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福岡市スタートアップ地図2023公開~スタートアップ都市ふくおか宣言から10年、スタートアップエコシステムの動向と今後への更なる期待~

1.スタートアップ地図2023公開

F Ventures LLP(拠点:福岡県福岡市博多区、代表パートナー:両角将太)は、例年作成している福岡スタートアップ地図の2023年度版を公開しました。

スタートアップ地図2023には福岡本社スタートアップ9社、福岡に拠点を持つ非福岡本社スタートアップ7社が新しく加わりました。スタートアップ企業だけでなく、支援企業や施設も着実に増えてきており、福岡スタートアップの順調な盛り上がりを感じます。

※スタートアップ地図高解像度版はこちら

2.スタートアップ都市ふくおか宣言から10年

福岡市は2022年9月、スタートアップ都市ふくおか宣言から10年という区切りを迎えました。明星和楽カンファレンス2022において行われた、福岡市の高島市長の発表に拠りますと、宣言時の2012年の福岡市スタートアップの資金調達額は約2億円でしたが、2021年には約254億円と10年で120倍超の成長を果たしました。また、福岡市内に拠点を持つファンド規模も2012年の約98億円から2021年には約477億円と4倍超の成長を果たしました。

国の動きとしては、2022年に政府はスタートアップ育成5か年計画を掲げ、スタートアップへの総投資額を2027年度までに現在の10倍超となる10兆円規模へ拡大させることが発表されました。このように国や自治体がスタートアップを支援する環境は年々整ってきているといえます。

この10年でスタートアップの裾野は広がってきました。次のステージでは福岡で創業したスタートアップがより大きく成長していくことができるかどうかに注目が集まっているのではないでしょうか。

出典:スタートアップカフェ HP https://startupcafe.jp/access-contact/

3.福岡スタートアップの資金調達2022

ユーザーベースが発表したStartup Finance 2022によると、2022年の国内スタートアップの資金調達額は8,774億円と過去最高を更新しました。福岡スタートアップの資金調達額は353億円となり、東京都に次ぎ全国で2番目の調達額となりました。
また、2022年の資金調達環境の特徴として、ベンチャーデットを活用するスタートアップの増加が挙げられます。日本政策金融公庫や商工中金の資本性ローンに加えて、地方銀行やメガバンクなどの金融機関による参入も見られました。多様化するスタートアップの資金調達ニーズへの対応が進んできていると感じます。

以下では、2022年4月〜2023年3月に資金調達を行った福岡のスタートアップについて取り上げます。

建設・製造現場向けコラボレーションツールを提供するクアンドが3.8億円の資金調達を行いました。これにより資金調達累計額は5億円となりました。遠隔からプロフェッショナルな判断を可能にする現場特化型ビデオ通話アプリSynQ Remoteの開発を行っています。また、クアンドはICCサミット KYOTO 2022、B Dash Camp 2022 Fall in Fukuoka、ICCサミット FUKUOKA 2023のピッチイベントで3冠を達成いたしました。

出典:クアンド HP https://www.quando.jp/news/news-37/

シェアサイクル「チャリチャリ」を運営するneuetが、普通社債の発行による資金調達を実施いたしました。普通社債による資金調達は今回が初めてでした。また、2023年1月にも第三者割当増資による資金調達を行いました。チャリチャリは2022年7月に福岡エリアでのライド数1,000万回を達成し、国内の政令指定都市で展開されているシェアサイクルサービスの中で最も速い到達となりました。さらに、2023年2月にはライド数1,400万回を達成いたしました。

出典:チャリチャリ HP https://charichari.bike/blog/fuk-10-million-rides-20220808

お魚サブスクサービス「フィシュル」を運営するベンナーズは8,000万円の資金調達を行い、累計調達額は1億1,200万円になりました。魚のフードロス削減を目的に、規格外とされる未利用魚も使用した、魚のミールパックを販売しています。

世界最速・最小・最軽量のAIスマートカメラ「SiNGRAY シリーズ」を展開するHMSは総額3億円の資金調達を行いました。2018年の創業以来、SiNGRAYシリーズは各種産業用及び家庭用ロボットや無人搬送車、工場自動検査設備などに視覚センサとして使用され、累計19,000台以上の販売実績を誇ります。

認知症コミュニケーションロボットの開発販売と認知症介護施設の運営を行うザ・ハーモニー株式会社が総額2億900万円の資金調達を行いました。AIを活用した認知症コミュニケーションロボット「コモモン」により、認知症高齢者の方にロボットとの会話や歌やクイズなどを楽しんでいただくことで、認知症高齢者のQOL向上や症状の中核症状の進行鈍化などの実現を目指しています。

また、台湾を中心にクリエイターマネジメントやエージェンシー事業を行っているカプセルジャパン株式会社は、1億円の資金調達と東京から福岡への本社移転を行いました。

さらに、セラピスト向けレンタルサロンプラットフォーム「minoriba」を運営するBullsは総額1億円の資金調達を行いました。minoribaは、既存のホテルやプライベートサロン、鍼灸院、整骨院などの一室をセラピスト向けのレンタルサロンとして提供しています。

その他にも、手術用支援ロボットを開発するF.MED、デジタル病理支援ソリューション「PidPort」を提供するメドメイン、リモートワークデスクを中心としたオフィス家具D2Cブランド「WAAK°」を展開するワアク、漁師の助け合い海難救助サービス「よびもり 」を提供するよびもり、栄養で顧客のパフォーマンスを最大化するアプリ「eat+」を提供するeatasなどが資金調達を行いました。

4.九州・福岡スタートアップエコシステムの動向

2022年6月にヌーラボが東証グロース市場への上場を果たしました。2023年3月にはFusicがQボードと同時に東証グロース市場への上場を果たしました。また、2022年12月にはイジゲングループが西日本フィナンシャルグループへ株式譲渡を行い、子会社化するなど九州・福岡のスタートアップによるExitが複数発生しました。イジゲングループの子会社化のように、スタートアップの技術やプロダクトにより迅速な事業の強化・拡大を狙う大企業も更に増えていくのではないかと思います。また、今後はスタートアップ都市宣言以降に創業したスタートアップのExitに注目している人も多いのではないでしょうか。

出典:ヌーラボ HP https://nulab.com/ja/blog/nulab/listing-day-report/

2023年2月には北九州市長に武内氏が就任し、12年ぶりに福岡市長と北九州市長による会談が行われました。会談ではスタートアップ支援の連携についても確認し、2023年度以降の福岡市が開催するスタートアップ関連イベントに北九州市が参加することで合意するなど、福岡市と北九州市の連携によるスタートアップ支援体制の強化が見込まれます。
福岡市はWebサービスやアプリ領域、北九州市は環境やロボット分野に強みを持つなど、異なる特色のエコシステムがあり、今後これらのエコシステムが連携することで、新たなイノベーションの創出が加速するのではないでしょうか。

5.ブロックチェーン熱は引き続き高く、行政の支援体制の整備が進む

弊社でもブロックチェーンに注目し、スタートアップへの投資やイベント開催などを行っております。福岡では企業だけでなく、自治体のブロックチェーンへの取り組みも目立ちます。

Chaintopeは福岡県の名産品である「博多あまおう」のトレーサビリティの検証結果を報告しました。Chaintopeが独自に開発したブロックチェーン「Tapyrus」を活用し、博多あまおうの輸出トレーサビリティを実証するものであり、福岡の生産者から台湾の小売店舗までの複数の取引業者を介したサプライチェーン間の一連の取引を記録し、取引業者間のトレーサビリティと取引業者視点での可視化の検証を行いました。検証結果として、進捗調査(出荷した商品がいま客先までのどこにあるか)や統計調査(出荷した賞品がどこの客先へ行っているか)の効率化、商品の物流クレーム調査における原因特定の迅速化といった効果が確認されました。今後もグローバルサプライチェーンにおけるトレーサビリティの実現に向けて取り組んでいくとのことです。他にもChaintopeではTapyrusを活用した地域脱炭素モデル構築などにも取り組んでおります。

出典:Chaintope HP https://www.chaintope.com/2022/01/19/Fukuoka_Trace2nd/

アビスパ福岡は日本初のスポーツDAO「アビスパ福岡スポーツイノベーションDAO」が2023年2月に発足しました。トークン保有者はアビスパ福岡が考案したプロジェクトへの意見やアイデア出し、投票による意思決定に参加でき、トークンやNFTといったWeb3について学ぶ場も提供されます。

飯塚市では、令和2年度末及び令和4年に行われた、ブロックチェーン技術を用いた行政文書の電子交付実証実験の成果を公開しました。実証実験では、スマートフォン等による電子申請から電子交付までの一連の行政手続きを、ブロックチェーン技術の活用により行政文書の電子データの真正性を担保し、発行元のなりすましや文書の改竄を防止した信頼性を確保した仕組みを構築しました。報告書によると実証実験参加者の8割以上が行政文書の電子交付に前向きな回答をしており、実用化への期待が高まります。

福岡市は2022年5月に仮想通貨関連ビジネスのための国家戦略特区となる可能性の提案を行いました。また、Astar Networkの国内コンソーシアム「Astar Japan Lab」に行政機関・自治体として初めて加入するなど、Web3分野での挑戦を後押しする環境が整備されてきています。

出典:Astar Network Japan 公式Twitter https://twitter.com/AstarNetwork_JP/status/1582598220315709440

また国の動きとして、自民党デジタル社会推進本部より、Web3関連税制に関する緊急提言の文書が発表されました。文書では新規発行トークンに投資した法人の期末時価評価課税や個人の暗号資産の取引に関わる課税について触れられており、トークンの発行体に対する課税のみならず、取引を生み出すエコシステム全体が日本から流出しないための税制の整備が必要となるとされています。

企業の動きだけでなく、それらの活動を支援する国や自治体の動きが増えており、ブロックチェーンは引き続き高い注目が集まると思われます。

スタートアップ地図掲載企業HP一覧

今回スタートアップ地図に掲載をさせていただいたスタートアップ企業のHPをまとめています。一部HPのない企業もありますが、ご覧いただけますと幸いです。

TORYUMON・イベント告知

U25向けスタートアップの祭典「TORYUMON TOKYO 2023」の開催を東京都内某所で予定しております。昨年12月に行われたTORYUMON TOKYOでは久々のオフライン開催でしたが、会場参加者が200名を越えるなど、大きな盛り上がりを見せました。今回も活躍中の起業家や投資家をお招きしたトークセッション、若手起業家によるピッチコンテスト等を予定しております。興味のある方は、是非ウェイティングリストにご登録下さい。

また、九州圏の若手や学生向けの「TORYUMON FUKUOKA」も開催を予定しています。福岡では中々出会うことのできない起業家や投資家の方と出会うことができる機会となっております。
TORYUMON TOKYO 2023」と合わせて、ウェイティングリストへのご登録お待ちしております。

協賛企業様、ピッチコンテスト出場者も引き続き募集しております。

「TORYUMON TOKYO 2023」
開催日程:7月中旬頃を予定
会場:東京都内某所を予定
登壇者:現在調整中
ウェイティングリスト登録フォーム:https://forms.gle/zn71h3NwHkLzmuke9

「TORYUMON FUKUOKA」
開催日程:6月上旬〜中旬頃を予定
会場:福岡某所を予定
登壇者:現在調整中
ウェイティングリスト登録フォーム:https://forms.gle/w3oAkwKuehSib5DV6

問い合わせ:https://twitter.com/TORYUMON_FV

F Venturesインターン募集

F Venturesではインターンの採用も行っております。興味のある方はSNS等のDM、弊社HP等にご連絡下さい。
代表Twitter:https://twitter.com/ryokado
弊社HP:https://f-ventures.vc/

調査概要

調査名:福岡市スタートアップ拠点調査
調査期間:2023年1月~3月
調査対象:福岡市拠点のスタートアップ、スタートアップ関連企業など
調査方法:ネットリサーチ、スタートアップ支援施設へのヒアリング等

また、スタートアップ企業の在り方やファイナンス手法の多様化などに伴い、スタートアップ地図掲載対象のスタートアップの定義を本年度よりアップデートいたしました。昨年度までの定義はこちらからご確認ください。
以下に本年度から用いる新たな定義を示します。

  • 福岡に登記をしている又は行う予定の企業、及びに福岡に拠点を持つ企業

  • 株式、J-KISS、ベンチャーデット等を用いた資金調達を行う予定又は行ったことのある企業

  • 自社独自のプロダクトや新しいビジネスモデルによって急成長を目指すチームや企業

※定義に当てはまるものの、地図の範囲外のために掲載できなかった企業もございます。

また本件に関するお問い合わせなどはSNS等のDM、弊社HP等で受け付けさせていただきます。「スタートアップ」の掲載を目的とした地図ですので、掲載のご依頼についてご希望に添えない場合もございます。
掲載依頼などはご確認の上、次回以降のスタートアップ地図へ反映させていただきます。

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