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240818 京都の中華料理屋

心の中に 答えの中に
確かなものは何一つ無いのに

scene through/syrup16g(アルバム"syrup16g"収録)

朝の7時ごろ目覚める。
冷蔵庫を開けるが、なにもない。来週の日曜には住んでいる部屋を出るから、あまり買い物に行っていないのだった。近くのコンビニへ朝ごはんを買いに出る。毎日とんでもない暑さだけれど、夏の朝はそこそこすずしい。

買ったパンをかじりながら粗大ゴミを出す手続きをとる。いまはコンビニで粗大ゴミシールを買わなくてもよくて、とても便利だ。
大学生のころにはじめて買った本棚。近くのホームセンターへ父親と行って、いっしょに組み立てたのを覚えている。本もずいぶん処分したから、この本棚がマンガや小説でいっぱいになっていたころが懐かしい。
いつからあるのかわからないギタースタンド。大学生時代に下宿させてもらっていた祖母の家にいたころからあったように思う。折ってしまったアコースティックギターと、なぜかガムテープでぐるぐる巻きになっていたエレキギターを立てかけていたっけ。
実家を出るときに父親に無理やり持たされたガスコンロとグリル鍋。ついぞ使わなかったな。水炊きとかもっとすればよかった。
ひとり暮らしを始めてから買った調味料ラック。「そんなのいらなくない?」という元恋人の意見を無視して買ったような気がする。確かに全然いらなかったな。
それらを処分する手続きをインターネットですませる。ものを捨てるのは、思い出まで捨てているようで未だに苦手だ。だけど仕方ない。背負えるものや手に持てるものぐらいしか持っていけないし、脳に記憶できる思い出しか覚えておけないから。仕方ないことだから、仕方ないのだ。

昼に、残っていたパスタを茹でる。冷蔵庫にニンニクと期限の切れたタマゴとがあったので、ぺぺたまをつくった。調子に乗ってパスタを200g茹でてしまい、おなかがはちきれそうになる。もう食べたくないそれをカフェオレで流し込んで完食した。

「結婚するし、ごはんでもどう?」という友人の誘いに乗って、京都へ向かう。おいしい中華料理屋があるそうだ。
自転車で最寄り駅の駐輪場まで向かって、それから環状線、そのあと京阪電車へ乗り継ぐ。お盆最後の日曜日だからか、やってきた電車はとても空いていた。
座席に腰掛け車窓を眺めた。窓が誰かの皮脂で汚れていて、とても不快だった。それを視界から意識して消して外の景色に目をやるのはとても神経を使う。変に乗り物酔いをしたから、目をつむって少し眠った。目覚めると、20代のころ通っていた大学の最寄り駅はとうに過ぎていた。

少しはやく目的地へついたので、周辺を散策しようとグーグルマップをひらく。近くに神社があるうようだったので、そこに行こうと歩を進める。京都も大阪と変わらず暑い。ひょっとすると京都のほうが暑いぐらいかもしれない。神社の前の細い道を歩いていると、向かいに結婚をする予定の友人たちを見つけた。手を挙げて挨拶をする。神社へは向かわず、目的の中華料理屋へ向かった。しばらくしてもうひとり大学の後輩がやってきて、店へ入った。

コーラとバヤリースとジンジャエールで乾杯する。いろんな中華料理を食べながら、最近の話や思い出話を楽しんだ。お互いに落ち着いたことや、見た目があんまり変わらないことを笑った。意外とみんな社会人になれていて、それがおかしく、すこしさみしくもあり、だけれど心から「よかったな」と思えた。

次の日、ちゃんと胃もたれをしていた。
寝る前に胃薬を飲めばよかったと後悔した。あまりにもおろかである。

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