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公共空間のインテリアも”カスタム”で他と差別化?

2020年2月18日から21日まで幕張メッセで開催された「国際ホテル・レストランショー」では、前回書いたLIXILブースのほかにも住宅インテリア関連で沢山の魅力的なブースがあった。

この展示会は事業者向け。だから本来はホテルやレストラン向けの家具が展示される。しかし、そのまま家庭でも使えそう、というよりもむしろ、ちょっとセレブな家にお呼ばれした気分になる家具が目立った。

公共施設の場合、「オリンピック後は、より個性を発揮しなければブランドとして生き残れない」という危機感が背景にあるのかも知れないが、自分たちのアイデンティティを家具に込めて他と差別化する流れが加速していると感じた。

お店にも、個性とカスタムの波。ただし、「なんだか落ち着く」空間であるためには重厚すぎず、「なんだか素敵」と感じさせる親しみやすさを残すイメージだ。

特注など朝飯前、の飛騨産業

岐阜県飛騨高山の家具ブランド、飛騨産業(HIDA)。洗練された自社工場と職人を抱えた完全国内生産にこだわっている。飛騨産業のコントラクト事業部の今回の展示は、「特注家具、承ります」。従来のラインナップをベースに、導入先の企業のニーズに合わせて、ファブリックや素材を特注化したモデルを展示して、個性的な店を演出するアイテムとしての活用を呼びかけていた。

ホテル需要が一段落し、教育、医療、福祉、オフィス等、すこしリッチでぬくもりのある空間が求められているいま、小員の感覚にはピッタリの企画だ。

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飛騨産業は、2019年の夏に、飛騨高山の広大な敷地にある巨大工場を見学させていただいたことがある。

そこでいちばん驚いたのは、これだけ巨大でありながら、すべてが受注生産だということ。在庫を管理するための特別な倉庫がないのだ。

そしてもうひとつは、工場の従業員ひとりひとりが「匠」として大切にされていること。

だから彼らからすれば、「特注家具」など朝飯前なのだ。

その一端はステレオサウンドHiVi誌の2019年11月号「シネマinホーム」のAVボードのコーナーで紹介したが、ブランドのポリシーのようなところまでは誌幅の都合で語れなかった。この機会なので、その内容はこのnoteで回を改めて紹介することにする。

多彩なアイテムでデザインと機能をアピールするパナソニック・ホーム

パナソニックは、ユニットバス シャワールーム i-X INTEGRAL(イークス インテグラル)を展示。
「陰翳礼讃」というキャッチで、日本らしい月の光と影を表現する贅沢なシャワールームの世界観を見せた。ホテル向けなのだが、このようにリラックス空間に抽象的で自然環境の記憶を呼び覚ますような設えが、これまで取り残されてきたバスルームにも及んできたと感じた。

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寝室も陰影礼讃のコンセプトが生きているが、興味深いのはその横のデスクまわり。デスクを照らすダウンライトは、ブルートゥース接続でスマートフォンなどの音源を再生できる、スピーカー付きダウンライトだ。

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ダウンライトの周りをフィボナッチ関数のようなメッシュ部分が囲み、ここから音が聞こえる仕組み。

最近は、宿泊者が備え付けあるいは自身のスマートフォンでテレビを操作できるホテルもある。このブース展示はそれをイメージしたものだ。

一般家庭でも、調理中の奥さんやゲストが好きな曲を流すシーンに合いそうだ。ただ、テレビと接続してリビングで使うにはすこし力不足のようにおもうし、何より、照明とスピーカーで給電を分けておかないと昼間はスイッチOFFで音が出ないというのがつかいにくい。

やはり在室中のみ照明やテレビなど全家電が動作するようなホテルの客室向けアイテムだと思う。

ベッドは軽量化へ向かう(日本ベッド、シモンズ)

一方で、ベッドメーカーの展示を見ると、デザインよりも機能のアピールが。ホテル需要が終わり、これからは堅実にコツコツと使い勝手などをアピールしていこうとする姿勢を感じた。

なかでも”軽量化”がひとつのトピックと見た。

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日本ベッドは、商品としてリリースするまでに数年掛ける覚悟で、マットレスの軽量化に取り組んでいる。
スプリングタイプのマットレスの場合、本体重量の大半を占めるのが金属コイル部分。軽量化を図るために、使う太さや巻き線を工夫することで使用する金属の絶対量を減らすという。サポートが不足する分は、昨今の進化したウレタンでサポートする。

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シモンズは、マットレスの下のウッドボックスを軽量化。29.2kgと、重量を約3割削減したという。

公共空間こそ、一般家庭の住宅インテリアの手本

これからの時代、一般の住宅インテリア分野で求められる視点は何だろう?

若い人たちはよくお手本として”カフェのような居心地のいい空間”がいいと言う。

また、リノベーションで相談に訪れるとき、PintarestやInstagramで目にとまった写真を持ち込んで、イメージを伝える。被写体はもちろん、自宅や誰かの家よりも、”映える”ように設えられた、どこかにある公共空間だ。

そうなると、公共空間は一つの試金石として、一般家庭のインテリアの手本となっているわけだ。ここは毎度お馴染みの●●です、というような大手のチェーン店のどこか見慣れた空間は、人々に魅力的な空間として記憶に残らない。

だから、家庭用と業務用とは、必然的に区別がなくなっているし、これから一層その流れが促されるのは必然なのだ。

この空間の雰囲気を創り出しているのはどんなアイテムなのか、それをどう設えているのか。同じ服を着ても憧れのアイドルと同じ魅力を放つとは限らないように、審美眼と編集力を磨くのが大切だ。


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いい音&大画面があることで日々の暮らしが豊かに。住宅というハコ、インテリアという見た目だけでない、ちょっとコダワリ派の肌が合う人たち同士が集まる暮らし方を考えていきたいと思っています。