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034 人は育成できる!
人材育成に懐疑的な経営者って意外と多い。
人の能力は生まれつきの資質によると考えているのか、はなから「こいつらを育成するなんて無理」と思い込んでいるようだ。
こういう経営者に人材育成の意味を伝えるのは、ホントに難しい。
「人材育成だあ?そんな嘘をつくんじゃない」とまで言われたこともある。
もしかしたら人材育成するより経営者を納得させる方が難しいかもしれない。
理論では人は育成可能が前提である
自己決定論では「人は先天的にやる気を持つ」とされている。
人の主体性(内発的動機)について、アメリカの心理学者エドワード・デシとリチャード・ライアンは次の前提を示している。
自己決定論(SDT)3つの前提
1)人間は本質的に自分の可能性に積極的であり、先天的な自己決定ニーズを持つ。
2)人間は資質と発達に関して一人ひとり固有の傾向を持っている。
3)最適な発達や行動は自動的には起こらない。
上記を簡単に説明しよう。
人の主体性には「固有の傾向」があり、この傾向に合わせた支援さえすれば人は主体的になる、ということだ。
つまり、育成可能ということ。
これが「人材育成」の理論的な支柱になっているんだよね。
その育成段階は次のとおり。
人材育成4つの段階
1)外的調整:「馬の鼻面ににんじん」的な外発的動機づけ段階
2)取り入れ的調整:「なぜそれをするのか?」を考え出す段階
3)同一化的調整:考えるだけでなく自主的に行動する段階(自主性)
4)統合的調整:目的自体を自分で考える主体的な段階(主体性)
みんなこんな感じに一人前に育っている。
ただし、統合的調整段階にまで成長できるかと言ったら、支援者の力量が問われると思う。
ドラッカーの石切職人の説話
ドラッカーの有名な石切職人の説話がある。
ある建築現場で、三人の石工に「何をしているのか?」を聞いたら、
一人目は「これで食べている」、
二人目は「腕のいい石工の仕事をしている」、
三人目は「国で一番の教会を建てている」と答えた。
さて、問題は「どうやったら三人目のような答えを出せるようになるのか?」だと思う。
このドラッカーの石切職人の説話に、先ほどの有機的統合理論を当てはめたら、こんな感じだろうか。
◆外的調整段階:「親方に言われたからやっているんだよ」
◆取り入れ的調整段階(一人目の石工):「これが仕事だし、働かないと食っていけないからね。」
◆同一化段階(二人目の石工):「国一番の石切職人になるために、技術を磨いている。」
◆統合的調整段階(三人目の石工):「自分の技術が国で一番の教会づくりに役立つって、やりがいがあるよね」
◆内発的動機段階(四人目の石工)※:「私は皆の心のよりどころを作っているんだよ」
※ドラッカーは後日談として、これを四人目の石工の言葉を紹介している。
人はどう育成されるのか?
人材育成は、「点」から「線」、「線」から「面」、そして「立体」へ、という風に喩えられている。
ざっくり3回ほど転換期があるということだ。
成長するための認識転換
・「点」から「線」への転換は、言葉の意味が理解できるようになること。
・「線」から「面」への転換は、言葉を使って自主的に行動てきるようになること。
・「面」から「立体」への転換は、目的自体を作り上げられるようになること。
人材育成において、多くの上司が悩むのは「右も左も分からない」「言われたことすらできない」、こういう人じゃないかな。
でも、「点」の人を「線」の人に育成するのは理屈では簡単だ。
「点」を横一列にたくさん打てば「線」になるように、ある一定の業務をひたすら数多くこなせば自然に転機が訪れる。
数多く言葉に触れているうちに、その意味が分かりだすということだ。
数をこなすうちに突然違うレイヤーに突入するのは、「線」から「面」、「面」から「立体」の転換においても変わらない。
「線」の人は、「線」の業務を多数やれば、いつしか単に言葉の意味が分かるだけでなく、合理的な予測ができるようになる。
例えば、次に何をしたらいいのか予測ができれば、自ら進んで行動もできるようになる。
これが自主性、すなわち「面」の段階である。
この「面」の人も、「面」の業務を多数行っているうちに次段階の転換が訪れる。
例えば、他者との関係によって自分の成長につながることを自覚したら、目的自体を作ろうとするようになるなどだ。
この主体性を獲得したら、「立体」へ足を踏み出したと言える。
この段階、言い換えれば「内発的動機段階」、ドラッカーの「四人目の石工」である。
このように人は成長するので、支援者がどこを後押しすべきかもはっきりしているんだよね。
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