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「FXの聖杯」公開に向けて 19 前提が間違っていたら、結論も間違ってしまうというお話

 個人投資家がFXで負けるのは、「前提が間違っているから、導き出す結論も間違っている」「思い込みで推論するから、結論も間違っている」のが主な原因です。本ブログでも指摘しておりますが、「確率」、「損切り」、「レバレッジ」がその典型です。

今回は、テクニカル分析について、取り上げたいと思います。



1   思い込みで推論するから、結論も間違っているということ


1.1 問題を解いてみよう

 今回も、著者らしい問題を用意しています。読者の皆様よろしくお願いします。

(1)アメリカの国民皆保険制度


問題

 ドイツ・フランスなどの先進国は、日本と同じ社会保険方式である国民皆保険制度を採用しています。しかし、同じ先進国でありながら、アメリカは、日本のように全国民をカバーする国民皆保険制度を採用していません

その主な理由は、何でしょうか。

(2)日本人の感性という前提がもたらす推論の限界

 日本人の感性としては、
せっかく国が個人の健康を面倒見てくれるのに!
 なぜアメリカが国民皆保険制度を採用しないのか腑に落ちない。

②医療費の高騰で国の財政負担が大きくなりすぎるから?

民間の保険産業を儲けさせるため?

自己責任思想

となるのではないでしょうか。

(3)正解するには、日本人の感性を推論の前提としないこと


 この問題の正解は、日本人の感性を推論の前提としていては、解くことはできません。では、どのようにすればよいか。


そのためには、「日本人の感性という思考枠組みの前提」を乗り越える作業が必要となります。

つまり、日本人の感性や考え方を前提としない「新たな思考枠組み」
を作らなければならないということです。

そのためには、アメリカの歴史、特に「アメリカ独立戦争」を学ぶことにより「新たな思考枠組み」を構築する必要があります

(4)アメリカ独立戦争

 アメリカ植民地の住民が独立への道を歩み始めたきっかけは、 アメリカ植民地に対するイギリス本国による課税の強化等です。そして、それは、主に議会の法律による「侵害」というかたちで行われました。

ようするに、国家が、法律により「個人の自由を侵害」していたわけです。

言葉を換えると
イギリスは、アメリカ植民地の住民の「国家からの自由」という自由権を侵害していたのです。

そして、当時のアメリカ植民地の住民は、法律によって何でもかんでも口を出すイギリス本国の態度に我慢ならなかったのです。
このようなイギリス本国の態度が、法律であろうと何であろうと「国家は、我々の自由を侵害するな」というアメリカ人の怒りを爆発させたのです。

(5)現在のアメリカでも変わることはありません

 そして、このアメリカ独立戦争時の精神は、現在のアメリカでも変わることはありません。
アメリカ人は、何よりも「国家からの自由」という自由権を侵害する行為を嫌うのです。

アメリカ独立戦争 - Wikipedia
国家からの自由(こっかからのじゆう)とは? 意味や使い方 - コトバンク (kotobank.jp)

(6)解答

以上の歴史考察からすると、
国民皆保険制度が、「アメリカ独立戦争」当時と同じになっていないかを検討すればよいのです。

つまり、イギリス議会の法律によるアメリカ植民地の住民への「侵害」というかたちと同じになっていないかです。

そうすると、国民皆保険制度は、イギリスがアメリカに変わっただけで、それ以外は変わっておらず、アメリカ議会の法律によるアメリカ人への「国家からの自由」という自由権を侵害する行為となります。

したがって、本問の解答は、

国民皆保険制度は、
アメリカ議会による、アメリカ国民の「国家からの自由」という自由権を侵害する行為であるため、アメリカ国民の反発にあい制度として採用されなかったです。

もっと端的にいえば、アメリカという国家による「人権侵害」が答えです。

これは、日本人の感性

せっかく国が個人の健康を面倒見てくれるのに!
 なぜアメリカが国民皆保険制度を採用しないのか腑に落ちない。

のように、国家が個人の福祉を保障してくれること、つまり、国家が個人の自由に干渉してくることを、人権の基本だと思い込んでいる「日本人の感性」を前提としていては、今回の問題は決して解けなかったはずです。

2 上記問題をテクニカル分析に敷衍(ふえん)すると


2.1  チャートの本来の役割


(1)価格変化の歴史を学ぶため


 チャートは、現在の価格と同じ状況が、過去に起こっていないか「歴史を調べる」のに便利なツールです。
似た状況があれば、通貨ペア2国間の「その当時の歴史」、経済状況、政策金利、各国中央銀行の政策、GDP等を調べる契機を提供してくれます。

そこで得られた知識と、通貨ペア2国間の「現在の」経済状況、政策金利、各国中央銀行の政策、GDP等を調べることにより得た知識をあわせ考察することにより、どのような方針でFXに取り組むかという「正しい前提知識」を獲得できます。

特に、大暴落や大暴騰を起こす引き金がないか考察するのに重要です。

(2)売り買いの現在の需給関係を教えてくれる

 しかも、ローソク足は、売り買いの現在の需給関係まで教えてくれます。
売り買いの現在の需給関係と、(1)で得た「正しい前提知識」によりさらに考察を深めることができます。

2.2  テクニカル分析という間違った前提知識

 

(1)チャートを未来分析のツールに変えた論理のすり替え

 いつから、チャート未来分析のツールへと論理のすり替えが行われたのかはっきりとした資料はありませんが、その方が都合のよい方々が大勢いたのでしょう。

相場予想屋、テクニカルアナリスト、証券会社などなど。

チャートができた当初は、2.1が主な目的だったはずです。それを誰かが、未来分析のツールへと論理のすり替えを行いました。

けれど、その結果は、読者もご存じのとおり、テクニカル分析を使用したおびただしい数のFX敗者を生み出しました。

それもそのはずです。なぜなら、価格変化の歴史を知る、需給関係を知るためというチャート本来の役割・前提、未来分析のツールという間違った前提になってしまったら、当然、導き出す結論も間違ってしまうからです。これでは、FXに勝てる訳がありません。

テクニカル分析で勝っているのは、ごく少数の才能ある方々です。テクニカル分析に優位性があるのではなく、テクニカル分析に意味をもたらすことのできるごく少数の方々の「個人の才能」にすぎません。


3 相場では、自分の思考力だけがたより


 相場では、自分の思考力だけがたよりです。そして、思考力により正しい結論を導くには、「正しい前提」がなによりも大切です。前提が間違っていたら、結論も間違ってしまいます。

今回は、このことをアメリカの国民皆保険制度を使って解説しました。


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