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扉の向こう

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2020年3月の記事一覧

「波の音」

「波の音」

幾つもの糸が
絡み合って
心が窮屈になってくると
玉ねぎをみじん切りにしなくても
ささいな場面を見ているだけで
涙は溢れる

心は
ほんのひと握りの
戸惑いさえ
丁寧に拾い集め
消化しきれない量を
抱え込んで
働いている

なにがどう悲しいのか
なにがどうして沈むのか

子供の頃
夕焼け空の帰り道
道端で転んで
傷口から赤い血がにじんで
ズキズキ痛くなって
泣いた。
その悲しみは
手のひらに降りた

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