見出し画像

子どもの学習の遅れが心配…… 休校中に子どもたちにつけておきたい力とは?

副島賢和(そえじま・まさかず)昭和大学大学院准教授、昭和大学附属病院内学級担当。学校心理士スーパーバイザー。公立小学校教諭として25年間勤務。2006年より8年間、昭和大学病院内さいかち学級担任。2014年より現職。ホスピタル・クラウンでもあり、2009年、ドラマ『赤鼻のセンセイ』のモチーフにもなった。

学校は子どもたちにとって安全で安心できる場所であってほしい

みなさんはいま、お子さんのことで何が心配ですか?
私がいまいちばん心配しているのは、学校が再開してからのことです。

休校期間中の空白を埋めるために、子どもたちの学習の遅れを取り戻し学力を高めようという力が強くなりすぎてしまうのではないか、そうなると学校に行けなくなるお子さんが増えるのではないか、と心配しています。

これまで、文部科学省が「子どもたちの学力を上げます!」という内容を発信すると、そのあと必ず不登校の子どもたちが増えています。ゆとり教育は学力が低下したと批判されましたが、実は、ゆとり教育の時期には不登校の児童数は減っていたのです。
それは、学校が安全で居心地のよい場所になっていたからだと思います。

私は、この混乱をきっかけに、学校がすべての子どもたちにとって安全で安心できる場所になってほしいと願っています。そして、それとともに、学校に戻っていける力を子どもたちにつけておくことも必要です。では、子どもたちにどんな力をつけることが必要なのでしょうか。

院内学級では「学ぶ力」をつける学習を意識しています

いま、学習の遅れや学力の低下を心配している親御さんたちも多いと思います。
「この時期に勉強しておかないと遅れちゃう」
「この時期に勉強すれば差を広げられる」
そんな思いから、子どもに働きかけている方もいるかもしれません。

私が入院中の子どもたちにかかわるとき、心掛けていることは少し違います。
学校に行かず、時間に追われずに過ごせるこの時期に、「学ぶっておもしろい!」「ひとりでも学べるんだね!」「新しいことを知るってワクワクドキドキするよね」ということをその子に体験してもらいたいと思っています。

例えば、今回の休校中に詰め込みの学習をさせられた子どもと、学ぶことの面白さをワクワクドキドキしながら体験した子どもでは、どのような違いが出るのでしょうか。
学校が開いた瞬間は、詰め込み学習をした子どもが力をつけたような結果が現れるかもしれません。しかし、将来的に後者の子どもたちが身につけた力は、これからその子が学びに向かう姿勢を大きく変えるはずです。

院内学級は、授業数も限られています。1コマ45分間、しっかりと授業ができるわけでもありません。入院の日数もその子どもによって異なります。ですから、院内学級では、「学ぶ力」をつける学習を意識しています。

「入院中でも勉強ができた」
「こんなに楽しい勉強の仕方を覚えた」
「私はこの暗記の方法がおもしろい。自分に合っている。」

そう言って退院していく子どもたちは、本来の授業が受けられなくても、けして「みんなに遅れた」とか、「私は入院中に勉強ができなかった」とは思いません。たとえ、入院中に学校のみんなが学習を進めていた教科書の30ページ分はできていないとしても、退院するときに自信を持って「俺、病院でもちゃんと勉強したよ」と言えるようになります。

そういう力をつけることを、いま、子どもたちにかかわる大人は考えなくてはいけないと思います。そうすれば、学校に戻ったとき、「もっと学びたい!」「もっと知りたい!」と、意欲的に学びに向かう力が発揮できるはずです。

その子が楽しくできる学び方を見つけるチャンス

それぞれの子が、自分に合った学びかたを見つけていく。先生や親はそれをサポートする。時間にゆとりのあるいまこそ、そんなことができるチャンスだと思います。

「教科書を開いてノートを書かせ、いつまでに提出させる」というのは、親御さんの仕事ではありません。それでは学校も、先生も、いなくていいことになります。

「なかなか宿題が進まない」
「あまり理解できていないかもしれない」

そんなふうに困ったときには、無理して期日までに全てをやらせようとするのではなく、ぜひ学校の先生に相談してみてほしいと思います。

学び方はひとつではありません。新学年になり、担任の先生が変わってしまったときには、ぜひお子さんのふだんの様子を先生に伝えてあげてください。先生も「お子さんはそんな一面があるのですね」と、その子のことを知るきっかけになります。

「じゃあ、少し課題を減らしてみましょうか」
「ここだけはやってもらって、あとは自分の好きなことを調べてみてください」
「プリントが難しければこんなやり方はどうですか?」

それぞれの子どもたちの様子をよく見ながら、こんなふうにその子に合った学習の進め方を、お家の方と先生が相談しながらアレンジしていくことができたらいいなと思います。

【 出版社から 】

こちらの記事は書籍化されています!

画像1

「ストレス時代のこどもの学び」 副島賢和 著

本体価格1,500円+税/ISBN 978-4-907537-30-2

↓ ご購入はこちらから ↓

https://www.amazon.co.jp/dp/4907537301/


よろしくお願い致します!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?