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002 自律型組織への転換、フリーランスや限定正社員が増える理由

2016年に厚生労働省が発表した「『働き方の未来2035』~一人ひとりが輝くために~」では2035年の働き方について次のように書かれています。

2035年の企業は、極端にいえば、ミッションや目的が明確なプロジェクトの塊となり、多くの人は、プロジェクト期間内はその企業に所属するが、プロジェクトが終了するとともに、別の企業に所属するという形で、人が事業内容の変化に合わせて、柔軟に企業の内外を移動する形になっていく。その結果、企業組織の内と外との垣根は曖昧になり、企業組織が人を抱え込む「正社員」のようなスタイルは変化を迫られる。

様々な人材が集まり、自由度高く、様々な試みをしながら、人材の創造性やモチベーションを引き出す組織。

その担い手は、正社員、フリーランス、限定正社員など、色々な働き方が混在する。

これからはこのような自律型組織への転換が進むと考えられます。

働き手はプロティアンキャリア志向になる

つい最近まで働き手には、「一つの会社で一生働くことがよいこと」「転職はすればするほど損をする」という意識があったと思います。

また、会社側もこの視点で採用や人材育成をしていました。

しかし、一つの組織だけでキャリアを築く終身雇用の時代はすでに終わっています。

それに伴い、自らの専門性と適応能力を高め、自分のキャリアは自分で作り上げるというプロティアン・キャリア志向が高まりだしています。

プロティアン・キャリアとはアメリカ心理学者ダグラス.T.ホールによって提唱された概念です。

プロティアンとはギリシア神話の思いのままに姿を変えられる神プロテウスのことを指していますが、このプロテウスにちなんで変幻自在なキャリア形成のことをプロティアン・キャリアと呼びます。

プロティアン・キャリアの時代では、働き手ひとりひとりが自由や自分の成長のために探索行動を取ります。

たとえ会社が潰れても、職からあぶれない本質的な知識や人間力を、働き手は自ら養わなければならないということなのでしょう。

この働き手の意識の変化は、企業側にも大きな変革をせまることにもなります。

フリーランスの活用

雇用の流動化が進み、働き手のキャリア意識がプロティアン・キャリア志向になったら、会社もそれに併せた人材確保や育成の仕組みが必要なのは前述のとおりです。

そのさい、避けては通れないものがフリーランスの活用です。

フリーランスとは個人事業主のうち専門性を商品に原則ひとりで働く人のことで、自由業とも呼ばれています。

主なフリーランスをタイプ別に整理すれば次のようになります。

現在日本には1000万人以上のフリーランス(副業・兼業を含む)がいると言われています。この数は国内労働力人口の約6分の1にあたります。

米国では、労働力人口の3分の1がすでにフリーランス化しており、2027年には過半数になるという予測もあります。

今後は、日本においてもアメリカを追随するようにフリーランス人口は増えていくことでしょう。

人生100年時代においては、定年退職したあと、セカンドキャリアとして誰もがフリーランスとして働いていく可能性があります。

とくに若い世代は生涯のうちに何度も会社や職業を変えることを当然のことと受け止めていますので、フリーランスは特別な選択肢ではなくなっています。

これに加え、副業を解禁する企業の増加により、すきま時間で副業をする副業系フリーランスも増えています。

このように増加傾向にあるフリーランスですが、今回のコロナ禍によって、その増加スピードが加速するかもしれません。

テレワークの広がりにより場所や時間にとらわれない働き方が定着しつつあります。

いったん自由な働き方を知ると、さらなる自由を求めて、副業など、フリーランス化の道を歩む者も少なからずいることでしょう。

自分の生活や仕事の流儀を優先する者にとって、テレワークの流れは機会なのです。

限定正社員という第3の道

プロティアン・キャリアの時代では、フリーランスだけでなく「限定正社員」と呼ばれる働き方も増えていくと考えています。

限定正社員とは、いわゆる「正社員」と異なり、勤務時間、勤務地、職務が限定された無期雇用者のことです。

分類すれば、次の表のとおりです。

現時点で限定正社員と言うと、どちらかと言えば、正社員とパートの中間のような扱いになっています。

しかし、企業内でフリーランスの活用が進むにつれ、限定正社員の扱いは、次第に正社員とフリーランスの中間のようになると考えます。

これからの時代は、VUCA※、第4次産業革命などが本格化します。それに伴い、従来型組織のように正社員がすべてを担うのは難しくなります。

必要とされる能力が、多様化、高度化するだけでなく変動の振れ幅も大きくなるからです。

この流れに伴い、フリーランスの活用が進むわけですが、それだけでは対処しきれないでしょう。

おそらく正社員とフリーランスの中間に位置する限定正社員に対するニーズが、企業側、働き手側、双方から高まると考えられます。

さんざん言われていることですが、従来型組織の正社員のような働き方は、すでに限界に来ています。

子育て、親の介護、自己研鑽、ライフスタイル…、こららのニーズに応えづらくなっています。

収入の安定を確保しつつも、個別のニーズにも対応できる限定正社員は、この時代の流れに当てはまると考えています。

※ VUCA(ブーカ)は、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字をとった言葉で、現代の経営環境や個人のキャリアを取り巻く状況を表現するキーワードとして使われています。「今はVUCAの世界になった」というような文脈で使われます。

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