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猫の僕らが紡ぐ、おっとり父さんとあわてんぼう母さんの話 9

~とうさんのインド・おもろーな日々~

今日は僕まるの番です。みなさん、よろしくお願いします!

前回ゆきが話したとおり、とうさんはインド生まれのインド育ちです。なので、普通の日本人にはないところがたくさんあって、かあさんを時々驚かせるけど、たまに話してくれるインドでの生活は、おもろいことばかりで、今日はそのお話をするね。

とうさんのインドの家のあったところでは、朝5時くらいに(早いよね!)パン屋さんが、」焼きたてのおいしいパンを持って売りに来るんだけど、何故かその人はいつもすごいスピードで走っていくので、パンが欲しいときには、とうさんは家の前でその人が来る前に待ってないと買えないんだって。

「なんで走ってるの?」「さあ。」

パンをたくさん抱えて猛ダッシュで走ってくるパン屋さん。。。不思議だよね。

それから、一時期TVでマンゴーがもてはやされて、ものすごい値段で売られているのを見たとき、とうさんは重々しく、「マンゴーは買うもんじゃない、家の庭で採るもんだ。」って言ってた。インドの家の庭にはマンゴーの木があって、実がなるとそれを採ってきて食べてたみたい。しかも美味しかったって。だから、とうさんはTVに向かっていつも「ぼったくり!」って言ってた。

かあさんの実家の庭にはイチジクの木があって、誰も食べないから、時々くるかあさんのおばあちゃんだけが食べてたらしい。これは余談。

とうさんはインドでは結構いばっていたらしい。日本から送ってもらうサッカーボールとか、いろんな遊び道具を持ってて、それがないとみんな遊べないから、偉そうにしてたんだね。へー、あのとうさんがねえ。

インドではクリケットっていうスポーツが盛んで、学校から帰るとクリケットをするんだけど、試験の前になるとその家の奥さん(お母さん)がメイドさんに命令してクリケットの道具を隠しちゃうらしい。それで、とうさんのお友達達はその道具を出せ出せ、ってメイドさんをいじめるらしい。

けっこうひどいなあ。

とうさんが小学生になったとき、親戚の人がランドセルを送ってくれた。もちろんクラスにそんなもの持ってる子はほかにいないから、「お前、宇宙旅飛行士になるつもりか?」ってからかわれたらしい。でもとうさんはそれを背負って中学も行ったらしいから、気に入ってたのかな?ランドセル、丈夫なんだね~。

クラスで撮った集合写真を見ると、靴下と靴をちゃんと履いているのはとうさんだけで、大概の子がビーサン、または裸足。制服はちゃんとあった。

で、すごいのは、インドでは小学1年生から落第制度があって、勉強のできない子は進級できない。10歳児の教室に何故か髭の生えた大人のお兄さんとかがいたらしいよ。そこまで行くと辞めちゃう人も多いんだけど、何度落第しても来るっていう、そこがすごいよね。

家ではとうさんのお母さんが、どうしてもお風呂に入りたくて、つまりインドではシャワーしかないから、湯船に入りたくて、人に頼むといつになるかわからないし、どうせぼったくられるから、おばあちゃん、自分で作ったらしい。おばあちゃんはとても小さくて優しくておっとりしているのに、工事仕事とかが得意なのはインドにいたせいだね。

おばあちゃんはガガガガ!と機材を切ったり組み立てたり、電気工事までして、やっとお風呂ができた!そして、念願のお風呂に入ってみたら、ああ、ちょうどいい温度、いいわあ。。あれ、なんだかぴりぴりするわね?ってんで子供たちも手を突っ込んでみたら、「ママ!漏電してるんじゃないの?」っていうことになって、漏電は直せなくて、おばあちゃんの夢は潰えてしまった。残念!

お隣ではココナッツのお酒を造って生計を立ててたけど、そこのおじさんが作る傍から飲んじゃうので夫婦喧嘩が絶えない。売り物を売っちゃうんだから、おばさんは起こるよね。毎日喧嘩してたみたい。

そして、家をちょっと留守にすると、家のいろんなものがなくなっているんだって。

一度日本から送ってもらった郵便受けがなくなって、おばあちゃんは盗んだ犯人の目星がついてたから、ある日そいつの家に乗り込んでいって、「あんたが盗んだのはわかってる。返しなさい!」って怒ったら、その犯人が奥から郵便受けを持ってきて、ぬけぬけと、「お前のところは留守で危ないから、預ってやってたんだ。」って言ったんだって。盗人猛々しいとはこのことさ。

ある日かあさんも交じってとうさん、おばあちゃん、とうさんのお姉さんとお茶をしながらTVを見ていたら、あるタレントさんがロケでインドに行ってて、さっそく物売りに食器を売りつけられていた。そのタレントさんは言い値の100ルピーでほいほい買っちゃったんだけど、かあさんがびっくりしたのは、上品なおかあさんとおねえさんがほほほほ笑いながら、「あんなの10ルピーもしないわよね。」「5ルピーでもいいわねえ。」「値切らなきゃだめよね。」と言ったこと。

かあさん、そうか、物はやはり値切るべきなんだな、と心に刻んだ。そしてある日お友達と昇仙峡のおいしいキムチ屋さんに行ったとき、定価1980円のキムチをそこのおばさんが「1780円にしとくよ。」っと言ったので、ははあ、さてはここはまけるな、と思って知らんぷりしてた。奥からお兄さんが出てきて、「お姉さん、いくらなら買ってくれる?」と問われたので、かあさんは恥ずかしげもなく「じゃあ1000円。」って言ったんだって。半値だよ!半値。そしたらお兄さんが泣きそうになって、「1000円じゃあ売れないなあ。」って言って、なんやかやで、それでも1500円くらいになって、お友達がたくさん買ったんだって。感謝されたわってかあさん威張ってたけど、とうさんが日本ではやるなよ、恥ずかしいよ、って嘆いてた。

かあさんがある日、「私が死んだら、どうする?」ととうさんに尋ねた。とうさんはしばらく考えて、「ガンジス川にでも流そうかな。」と答えた。ひゃー!かあさんもしばらく考えて、「せめて四万十川にしてよ。それがだめなら荒川でもいいから。」って言ったんだけど、とうさんは面倒くさいから、近くの公園に埋めちゃおうかな、とか言ってた。

僕が思うにかあさんもだいぶ感化されて、普通の日本人じゃなくなってるような気がする。

そして、ふたりとも真冬でも家の中ではめったに靴下をはかない。とうさんがすぐに脱いじゃうから、かあさんもそれに倣え、ってことで、この冬は二人で楽しくしもやけになってた。まあいいか。

じゃあ次は雪の番だよ。読んでくれてありがとうね!

まる




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