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子どもが学習に「集中する」ために最低限必要な教師の知識(特別支援教育 10の問題)


Q1  「セロトニン5」とは何か。説明しましょう。

平山論氏(元倉敷市立短期大学)が提唱した以下の5つである。

見つめる。
ほほ笑む」
話しかける。
触る。
ほめる。

これら5つの教師の子どもに対する行動が「セロトニン5(ファイブ)」だ。授業が始まってすぐに「セロトニン5」を意識して全ての子どもに対応できる教師ならば、子どもがやる気をもって学習に取り組むようになる。

Q2  「セロトニン」とは何か。説明しましょう。

「セロトニン5」について説明できる人ならば、「セロトニン」の説明もできる。「セロトニン」とは、脳内物質の一つだ。「セロトニン」は心を落ち着かせる脳内物質であり、教師が「セロトニン」を意識した関わりを子どもにすれば、子どもたちは自然と落ち着く。「心の安定」「我慢強さ」につ
ながるものである。


Q3  「見つめる」はどのようなときにできますか? できるだけたくさん事例をあげてください。

「セロトニン5」の行動は、授業中のどんな場面でもできる。
算数の学習で、「教科書を出しましょう」と指示した後、きちんとやっている子に対して「見つめる」ことができる。体育で教師の前に集まった子に対して「見つめる」こともできる。
 大切なことは、教師が意識して「見つめている」かどうかである。意識すれば、単に「見ている」から「見つめる」へ変化するはずだ。相手(子ども)の黒目に一瞬視線を集中させるようになる。それだけで、子どもは「見つめられた」と思うようになる。


Q4  「セロトニン」以外の代表的な脳内物質を2つ言いましょう。

これら2つも特別支援教育だけにとどまらず、子どもの学習意欲に関連のある脳内物質だ。例えば、「ドーパミン」と「ノルアドレナリン」。

Q5  「ドーパミン」とは何か。説明しましょう。

「気持ちよさ」「快楽」に関わる脳内物質である。「運動調節」にも関わり、体を動かすと「ドーパミン」が脳内に出てくる。学習の中で「休憩して背伸びをしましょう」と体を少し動かすと子どもの集中力が高まる。これには「ドーパミン」が関係している。
 このようなことを理解した教師は、ずっと座りっぱなしの授業をしない。時折、「ノートに書いた人は立ちましょう」とか、「問題を読んだ人は座ります。全員起立」といった、体の動きをつけた授業を進めて

Q6  「ノルアドレナリン」とは何か。説明しましょう。

「ノルアドレナリン」は、ストレス時に分泌され交感神経を刺激する。授業中、集中できない子に教師が視線をとばす。これに気づいた子どもはシャキッとなってまた授業に集中する。このようなときには「ノルアドレナリン」が脳内に出ている。
 「セロトニン」「ドーパミン」「ノルアドレナリン」が子どもたちの脳内にバランスよく出てくるような対応を教師は心がけなければならない(子どもに圧力をかけて「ノルアドレナリン」にばかり頼った授業をするといつか子どもたちに反乱される)。


Q7 3つの脳内物質の内、2つを制御する働きがあるものはどれでしょう。


「セロトニン」である。「セロトニン」は、「ドーパミン」「ノルアドレナリン」の暴走を防ぐ役割を果たしている。「ドーパミン」も「ノルアドレナリン」も出過ぎるとよくない。多動の子は「ドーパミン」が暴走していると考えられ、「ノルアドレナリン」も出過ぎると「恐れ」につながる。これら
を抑制しているのが「セロトニン」である。
 教師の対応「セロトニン5」が如何に大切かが分かる。

Q8 教室で、「教科書を出して、23ページの一番の問題をノートにやって、終わったら本を読んでおきましょう」と先生が指示すると、子どもが「わかんない」「先生、どこやるの?」と言ってきます。それは何故でしょう。また、どのように指示すればよいでしょうか。

「説明が長いから」という答えでは、正解とは言えない。大切なキーワードが抜けている。ここで最も大切なキーワードは、「ワーキングメモリ」、日本語で「作業記憶」だ。子どもたちの中には、「ワーキングメモリ」の容量が少ない子がいる。特別支援教育が必要な子はもちろんのこと、それ以外の子にも少ない子が存在する。通常、3つぐらいのことならば覚えられるのだが、「ワーキングメモリ」の容量が少ない子は、1つしか覚えられない。2つ、3つと内容が追加されると前に覚えていたことは忘れてしまう。「教科書を出して……本を読んでおきます」と長く指示をしてしまうと、一番最後のことだけが印象に残って、いきなり本を読み出す場合もある。
 正しい指示の出し方は、「教科書を出しましょう」と短く一時に一事で進めていくことである。教師が当然知っておくべき対応の常識である。知らないで対応していくと子どもたちはどんどん授業から離れてい

Q9 「昨日の遠足のことについて作文を書きます」というと「わかんない」とパニックになる子がいます。それは何故でしょう。


子どもたちの中には、全体と一部を切り分けられない子がいる。どこからどこまでが遠足なのかが分からないのだ。朝学校に登校するところからが遠足なのか、それとも、校庭に並んで説明を聞くところからが遠足なのか分からない。学習意欲以前の問題なのだ。教師は、このようなことをしっかりと理解し、「遠足の中で一番楽しかったことから書き出しましょう」というよう
に具体的に限定できるように指導をしなければならない。

Q10 教科書をスラスラ読めない子がいます。その原因にはどのようなものがありますか。


様々な原因が考えられる。しかし、絶対に抜かしてはならないキーワードがある。「ディスレクシア」だ。学習障害の一種であり、「視覚発達障
害」、「失読症」、「難読症」、「識字障害」、「読字障害」とも言われる。わかりやすく言えば、書かれてある字を正確に見てとれない障害である。
 「ディスレクシア」の子どもたちには、様々な独自の視覚障害があり、「通常の教科書の行間では字が重なって見えて読みづらい」「文字とその文字が表す音とが一致しにくい」「音読と意味の理解が同時にできない」「読みが出来ないため、文字を書くことがさらに困難になる」などがあげられる。その子の目の問題、目で見てとった後の処理の問題、処理した後の出力の問題など、その子に応じた対応・分析が必要であり、担任だけの対応では難しい。この「ディスレクシア」も学習意欲以前の問題である。このことを理解していない教師が、ディスレクシアの子に対して、「やる気がないからスラスラと音読できないんだ。家で百回音読してこい」という対応をしていたという。学んでいれば別の対応ができたはずだ。やる気がないのは教師の方だ。
 子どもの「学習意欲」が高まらないのは、教師の指導・対応が悪いのだ。目の前の子どもの事実に正対し、学び続けなければならない。


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