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読書の日記(4/10-16)

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『すべては1人から始まる』、「お金があってもなくても私は安心だ」、『樵る』、「「彼らがおまえをではないと」」/ベルンハルトの訳者たち、素人カメラマン、タスクとカレンダー/ポイントカード打ち合わせ、下北夜番、夜中の牛丼/ぶんちゃん、『Number』、ベルンハルト読み聞かせ/面接、ChatGPT、肋間/筋肉の質、趣味はサッカーです、ピボーテ/類型的な趣味、疲労困憊の土曜日、肋間神経痛以降の無理のきかなさ/めざましテレビ、お客さんを売ること、二十のように自身を扱い自身を荒廃させる

4月10日(月) 

日差しが強い日で電車に乗って本を開いていると眩しいのと影ができるのが交互にやってきて目の調節が求められた。虹彩というやつだろうか? そういえば週末のブライトンとトッテナムの試合も特に前半はピッチの上のほうが明るくて手前側は黒い影がのっぺりと広がっていてカメラが手前に寄せられたり奥に行ったりするたびにカメラの言葉はわからないが何かを調節するあるいは何かが調節されるのを待つあいだ白飛びしたり暗くなりすぎたりして徐々に適切な光量に収まる。『すべては1人から始まる』の著者はブライトン在住の人だった。本ももう終わるところで最後は「マネーワーク」というセクションで「それでは、言ってみよう」と著者は言う。恥ずかしいかもしれないし嘘っぽく聞こえるかもしれないが、口に出してみよう、繰り返し口に出してみよう、ということだから電車の中でゴトゴトとうるさいし口はマスクで隠れているからと思って僕は小さな声を出してみる、「お金があってもなくても、私は安心だ」。一度言い、もう一度言い、お金があってもなくても私は安心だ、だんだんそんな気持ちになっていく。せっかくだから他の乗客たちにもこの気持ちを味わってもらいたくなってくる、博愛の精神の持ち主だから。だから僕は「みなさん」と言う、「みなさん、ご唱和ください、お金があってもなくても、私は安心だ、さあ言ってみてください」。すると午後早い時間のまばらな車内の人たちは最初は怪訝な顔で僕を見つめている、あるいは目をそらす、僕がひとりひとりの顔を覗き込んで「さあ」と促すと、ゆっくりと、しかしまだ抵抗を感じながら、「お金があってもなくても私は安心だ」と言う。そうです、その調子です、と僕は言う。「トムはこう言っています」、彼らを勇気づけるために本を音読して聞かせる。

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