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【辰】龍尽くしカレンダー8月・倶利伽羅龍

8月、暑すぎると「無」に近づくのを思い出しています。
いかがお過ごしでしょうか。

先だってお知らせしましたネット環境不良につき云々、
いちおう解決しまして平常運転です。

世界的規模の通信障害とは全く関わりなく規模も至ってささやかなもの。
なにか変なハジライを感じながらの日々でした。


また、先日の「ポストカードできました」の記事


実際に購入してくださる方がいらっしゃいまして
本当にありがたく嬉しく思っております。
「購入のお知らせ」が届くたびに毎回うち震えながら喜んでます。

宣伝めいた記事でこちらも恥じらいためらいがありましたけれど、
いつも温かく見守ってくださるおかげで踏み切れました。
重ね重ね御礼申し上げます。



で、通常運転。

今月も龍を語ります。


どうぞゆるゆるお付き合いください。


これまでの龍はこちら ↓↓





8月のテーマ「倶利伽羅龍くりからりゅう



8月は浅間せんげんじゃない、宣言どおりの倶利伽羅龍くりからりゅうです!


剣をのまんとする倶利伽羅龍3体による競演(*’∀’)!
3と言えば「サン」「山」「産」、
三叉槍さんさそうみたいな構図にしちゃろう!とこうなりました。
もうちょっと送り火とかオリンピック聖火にからめればよかったのかしら…と思いつつも後の祭りです。


余談:クリカラ焼きという蒲焼きがあるというのも初めて知りました



さて、今回の題材はこんな感じです。

絹本着色不動明王二童子像けんぽんちゃくしょくふどうみょうおうにどうじぞう/高野山明王院、鎌倉時代初期
倶利伽羅龍蒔絵経箱くりからりゅうまきえきょうばこ/東京国立博物館、平安時代
絹本著色倶利伽羅竜剣二童子像けんぽんちゃくしょくくりからりゅうけんにどうじぞう/奈良国立博物館、鎌倉時代


クリカラさんは存在だけ知っていて、今回初めてマジマジ調べました。
たぶんこのお三方が有名どころにして一級品でないかと思います。


さて、ここから今月も沼のお時間です。

が、

調べ始めてすぐに「ん?んんん?」と
いつもと違う気配を感じました。

とてつもなくマニアックな話がネット上に平然とある。


そう、クリカラさんは剣。
剣がからむがゆえにそもそも「刀剣」マニアの猛者たちが!
そして言わずと知れた『某刀剣ゲーム』の界隈が熱い!

そうかそうか『刀剣さん』の沼に入っていくことになるのか、
あの熱量は激しくて、博物館や自治体も乗っかりつつ呑み込まれつつあるなぁと思っていましたがそうですか、クリカラさんもそっちですなぁ…と

と、あまりの充実ぶりに感嘆しながら色々拝読しました。


もう普通に「刀剣の時代ごとにみる龍の彫りの変化」とか考察されてますもんね。

なんだろう、この在野がすでに最高学府みたいな状況(*’∀’)!


となると私が話すことはもう何もないのです。
不動明王の化身で、剣をのみこむ龍として描かれているその由来であるとか
クリカラはクリカというインド八大竜王の1人からというものの
クリカラとクリカがなんで繋がるのか、本当におんなじものなのかとか、

沸き立つ疑問すべての回答が、ネット上に惜しげもなくあります。




ここにきて私がなすべきことはなんなのだろう…と沈思黙考。
結論、

絵的に「グッときたところ」を語るしかあるまい!


今月はクリカラさんの基本をさらっと紹介して
あとは図像のムフムフを披露いたします。



あまりに興奮して長い前置きになりました



倶利伽羅龍とは


・不動明王の化身とされる
・利剣に巻き付き、呑まんとする姿で描かれる
・剣と羂索けんさく(五色の糸をよりあわせたもの)を表す
・名前はインド八大竜王クリカに由来

はやくも「不動明王の持ち物の剣に不動明王の化身が巻き付いて呑み込むの?」と、マトリョーシカ状態になりましたが
どうやら明王さんが天界で外道と論争した際、
剣に変化したら相手も剣に変化して
「だったら呑み込んでやるよ」と、龍に変身したことに由来するそうです。
(「倶利伽羅大龍勝外道伏陀羅尼経」でお調べ下さい。)

また、不動明王とシヴァ神の同一視、
クリカ竜王自体がシヴァ神の性質を強くもっていること、
シヴァ神の持物に蛇が巻き付く杖がある。
雨龍の時に触れた神泉苑で空海も自作の倶利伽羅剣を使用、
刀剣に彫られる梵字と略式の龍たち云々。

そして特筆すべきは剣のみならず羂索という糸のよりあわせも
表しているというところ。

紐、糸、龍!(*’∀’)=3



沼は果てどない。
でもクリカラさんの見分け方はとっても簡単。
剣に巻き付き、剣先から呑み込もうとしていればクリカラ認定です。

個人的に「巻き付いているだけ」は保留にしたい所存。



倶利伽羅龍のグッときたところ


わりと書いちゃったな…と思いつつ、グッときたところのご紹介へ。

今回の題材は平安~鎌倉の作です。
日本の龍でいくと、この時代がワタクシ個人的に好きでして(*’∀’)
かるく形を参考にさせてもらうつもりがまぁまぁまぁ!
これはぜひとも現物の画像をしかるべきサイトで見て頂きたい。

最後にリンクを貼っていますので、ぜひ!
原寸大でおこしたいくらいの素晴らしい龍ばかりです。

あらためまして番付。
左から参ります。

※以下の画像で龍を着色している色は、説明用で実際の色味とは異なります


1つめ、高野山明王院蔵の通称「赤不動」に描かれたクリカラさん。

この羽みたいな火炎(おそらく)が良いですね。
胸の張り・顔のつくり、鳥と龍の出会う所を感じて非常にときめきます。
平安期の貴人遊覧船にあった「竜頭鷁首りゅうとうげきしゅ」や
雅楽の蘭陵王らんりょうおうのお面なんかと通じるところがあるのでしょうか。


2つめは當麻寺奥院たいまでらおくのいんゆかりの螺鈿箱に象られたクリカラさん。

ほかの2つは絹に描かれてますが、こちらは漆芸品です。
よって少しテイストが異なり、どっしり堂々とした雰囲気ながらも
細かな彫りによる描線が美しい一品です。

ツノや牙や上唇、もれなくこの時代の龍でありつつ独特な顔つき体つき。
堂々とした団子鼻とたくましい前脚がそうさせるのか。
一度見たら忘れられないクリカラさんです。


3つめは槇尾山施福寺まきのおやませふくじ(大阪)伝来のクリカラさん。

正直、これこそ原寸大でおこしたい!となりました。
精緻な描写で表現された凶暴すぎるその姿!

私は「話の通じないほどおどろおどろしい龍」が大好きです。


牙といい爪といい、するどい背ビレといいうごめく四肢といい…
この龍に見つかったらオシマイだなぁと思わせてくれます。

余談ですが最後のクリカラさん、変色や劣化が彩色調査的にはとてもイイカンジ。うってつけのトレーニングになると思います。私も本気で拾いたい。


今回、静かに興奮したのは「フタマタのしっぽ」ですかね。
こういうフタマタってあんまり見ない気がするんです。
しっぽの先が剣になっている彫刻とか、
魚のヒレみたいになっているものなど見所ポイントが高く
それなりに気にして見つめるパーツなんですが。

クリカラさんにはよくあることなのか…
だとしたら不動明王や密教やシヴァに由来しそうな話だなぁ…
金剛杵でもなさそうでナーガのしっぽも割れてないし…
手持ちの資料のしっぽを全部見ていったら何か見えてくるのか…

うーん、フタマタ…イルカ、シャチ?
あ、げい

げいか!


昨日の夜中ひらめきました。
クリカラさんと同じ「巻き付き系」だもの!



今月もドキドキが止まりません。






長々とお付き合い下さいまして、ありがとうございます。
そして刀剣界隈からお越しになられた方で
「なんかちがった」と思われた方がいらっしゃいましたらあいすみません。

結果として絵的な興奮に舵をきって良かったなあと思ってます。
最初は「剣と龍」でヤマタノオロチとか夜刀神やとのかみとかいきそうかなと思ってましたが、行かなくて良かった。
引き返せて本当に良かった、と安堵しています。

毎月まいつき龍の話をする自分はオカシナことをしているのかもしれない…とたまに思っていたんですが
そうこうするうちに「龍を見かけたら巳白さん」という風に思ってくださる方が増え、
龍をきっかけに仲良くなれる方がいらして、などなど
今では月イチ龍を始めた自分万歳です(*’∀’)!
あと4ヶ月、どんな龍に取り組みましょうかね。

9月以降、完全ノープランです(’∀’)

夏の盛り、うまいこと乗り切って参りましょう。
どうぞ来月もお楽しみに!



龍カレンダー8月の参考
①絹本着色不動明王二童子像/高野山明王院、鎌倉時代初期
 Wikipedia ファイルAkafudo,jpgより(下記にリンク)
②倶利伽羅龍蒔絵経箱/東京国立博物館、平安時代
 東京国立博物館画像検索 倶利伽羅龍蒔絵経箱(模造)(下記にリンク)
③絹本著色倶利伽羅竜剣二童子像/奈良国立博物館、鎌倉時代
 e国宝 倶利迦羅龍剣二童子像より(下記にリンク)


その他参考
笹間良彦.図説 龍とドラゴンの世界.遊子館,2008年



おまけ

今月の全体図


かんたん下図はこうだったんですが、相変わらずうっちゃりました





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