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【あやめ祭り】結果公表・選評など

0.ご挨拶

皆さまごきげんよう、芙蓉セツ子と申します。水無月に入りまして早くも夏日の日々に音を上げそうなのですけれども、如何お過ごしでしょうか。
わたくし寒いよりかは暑いほうがまだ良いのですけれども、今年の夏はそれにしても厳しい暑さになりそうな気がいたしますわ――。

さて、先週から一週間をかけて催させて頂きました【あやめ祭り(第廿回俳樂會)】なのですけれども、無事に一連の行事が終了致しましたので結果をご報告させていただきたく存じますわ。
ご投句・ご選句・ご観覧頂きました皆様まことにありがとう存じました。

それでは、まず今回の総合結果と投句並びに選句の記録から参りましょう。

1.総合結果

【第廿回俳樂會】 投句者数 9名 選句者数9名 投句総数 56句
【お題】季語『杜若』『巣立鳥』『夏の灯』
    題材〔呉服にちなんだ一句〕
    折句「あ・や・め」を五・七・五の頭に用いた句

【一席(9点)】氷水そろそろ愛想尽きたやう    ペラ男
      朝日浴び宿の木揺らすメジロかな  ペラ男
【二席(8点)】雨蛙やをら閉じぬる目玉かな    芙蓉セツ子
【三席(7点)】濡れ髪に湯屋の灯涼し下駄の音   なつヲキク

《入選(6点)》荒屋の静かになりぬ巣立かな    芙蓉セツ子
      朱夏カメラ下手すぎて消えやすき猫 よるはねむる
      夏の灯やよき思ひ出も少しあり   ペラ男
      妖は潜むや夜の燕子花       村蛙

《佳作(5点)》厨にはスパイスひとつ巣立鳥    村蛙
      ざむざむと二郎へ列や桜桃忌    よるはねむる

※詳しくは上記【あやめ祭り(第廿回俳樂會)】記録帳を御覧くださいませ。
※発表文のため敬称略とさせていただきます。

2.全体的な感想など

今回は「あやめ祭り」と称しましてあやめ園より放送してみたのですけれども、如何でしたかしら。「夜桜」という言葉はよく耳にしますけれども、「夜あやめ」というのはあまり耳馴染みがありませんわよね。
けれども、暗がりの中で怪しくも紫に浮かぶその姿は眺めておりますと不思議な世界に迷い込んだようで、昼とはまた異なった趣があるように感じられましたわ。涼しいのも良いですわね。

さて、今回は今までと異なりまして、兼題5つ+雑詠5句という方式で俳句を募集いたしました。お題のうち1つは「折句」と申しまして、5・7・5の頭にそれぞれ「あ・や・め」を用いて詠んでみるという、やや難易度の高いものにしてみたのですけれども、ご参加頂いた方には存外人気のお題となりまして、皆さま果敢に挑戦してくださいました。ありがとう存じます。

結果を見ますと、丁度よい塩梅になったのではないかと存じますわ。今後もなにか新しい催しに挑戦してみたく存じますので、その際は何卒よろしくお願い申し上げますわね。

3.今回の選句

今回わたくしは次の6句を採らせていただきましたわ。

【天】氷水そろそろ愛想尽きたやう   ペラ男
氷水の溶けて崩れゆくさまと自身の内面のようなものが重なって伝わってくるように感じまして、「氷水」という言葉のもつ季感が繊細に捉えられているように感じましたわ。

【地】夏の灯やよき思ひ出も少しあり   ペラ男
夏の灯のぼんやりと闇に浮かんでいるような情景がわたくし好きなのですけれども、そのなんとも曖昧に浮かぶような趣が感じられる一句でしたわ。なんと申しますか、冬の灯とも春の灯とも異なる独特な郷愁のようなものが「夏の灯」とこの句にはあるように存じます。

【人】濡れ髪に湯屋の灯涼し下駄の音   なつヲキク
銭湯のある風景ってなんだか良いですわよね。日常のささやかな幸せと人の営みが交差するようで、さながら湯屋の灯りはその舞台を照らすスポットライトのように感じられますわ。

【福】燕子花生まれつきよく手を洗ふ   よるはねむる
燕子花の花ってなんとなく手のひらに似ていると思うのですけれども如何かしら。蕾のときの手を合わせている姿からぱっと開花するさまが、手を広げるように見えると思いまして、「手を洗ふ」にもそのような感覚でわたくしの中で納得感がありまして採らせていただきましたわ。

【禄】鳥巣立つ今年も家賃はツケのまま  わとし
可愛らしい一句ですわよね。自然の鳥ですから勝手に軒先に巣を作って勝手に巣立っていってしまうわけですけれども、なんとなくその成り行きを見守ってしまう気持ちと申しますか、旅立ちを見届けたときの心の余韻のような温かさが感じられる一句かと存じますわ。

【寿】妖は潜むや夜の燕子花       村蛙
この句は「あやめ祭り」の感想を17字で言い表して頂いたような気がする一句かと存じますわ。夜の燕子花あるいは菖蒲って普段あまり見ないのですけれども、全体の感想でもお話しましたように独特の妖しさのようなものが夜のあやめ園には感じられまして、その雰囲気が伝わってまいりましたわ。

ということで、以上6句が今回の芙蓉選なのですけれども、他にも最後まで悩んだ句など色々お寄せいただきましたわ。皆さま沢山のご参加ありがとう存じました。

4.今回の拙句

今回はお題5つと雑詠5句までということで10句を出句してみたのですけれども、もう少しお題ひとつに時間をかけたほうがよかったかもしれませんわね。力の入れ具合が少し散漫になってしまったような気がいたしますわ。

《題詠》
荒屋の静かになりぬ巣立かな
錆びきつた街の静寂や夏灯
合はす手を天に掲げよ杜若
夏衣そつと根付の揺れにけり
雨蛙やをら閉じぬる目玉かな
《雑詠》
明易や切手に託す夢一夜
五月闇少し猫背を立ててみる
長き日を忘れるやうに髪洗ふ
江戸の香に口づけしをり初鰹
愛想なき木床を頬に今朝の夏

【ご参加者頂いた皆さまの選評】

今回も選句の際に多くの選評を添えて頂きました。ありがとう存じます。
皆さまから頂きました選評は上記『記録帳』より閲覧が可能ですので是非そちらも合わせて御覧くださいませ。

また、こちらでは選評の記事も書いてくださいました。
いつも誠にありがとう存じます。嬉しゅうございますわ。 

俳樂會主催 芙蓉セツ子


おまけ:あやめ祭り当日のお寫眞

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平素よりご支援頂きまして誠にありがとう存じます。賜りましたご支援は今後の文芸活動に活用させて頂きたく存じます。