長いこと担当していた大きな案件が終わった。
幾度となく修正を繰り返し、私もデザイナーも連日ヘロヘロになりながらやっていた案件が…!
叫び出したい気分だ。やり切ったぞーーー!(小声)


校了の電話をもらってからは、メールを打っていても自然と笑みが溢れ、隣の席の後輩とハイタッチ。関わった各部署の人たちに連絡をするたびに「やっと終わったねー」「おつかれさまでした」と声を掛け合う。


大型台風が近づいているとは言うけれど、私の心は晴れやか。
こんな日は、祝杯をあげるしかない。

大好きなクラフトビールもいいけれど、今の私の気分に合わせるなら、キリンビールの「晴れ風」だ。


今年4月に発売されたばかりの新商品で、発売前からCMで話題となっていた晴れ風。
喉越しがいいのに軽やかですっきりとした味わいなので、どんな食事にも合わせやすくて発売日以降も度々購入している。


さて。せっかくの週に2回の貴重な晩酌の日。
せっかくなら美味しく食事に合わせたい。

…そうだ、今日はアレを作ろう。


本当はロース肉がいいけど、今日は家に残っていた半端な豚こまを細く切る。
筍の代わりの蓮根と人参、しいたけを細い千切りにし、白ネギをみじん切りに。筍高かった…。
ごま油で豚肉を炒め、色が変わってきたら、ふやかしておいた春雨と切っておいた野菜、枝豆、きくらげを加えてさらに炒める。

そこに鶏ガラスープやオイスターソース、紹興酒を加えて軽く煮たて、火を止めて片栗粉でとろみをつける。出来上がった餡を薄い皮で包み、端を水溶き片栗粉でとめたそれを高音の油で揚げると、シュワシュワッと軽やかな音が弾ける。


そう、晩ご飯は春巻きだ。
しかも今日の私は抜かりない。王道の具材に加え、青じそ&梅入りと、チーズ入りも作っている。ふふふ。

揚がった端から、どんどんテーブルに置いたバットの上にひょいひょいっと置いてゆく。
息子と夫の前には、ご飯と週末につくっておいた小松菜のナムルと夏野菜の焼き浸し、そしてトマトと卵の中華スープを並べる。うーん、完璧な布陣。


私はというと、洗い物を簡単に済まし、帰宅してからすぐに冷凍庫に入れてキンキンに冷やしておいたグラスに晴れ風を注ぐ。


その間にも息子と夫は、枯れ葉を踏んだ時のようにパリパリッと軽やかな音を立てながら、積み上がった春巻きを次々平らげていく。待って。私のも残しておいて。


やっと席についた頃、春巻きを頬張る。
わー美味しい。(語彙力)

どうせ自分で作るんならと、好きな具材を詰め込んだけれど、ちゃんと皮はサクッとして、とろみの強い中の餡が熱々で嬉しい。筍の代わりの蓮根もシャキッともちっとしているし、お酒の代わりに入れた紹興酒とオイスターソースのおかげでちゃんと中華っぽい風味。

欲張って餡を詰めすぎてちょっとはみ出ていたり、巻き方が美しくなかったりと、形は少々歪だが、それもまた手作りならでは。酢醤油と辛子をつけてもやっぱり美味しい。うわー美味しい。(2回目)
あ。パクチーと海老の春巻きがあってもよかったな。


「『春』を巻く」なんて、そんな洒落た名前誰が考えたんだろう。やっぱり筍とか蕗のとうとか春が旬の野菜が入っているからかな…。
そんなことを考えている間に、バットの中はすっかり空。


作るのは手間と時間がかかるのに、食べるのはあっという間。
そんな料理を作るのには、少々やる気と体力がいるが、バフがかかった今みたいな時には「作る喜び」と「食べる喜び」がさらに増す。


お皿を洗う旦那の後ろ姿を見ながら、今日の充実感に浸る。
さて。明日は、見ないフリして机の端に置いていた仕事を片付けるために頑張ろう。

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