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魂が震えた瞬間

 魂が震えるような感覚を、たった一度だけ味わったことがある。
脳天を撃ち抜かれたような、時が止まったような、そんな感覚。とにかく、言葉では言い表せないほどの衝撃を受けた瞬間が、人生で一度だけあった。

あれは確か、2020年の5月ごろ。深夜、ベッドのなかでスマホを見ていた私は、たまたま、本当にたまたま、とある人物を発見した。

『なんだ?この黒い人と白いロボットは』

それが、研究開発者である吉藤オリィさんに対する第一印象。

オリィさんのXより画像を拝借

気になる……。

もう遅い時間だったにも関わらず、そこから私はオリィさんについて黙々と調べ始めた。情報が出てくれば出てくるほど、スマホを操作する指が止まらなくなった記憶がある。そして、気がついた時には短時間でものすごい量の情報を集めることに成功していた。

オリィさんが目指しているものは『人類の孤独の解消』
この白いロボットはOrihime(オリヒメ)といい、AIではなく『人』が中に入って(遠隔操作をして)動かしている分身ロボットだ。そしてその『中の人』たちは、病気や寝たきりなど、さまざまな事情により家から出ることが困難な人たちであった。
動きたくても動けない、家から出られない、働きたいのに働けない。そんなジレンマや孤独を抱えた人たちが、Orihimeというロボットをとおして、学校に行ったり外で働いたりしている。そして、人と交流をして関係を築いている。出会いによって、自分の人生を自分でつくっている。そんな情報が、次から次へと流れ込んできた。

はぁ……と、思わず呆気に取られてしまった。
だって、そんなことが可能なの?人がテクノロジーの力でロボットを動かして、外で働く?いやいやいや、近未来か!
そう疑いたくなるほど、写真や動画で見るその光景は信じ難く、同時に目と心を奪われるほどの衝撃となっていた。

すごい。こんなロボットを作るなんて、この人すごいぞ。ただものじゃないぞ。そう、一瞬にして惹きつけられたが、実はオリィさんがそういった発想に至るまでは、胸の詰まるような経緯がある。



 小学5年生から中学2年生頃まで、オリィさんは不登校で、家に引きこもる日々が続いたらしい。
誰とも繋がりを感じられず、世界に居場所がないと思うほどの孤独感。家でひとり、ただただ天井を見つめるだけの日々は辛く、時にベランダから飛び降りたいと思うこともあったそうだ。

「孤独って、人を殺すんですよ」

そう語るオリィさんの言葉を、何度も何度も咀嚼して考えた。
ものすごく共感した半面、簡単に「分かる!」と言葉を吐くのは、違う気がした。

そしてもうひとり、この時目にとまった人物がいる。
番田 雄太さん。オリィさんの親友であり、秘書であった人だ。

番田さんは4歳の時に交通事故に遭い、寝たきりとなった。
オリィさんとの出会いは、2013年の冬。番田さんは首から下を動かすことができないなか、顎を使ってパソコンを操作し、6000人もの人にメッセージを送り続けていたという。そのうちのひとりが、オリィさんだった。

6000人……。考えただけで、気が遠くなりそうな人数だ。
けれどそれほどまでに、番田さんは『人との交流』を望み、諦めなかった芯の強い人であった。そしてオリィさんと出会い、Orihimeを使ってオリィさんの秘書となって働き、得た収入で母親に服をプレゼントしていたらしい。

「私の寝たきりの20年間は、明日少しでも長く生きるために今日何もするなと言われた、”生かされた”20年だった。同じ病室の隣のベッドで、お互いの声も届かず、亡くなっていく子ども達をただ見送り続けてきた。彼らは、私は一体何のために生かされたのだろう。私は明日死んでもいいから、今日、自分の好きな事をして”生きたい”。」

オリィさんのnoteより、番田さんの言葉を抜粋

悔しくも、番田さんは2017年にこの世を去ってしまう。けれど、番田さんとオリィさんが掲げた共通の夢は、いまも続いている真っ最中だ。

『分身ロボットカフェ DAWN 』。
こちらのカフェは2021年6月、東京都日本橋に常設店としてオープンした。
このカフェでは、病気や障害などさまざまな事情により、家から出られない人たちがOrihimeを遠隔操作して、イキイキと働いている。そして多くの人と交流し、関係を築き、自分の力でお金を稼いでいる。

そう。オリィさんは、番田さんが亡くなったあとも彼との約束を果たすため、研究や開発に勤しみ「だれかの為に何かできる自由」を叶えた。いや、違う。今も、叶え続けているのだ。

 私は、2021年10月に婚約者を癌で亡くした。
当時、耐え切れないほどの孤独や絶望に襲われたなかで、こうして今一度「作家になりたい!」と奮起できているのは、オリィさんやオリィさんの仲間たちの存在を見てきたことが大きい。手が動かない、足が動かない、身体が動かない。そういった不自由を抱えながらも、「やりたいことを諦めない」人たちが、オリィさんの周りにはたくさんいた。夢を叶え、自分らしく生きている人たちをたくさん見てきた。

「誰かのために、何かできる自由」。私にとって、それは「文章を書くこと」だった。
「書いて、届ける」こと。それが唯一私にできることで、私が叶えたいことだ。

そして今日、11月18日はオリィさんの37回目の誕生日だ。
本当に本当に遅くなってしまったが、このnoteはオリィさんや、オリィさんの仲間たちへの恩返しとなる第一歩のつもりで書いた。どんな境遇であれ、自分の人生を真っ直ぐに生きて、やりたいことを叶えている人たちがいる。その事実を、どうか多くの人に知って欲しい。

オリィさんはよく、「できないことは価値になる」と言っている。私もそのとおりだと思う。たくさん挑戦をして、失敗をして、私はこれからも自分だけの価値を積み上げていきたい。そしていつか必ず、「作家になる」という夢を叶えてみせる。

たった一度きりの自分の人生。思う存分やりたいことやって、真っ直ぐに生きようじゃないか。

2023年3月、カフェ訪問時にて撮影

【今日の独り言】
私のnoteのヘッダー、なぜお花の画像で揃えているかというと、オリィさん主催のオンラインサロン『オリィ部』に入っていた時、オリィさんが私に『花』というあだ名をつけてくれたんですよ。そこからきています。へっへっへっ。自慢です←

改めまして、オリィさん、お誕生日おめでとうございます!!

【76/100】

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