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硝子戸の蛍火淡く散りにけり

皆さまごきげんよう。
本日6月11日は七十二候の「腐草為蛍(かれたるくさほたるとなる)」だそうでして、いよいよ蛍の見れる季節も近づいてきたようですわ。

この言葉は中国の故事から来ておりまして、昔は腐った草が蛍になるのだと信じられていたのだとか。昔の方は想像力が豊かですわね。

蛍の別名には「腐草(くちくさ)」と言うものがありまして、これも同じく中国の故事が由来なのですけれども、昔の方はこのような形で自然を記録することで、一年の季節感を把握していたのかしらね。
実際に蛍は「湿った腐草」を好むそうでして、暑くなったこの季節に腐った草の繁る土の下で蛹から羽化をして、あの光る姿になるそうですわ。

昔の方は想像力だけではなくって、観察力も豊かでしたのね。

一方で蛍と申しますと有名な「蛍雪の功」という「蛍の光で勉強をした」という故事がありますけれども、これは実際には不可能なのだそうでしてよ。

――と申しますのも、蛍の光は仲間と同調して光りますので同時に点滅をいたしますの。ですから実際に蛍の光に頼ってお勉強は出来ないそうですわ。目が悪くなるのでちゃんと灯りを付けたほうが良いですわね。

この「蛍火の点滅」にはまだ科学的にも謎が多いそうでして――、
実は「関東の蛍」と「関西の蛍」では点滅の早さが違うという研究があるのだとか。同じ種類の蛍でも、関東では4秒周期、関西では2秒周期で点滅していることが確認されたそうですわ。まことに自然は不思議ですわね――。

関西の蛍のほうがせっかちなのかしら。

――このように、古来より様々な形で表現され、また愛されております蛍という不思議な存在ですけれども、人の観察力や想像力が働くことによって蛍もまた「一つの文化」として人の歴史に織り込まれて参りましたのね。

淡い蛍火のように掴みどころなく消えてしまう――、調べれば調べるほど謎の深まる、そんな昆虫かと存じますわ。「よく観察をする事」と俳句では自然を寫生するということの基本を説かれたり致しますけれども、こういったことなのかしら。

――ちなみにわたくしは昆虫全般触ることができませんので、ホタルの光も硝子戸の中から安全に見守りたいですわね。

もし近くに飛んできたら逃げますわ。


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