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超年下男子に恋をする㊴(元旦のLINEで距離が近づいて)

 私は大みそかのバイトに出たけど、彼は当然のように休み。
 年末年始は家族で過ごす。彼にとってはあたりまえのこと。

 私はやはり彼のそういうところが好きで、強く惹かれる。
 私は家庭的なものへのあこがれが強い。
 サザエさんというファンタジーに私はとても憧れていた。

 彼はお母さんの話のほかにも近くに住むおばあさんの話もする。おばあさんが冬道で転んで動けなくなったという話をしているときも、とても心配していた。

「山田さんも、冬道歩くとき気をつけてくださいね!」

 そう言って彼は心配するが、

「私はそこまで年寄りじゃないよ」

と私はちょっと苦笑い。

「え、だって、山田さんよくつまづくし。歩き方おもしろいんだもん」

 忙しいと私はあわててつまづいたり、わたわたすることがあるのだけど、そのたび彼はおもしろがって笑い、私の動きが何かのキャラクターに似てると言ってからかう。「かわいい」と言うから、バカにしているわけではないんだろうけど、あまりにも笑うので、私は少しムッとして言い返す。
 するとその顔もものまねされたり、こちらがムキになるほど喜ぶ。

「山田さん、子どもみたい」

 よくそう言われた。

 年寄り扱いなのか子ども扱いなのかよくわからない。

 友だちでもないけれど、これだけ気安くできるのは、友だちか家族ぐらいじゃないかと思う。

 実際、お姉さんより私との方がよく話すと言う。

 でもお姉さんとはそんなに仲良くないと言いながらも、高校ではお姉さんと同じ部活に入っているし、お姉さんと比べて私のことを華奢だと言ったし、十分仲いいと思う。

 単身赴任のお父さんともあまり話さず、お姉さんやお父さんと直接話すよりもお母さんを介して話すことが多いと言う。

「あんた、お母さんのこと大好きだよね?」

とか

「お母さんだってそんなに完璧じゃないよ」

とお母さん本人に言われるぐらい彼はお母さんが大好きで絶対。

 私が理想とするファンタジーな家庭を築いている彼のお母さんはやっぱりすごい人だと思う。

 単身赴任のお父さんが帰ってくるときは必ず家にいるのも当然のルール。

 家族だから一緒に行動するとか家族だから年末年始は当然一緒とか、彼の「当然」が私には本当に羨ましいもので、自分が叶えられなかった結婚生活、家庭像そのままのような気がした。

 私は彼と家族になりたいと思っていたんだと思う。それは結婚したいというのともちょっとちがって、彼の持っている「当然」の中に存在したかったんだと思う。


 年末、最後にシフト一緒の夜、大晦日の準備で以前バイトしていた人たちも含めて助っ人がラスト後やってきた。

 大晦日は通常営業はせず、年越し用のテイクアウトセットの販売で忙しい。そのための準備が夜中まで続く。

 バイトの男手が足りないということで、彼は力仕事に駆り出されるはずだったけど、なぜかずっとレジ上げの私の隣にいてなかなか手伝いに行かない。

 知らない女子も多かったし、緊張していたのかもしれない。
 まあどうせ行っても役に立つようにも思えなかったので「ここにいれば?」と私も言った。

 そして大晦日が来たけど、彼の受け付けた伝票のミスで一時混乱が生じた。彼の担当でもあった私はそのミスについて彼に伝えなければならなくなった。

 帰宅後、さりげなくミスについて伝えた。今後気をつけるようにと。こんな注意で年をまたぎたくないから、その年のうちに反省してもらって、新たな気分で新年を迎えられればと私は思ったのに、LINEの返事が遅い彼は、年が明けた直後返信してきた。

 しかも新年初LINEは「すみませんでした!」

 彼にとって最初の「あけましておめでとう」は図らずとも私になってしまった。

 それから3時ぐらいまでダラダラとLINEを続けた。

 私がクリスマスにあげたスプマンテを、年越しでご家族で飲んだという。

 本当に1000円ぐらいのボトルなのに、そんな家族の大切な年越し行事にまでとっておいてもらえるなんてちょっとびっくり。でもうれしかった。自分がそこに参加していたわけではないけれど。

 彼はお酒を飲んだからなのか、珍しく饒舌で、漫画の話で盛り上がったり、LINEでもたくさん自分の好きなアーティストのことなど書いてきた。

 しかも自分がダンスをやっていた時の動画まで送ってきたり、本当にどうかしてしまったんだろうか。

 LINEは今まで一番長く続いた。

 幸先がいいスタートだと思った。

「今年もよろしく」

 本当に今年も当たり前のように隣にいられることを願った。

 まさか会えなくなるなんて、この時は、まったく思っていなかった。

  
 

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