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触れれば終わりの関係

きっかけは忘れたが、別れてから数年の月日を重ねて元カノと定期的に2人で飲むようになった。

「元カノ」と表現するが、付き合おうかと話になった翌日に別れたので果たして付き合っていたと言えるのかは疑問に残る。でも相手は一時的とは言え付き合っていたことにしてくれているのでそういうことにする。

2ヶ月ぶりに会ったその日もいつも通り僕の恋愛事情や仕事の話、プライベートなどうでもいい話をしては楽しそうに聞きながら笑ってくれるのでホッとしていた。

元カノは結婚して子どもがいる。旦那さんが休みの日、かつ互いに都合が良い日に4時間ばかり酒を飲んでいた。旦那さんには「男友達と飲む」ということは伝えているらしい。その、今は「男友達」である僕が「元カレ」だという話までしてるかは不明だが。

その日はいささか危うげな空気感が2人の間を漂っていた。お酒のせいなのか、付き合う頃の話をしていたせいかは今でもわからないが。

僕が今好意を寄せている相手に対して「友だち」の関係から脱する一手をどうするべきか、というのが議題だった。

目の前に座るサングリアを飲み続ける元カノは「なんかのタイミングで手でも繋げばいい」と述べた。それは僕が君と付き合うために行ったことだった。人混みに流されそうになる君の手を引っ張り、そのまま手を繋いで歩いた記憶がある。

「あれで意識したんだよね」と告げた後、急に恥ずかしがり始めた君を見て「こいつ可愛いな」なんて思ってしまった。軽率に頭でも撫でてしまいそうだったし、頬を両手で覆いながら僕の目を見る君も君で、それは火に油を注ぐような危い行為だったのではないだろうか。

君が「人妻子持ち」ということを忘れて僕が意味を持って触れてしまったらどうなっていたのだろうか。引かれたらそれはそれだけど、そうではなかったことを考えると少し怖くなる。ギリギリなところで理性を保ち、僕らは居酒屋を出て駅まで歩く。

「またね」

僕は誰でもいいから早く彼女を作らなければと思ったが、多分それは無理だろう。そんなすぐにできる人間ならば、生きることに辛さや面倒さを覚えていない気もする。

男女間で友情関係が成立するのかどうか、なんて昔から議論されているが僕には無理なのかもしれない。

僕は馬鹿で自意識過剰な男だから、君がなんて思ってない行動ですらポジティブに解釈してしまうし、倫理観なんて境界線をアルコールの力で越えてしまいそうになる。

平静を装ってただの「男友達」を演じるのも結構大変なんだよ。そこらへん理解してほしいな。帰りの電車に揺られながらそんなことを思った土曜の夜。

君のこと「なんで好きだったのか」「どうして別れたのか」について酔っ払った頭で考えたけど答えは出ませんでした。

この文章をお読みになられているということは、最後まで投稿内容に目を通してくださったのですね。ありがとうございます。これからも頑張って投稿します。今後とも、あなたの心のヒモ「ファジーネーブル」をどうぞよろしくお願いします。