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なぜFXトレーダーは損切りできないのか?心理学で解明するトレードの謎と解決策

はじめに

FXトレードを始めたばかりの初心者や、ある程度経験を積んでいるトレーダーでも、共通して抱える悩みがあります。それが「損切りができない」という問題です。損切りはトレードにおけるリスク管理の基本中の基本でありながら、なぜか多くのトレーダーはこれを実行できず、気がつけば損失が膨らんでしまうことがよくあります。

では、なぜ多くのトレーダーが損切りを躊躇するのでしょうか?この記事では、心理学的な視点、特にプロスペクト理論に基づいて、その理由を解き明かしていきます。そして、どうすれば損切りができるようになり、長期的に成功するトレーダーになるのかを具体的な対策も含めて解説します。


1. プロスペクト理論とは何か?

損切りができない理由を説明する際に欠かせないのが、プロスペクト理論です。この理論は、ダニエル・カーネマンとエイモス・トベルスキーによって提唱されたもので、人がリスクに対する意思決定をどのように行うかを説明しています。

簡単に言うと、プロスペクト理論は、人は利益よりも損失を強く嫌うということを示しています。具体的には、同じ金額の利益と損失があった場合、損失による心理的な痛みは利益による喜びの約2.5倍も強いとされています。このため、トレーダーは損失が出た時に、それを認めること(損切り)が非常に難しいと感じるのです。


2. なぜトレーダーは損切りができないのか?

では、具体的に損切りができない理由を、プロスペクト理論に基づいて深掘りしてみましょう。

【理由1】損失を確定させたくない心理

損切りをするということは、すでに発生している損失を確定させる行為です。多くのトレーダーは「このポジションは回復するかもしれない」と期待を持ち、損失を確定させることに強い抵抗感を抱きます。なぜなら、損失を確定することで、心理的な痛みを直視することになるからです。

事例:損切りできなかったAさんの場合 AさんはFXを始めて半年ほど経つトレーダーです。ある日、ドル円のポジションを持っていたところ、予想とは逆に相場が大きく動き、10万円の損失を抱えることに。しかしAさんは「今は一時的な下げで、いずれ相場は戻る」と信じ、損切りをしませんでした。しかし、相場はさらに下落し、損失は20万円に。その後、Aさんはついに30万円の損失を出して損切りを余儀なくされました。

このケースでは、最初の10万円の損失の段階で損切りをしていれば、30万円の損失を避けることができたはずです。しかし、Aさんは「損失を確定させたくない」という心理から、ズルズルとポジションを持ち続けた結果、損失が膨らんでしまいました。

【理由2】回復の希望にすがる心理

もう一つの理由として、トレーダーは「相場が回復するかもしれない」という希望にすがることが挙げられます。人は損失を目の前にすると、それを取り戻そうという心理が働きます。この心理が損切りを妨げ、最終的には大きな損失に繋がります。

事例:Bさんの期待が裏切られたケース Bさんは、ユーロドルのポジションを持っており、当初は利益が出ていました。しかし、相場が急に反転し、利益がゼロになっただけでなく、5万円の損失が出てしまいました。Bさんは「いずれまた上がるだろう」と思い、損切りをしませんでした。しかし、相場は再び下がり、最終的に10万円の損失を出すことに。

このケースでは、最初に小さな損失が出た段階で損切りをしていれば、トータルでの損失は少なくて済みました。しかし、「相場が回復するかもしれない」という期待が損切りを遅らせ、結果的に大きな損失に繋がってしまいました。


3. 損切りができない理由を理解することで対策を立てる

損切りができない理由を心理学的に理解することで、その対策を立てることができます。重要なのは、損切りができないのは自分だけではないということ、そしてそれは人間の心理的な本能に根差しているということです。この仕組みを理解することで、適切な対策が可能となります。

【対策1】あらかじめ損切りラインを決めておく

プロのトレーダーは、トレードを始める前に必ず損切りラインを設定します。これにより、相場が予想外に動いた場合でも、感情に左右されずに自動的に損切りが行われます。特に、メンタル面で損切りができないトレーダーにとっては、この方法は非常に有効です。

事例:Cさんの成功事例 Cさんは、これまで損切りができずに損失を抱えることが多かったトレーダーです。しかし、ある日からトレードごとに損切りラインを決めることにしました。ドル円でのトレードでは、1ドルあたり100円を下回ったら自動で損切りするように設定しました。その後、相場が下落し100円を下回りましたが、Cさんは冷静に自動で損切りが行われたことで、損失を最小限に抑えることができました。

【対策2】損失を受け入れる練習をする

損切りができない理由の一つは、損失を「失敗」と捉えてしまうからです。しかし、トレードにおいては損失を出すことは避けられないものです。損切りは「失敗」ではなく、リスク管理の一環であると認識することが重要です。

事例:Dさんのメンタルトレーニング Dさんは、損切りを「自分のミス」と考えてしまい、いつもポジションを抱え続けていました。しかし、トレーニングの一環として、少額の取引であえて損切りを行い、その体験をポジティブに受け入れる練習をしました。その結果、損切りを「失敗」と捉えずに、次のチャンスを掴むための一歩と考えられるようになりました。


4. 損切りは新たなチャンスを作り出す

損切りをすることは、一見損をしているように感じるかもしれませんが、実は新たなチャンスを作り出す行為でもあります。ポジションを保有し続けて大きな損失を抱えると、その資金が凍結され、新しいトレードの機会を逃すことになります。しかし、損切りをすることでその資金を次のトレードに回すことができ、結果的に大きな利益を得ることができるかもしれません。

事例:Eさんの再起 Eさんは、かつて損切りができずに大きな損失を出してしまい、資金がほぼゼロになりました。しかし、損切りの重要性を理解し、次のトレードでは損切りを適切に行うようにしました。その結果、次のチャンスで大きな利益を得ることができ、損失を取り戻すことができました。


まとめ

損切りができない理由は、単なる技術的な問題ではなく、私たちの心理的な本能に深く関わっています。しかし、その仕組みを理解することで、損切りの重要性を認識し、適切に対処できるようになります。損切りを適切に行うことで、新たなチャンスを掴むことができ、長期的に見て成功への道が開けていきます。損切りを恐れずに、トレードにおけるリスク管理をしっかりと行いましょう。

参考


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