ショートショート 『家婆 IE-BABA』
「そんなこと必要?」
優子は言った。
「君だって嫌じゃないか? その、居もしない老人が………」
「ミヤコさん。きちんと名前を呼んで」
悟はため息をついた。
大学生にもなれば、機械のアシスタントの名前を呼ぶ、呼ばないなど意味を持たないことくらい理解しているはずなのだが。
「お父さんは好きじゃない。この家の中に、存在しないはずの誰かがいるみたいに生活するのは」
「存在すると思えば良いでしょう?」
優子は栗色のショートカットをかき上げた。「呼べば答えるし、冷蔵庫の中で少なく