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私はドラクエⅪでパチスロをやめました

僕の人生、大部分はパチンコ・パチスロと共にあった。

大学に進学した頃、ビギナーズラックで勝てたことがきっかけでのめり込み、およそ25年。学生時代はお金さえあればホールへ通い、社会人になってからは暇があろうと無かろうと、行くことが義務であるかのように打ち続けていた。

仕事のある平日は、残業でほとんど打てる余裕がなくても通い、休日は開店時間が近づくとソワソワして、開店に間に合う電車に飛び乗ってホールへ向かう。まぁ、典型的な依存症患者である。

そんなパチンコ・パチスロまみれの生活を送っていたある夏の日のこと。大負けして家路につく途中、ふと立ち寄ったお店でドラゴンクエストXⅠのポスターが目に入った。正確には、ポスターに描かれていたロトの剣に引きつけられた。

中学生の時に初代が発売されて以降、ハード(3DS)を持っていなかったⅨと課金ゲームであるXを除きナンバリング作品は全てプレイして来た。中でも、ロトシリーズへの思い入れがとても強かった。

ポスターに描かれていたのが、ロトシリーズの象徴のひとつであるロトの剣。もしかして何か関係あるのだろうか。

買いたい気持ちにはなったものの、PS4本体を持っていなかったので高い買い物になる。大負けした直後だけにさらなる出費は痛いところだ。心の中はまるで花びら占いのように「買う、買わない」を行ったり来たりしていた。

10分以上迷った末に、「このままスロットで無駄にお金を溶かし続けるのなら、物に残したい」と思い、PS4ごと購入した。しめて4万円。この日パチスロで負けたのとほぼ同額である。

もの凄く高い買い物したとちょっぴり後悔したが、程なく訪れた夏休みに変化が現れた。一度もパチスロを打ちに行かず、ドラクエⅪ漬けの毎日を過ごしたのだ。

例年なら毎日ホールへ通い詰めの生活を送っていたのだが、ホールへ行くよりもドラクエⅪをプレイしたいという願望が大きく勝っていた。開店時間が近づいてきても、「そろそろホールへ行かなきゃ」というソワソワ感が全く起きなくなっていた。

夏休みが明けた後、時折り打ちに行っていたが、8月末のある休日に決定的な出来事があった。

その日は朝からホールでパチスロを打っていたのだが、お昼くらいになってふと家に帰ってドラクエⅪを遊びたい衝動にかられた。これまでだったら勝っていようが負けていようが昼食を取って打ち続けていたのだが、こんな感情が起こったのは初めてのこと。心のまま、ホールを後にして家路に急いだ。

この日を最後に、ホール通いがバッタリ止まった。

きっぱり引退しようと決めていたわけではない。打ちに行かない期間が1週間、半月、1ヶ月と続き、「せっかく続けているのだから」と意識しているうちに、フェードアウトしていった。

ドラクエⅪに引き込まれたのは、何故ロトの剣なのか、という謎の部分もさることながら、物語の先を知りたいという衝動にかられたからだ。

序盤から中盤にかけて、ドラクエⅢを思い起こすようなイベントが発生するのだが、実際は真逆な展開が起こる。

ドラクエⅢでは、王様に謁見して魔王バラモスを倒せという使命を与えられることから旅が始まり、旅の扉で遠い世界へ向かい、世界中に散らばったオーブを集めてラーミアを手に入れて、魔王の城に乗り込んでいく。

一方のXⅠは、勇者の生まれ変わりであることを知って城へ向かうも、王様から「悪魔の子」呼ばわりされて石もて追われる身となる。旅の扉で外界に飛んでいく時も、王の放った追っ手に追い詰められた末のことだった。

中盤ではオーブを集めて、魔王を倒すロトの剣(劇中では勇者の剣)を手に入れようかとした時、王様に憑依していた魔王に勇者の剣が奪われて世界が崩壊。主人公は勇者の力を失ってしまう。

Ⅲと同じような展開になるかと思いきや、ことごとくこちらの予想を裏切るようなイベントが起きる。それだけに、この先どんなドラマが待っているのか予想できないところがあって、早くその先に進みたいという気持ちが大きくなって、前のめりに進めていた。

絶望的な中からどうやって勇者の力を取り戻して復活していくのか。どんな結末が訪れるのか。この先、何が起こるのかを知りたくて、グイグイと引き込まれていった。

駆け足でクリアした分、今度はじっくりドラクエⅪの世界を堪能したいと思い、すぐに2周目を始めた。レベル上げに街の宝の探索、カジノに武器の素材集めなど、たくさんのやり込み要素があったので、クリアまでかけた時間は1周目の3倍以上あった。

その後、ボイスや新シナリオが追加されたswitch版も発売されたが、こちらもハードごと購入したし、さらにPS4に移植された時にも購入した。完全商法、と批判を浴びていたが、パチスロを打ち続けていたことを考えれば安いもの。損をしたという気分にはならなかった。

本当はswitch版を買うつもりはなかったのだが、たまたま発売日に通りがかった家電量販店でベロニカとセーニャ姉妹が詠唱するシーンのPVが流れた瞬間、店に入って本体共々お買い上げ。恐るべきは、内田真礼と雨宮天である。

大げさではなく、ドラクエⅪは人生を変えてくれた存在。もはや呼吸のようにどっぷり浸かっていたパチンコ・パチスロ生活に終止符を打つきっかけを与えてくれた。

もしも引退せずに続けていたら、きっと貯金もできず苦しい生活が続いていただろう。コロナ禍で緊急事態宣言が出ていた中でもホールへ通い続けていたかもしれない。

PS4本体と併せて痛い出費ではあったが、いまは数十倍、いや数百倍の価値がある投資だったと思う。

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