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夜空を飛んでいて考えたこと

今夜はいつもより少しだけ星が賑やかに見える。
日中、雨が降っていたおかげだろう。
それでも、こんな街の中ではほんの少しだけだが。

ひんやりと空気が冷たくて、肩を窄め、両手をポケットに突っ込む。
イヤホンからは、デヴィッド・シルヴィアンのお気に入りの曲が流れだす。見上げた夜空には、妙に明るい月が輝いている。
おれは流れる音楽に乗り、両腕を広げゆっくりと星へと近づいて行く。

星々と戯れながら、とりとめもなく思考を巡らすのだ。

当たり前に後悔はあるなあ。
もう少し上手な生き方は出来なかったものか…
そんな言葉たちが、雲の切れ間をすり抜けながら浮かんでくる。

それでも「いや…幸せなのだ」と思えるくらいの今がここには在る。

苦しい時もあっただけに、今こうしてそう思えることが幸せだと知ってはいる。
その時の問題が全て解決したわけではない。いや、まったく解決などしていないのだろう。
そう考えると、幸せとは、必ずしもそこに在る問題が解決することではないことに気がつく。その問題をどう考えているかで決まるものなのだ。

じゃあ、今のおれはどのくらい幸せと言えるのだろうか。
それを計ることは誰にも出来ないのだなあ。
人はそれを知りたくて、ある時は他人を試し、またある時は自分をも試してしまう。

見上げる星空は、下から眺めているからこその星空なのだ。当たり前に遠く離れていなければ、その星たちを見ることは出来ない。
そう考えると、幸せもまたそこに身を置きながら、それを実感することがなかなか出来ないものかもしれない。
同時に、幸せを実感できずにいることが、不幸せだとも限らない。
星空と同じように、遠くから思い描く幸せは、いつだって輝いてい見えるのだ。

だからこそ、たとえどんなに小さくても、幸せだと感じられる事に目を凝らし、注意深く丁寧に集めて行こう。そのことでしか幸せを知る術はないのだから。
そして、その幸せを大切な人達と分かち合えたら素敵だ。

そろそろわが家のバルコニーへ戻るとするか。
やっぱり、下から見上げる星空がきれいだった。

David Sylvian  アルバム『sleepwalkers』曲「Exit/Delete」を聴きながら


#エッセイ #音楽 #星空 #幸せ

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