034 人は育成できる!
人材育成に懐疑的な経営者って意外と多い。
人の能力は生まれつきの資質によると考えているのか、はなから「こいつらを育成するなんて無理」と思い込んでいるようだ。
こういう経営者に人材育成の意味を伝えるのは、ホントに難しい。
「人材育成だあ?そんな嘘をつくんじゃない」とまで言われたこともある。
もしかしたら人材育成するより経営者を納得させる方が難しいかもしれない。
理論では人は育成可能が前提である
自己決定論では「人は先天的にやる気を持つ」とされている。
人の主体性(内発的動機)について、アメリカの心理学者エドワード・デシとリチャード・ライアンは次の前提を示している。
上記を簡単に説明しよう。
人の主体性には「固有の傾向」があり、この傾向に合わせた支援さえすれば人は主体的になる、ということだ。
つまり、育成可能ということ。
これが「人材育成」の理論的な支柱になっているんだよね。
その育成段階は次のとおり。
みんなこんな感じに一人前に育っている。
ただし、統合的調整段階にまで成長できるかと言ったら、支援者の力量が問われると思う。
ドラッカーの石切職人の説話
ドラッカーの有名な石切職人の説話がある。
さて、問題は「どうやったら三人目のような答えを出せるようになるのか?」だと思う。
このドラッカーの石切職人の説話に、先ほどの有機的統合理論を当てはめたら、こんな感じだろうか。
人はどう育成されるのか?
人材育成は、「点」から「線」、「線」から「面」、そして「立体」へ、という風に喩えられている。
ざっくり3回ほど転換期があるということだ。
人材育成において、多くの上司が悩むのは「右も左も分からない」「言われたことすらできない」、こういう人じゃないかな。
でも、「点」の人を「線」の人に育成するのは理屈では簡単だ。
「点」を横一列にたくさん打てば「線」になるように、ある一定の業務をひたすら数多くこなせば自然に転機が訪れる。
数多く言葉に触れているうちに、その意味が分かりだすということだ。
数をこなすうちに突然違うレイヤーに突入するのは、「線」から「面」、「面」から「立体」の転換においても変わらない。
「線」の人は、「線」の業務を多数やれば、いつしか単に言葉の意味が分かるだけでなく、合理的な予測ができるようになる。
例えば、次に何をしたらいいのか予測ができれば、自ら進んで行動もできるようになる。
これが自主性、すなわち「面」の段階である。
この「面」の人も、「面」の業務を多数行っているうちに次段階の転換が訪れる。
例えば、他者との関係によって自分の成長につながることを自覚したら、目的自体を作ろうとするようになるなどだ。
この主体性を獲得したら、「立体」へ足を踏み出したと言える。
この段階、言い換えれば「内発的動機段階」、ドラッカーの「四人目の石工」である。
このように人は成長するので、支援者がどこを後押しすべきかもはっきりしているんだよね。