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雪の日

雪が降った

少年は
まだ誰も踏み入れていない
未開の地に出会ったかのような
興奮を味わいながら
雪一面の原っぱに
足跡をつけた

サクッ サクッ サクッ
心地良い足音

寒さに震えた子犬は
そんな少年をよそに
暖炉を探した

おやじは明日の会合を心配して
気もそぞろに雪道を歩いて
毛糸の手袋を
道端に落としたまま
帰路についた

それは
おやじにとって特別な存在だった

雪はロマンチストだった

午前零時を過ぎると
雪はしんしんと降り積もり
昨日までの風景と
まるで違う
白銀の世界へ
おやじが落とした手袋を
連れ出した

手袋の中にいた
少年の心は
幻想的な雪景色に感化され
子犬の足跡を追って
一目散におやじに会いに行った

僕はキミの心の中にいた
少年だ

鏡越しに映るおやじに
少年は問いかける

少年?

そんなの
とうの昔に忘れちまったよ

いや誤魔化さないでほしい

色褪せて映る記憶の中に
キミが君らしくあるための
ほんものの心が
そこに…
おやじにそう 語りかけると

心の映写機は
カタカタ回り出した

真っさらな雪の上で
はしゃぎ回る少年と愛犬コリー
無心で雪の中を駆け回り
未来は果てしなく
少年に優しかった

それは紛れもなく
子どもの頃のおやじだった

おやじは
少年の頃の自分と再会した

とめどなく溢れる涙

生まれたてのツグミが
ふたりの再会を祝福した

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