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シリーズ:コロナと激動の消費者心理【11月調査③】再び緊急事態宣言!都市部で特に減る消費は?

企画・製作 株式会社矢野経済研究所 未来企画室

このシリーズでは、コロナで揺れ動く日本の消費者の心理が、どのように変化していくのかを把握するために実施している、webアンケート定点観測調査(2020年度中計4回実施)から、その動向について気になるトピックをお届けしています。

当シリーズ投稿の趣旨出典元消費者調査につきましては、初回の記事でご紹介しておりますのでご覧ください。<シリーズ説明>

再び緊急事態宣言!都市部で特に減る消費は?

今回はこれまで実施してきた3回の調査から、今回の緊急事態宣言について、対象となる都市部に注目して、どのような日常消費が特に影響を受けるのか、4月の緊急事態宣言の影響を振り返ります。

下記は11月調査の実施要項です。前2回の調査も手法・区分は同じです。

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第1波、第2波の振り返り

4月の緊急事態宣言期間が終了した直後の6月調査から、3回にわたって定点観測調査をしてきました。夏には第2波の影響もあって、経済の回復が一時中断を余儀なくされたこともありましたが、秋以降は緩やかではありますが徐々に消費は回復・拡大してきたと言えます。

下図は、日常消費の各項目の購入に使う金額について、前の四半期(3か月前)と比較して、今の四半期に、金額が増加(した・しそう)と回答した人の割合から、減少(した・しそう)と回答した人の割合を引いてDI値を算出したものです。

値は全年代の平均値で、左から順に4-6月期、7-9月期、10-12月期の実際の増減を回答してもらい算出した値、21年1-3月期の見通しを聞いて算出した値となっています。

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上図での値が0以上の場合は、各項目の購入に使う金額が、前の四半期から今四半期に増加した人の割合が減少した人の割合より大きく、全体として金額が増加傾向にあるということを示しています。

その逆でマイナスにある場合は、消費金額が、前の四半期から今四半期に減少した人の割合が増加した人の割合より大きく、全体として金額が減少傾向にあるということを示しています。

4-6月期調査では、食料品と日用品の消費が増加傾向で、その他消費は減少傾向、特に外食・飲み会への消費額の減少傾向が強いことがわかります。

その後、7-9月期、10-12月期と、第2波の影響もありながら、徐々にそれぞれの増加傾向、減少傾向が弱まっていき、年が明けた21年1-3月期には、外食等の消費の更なる回復も見通されていました。

しかし、第3波の襲来により、1月7日、再び首都圏に緊急事態宣言が出されることになり、東京などでは再びステイホームが要請されました。また、関西圏など首都圏以外への適用拡大の可能性もあるとの報道が見受けられます。

今回は、「3大都市圏」「地方都市圏」「その他」の3地域のうち、今回の緊急事態宣言の対象地域となると目される、「3大都市圏」で、4月の緊急事態宣言時にどのような消費が特に減ったのか、その他の地方と比較した際に特徴的な項目を取り上げます。

外食・飲み会への消費

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上図は日常消費全体の図から、外食・飲み会の項目のみ抜粋し、居住地域別に分けたものです。一番左、4-6月期の緊急事態宣言下で、大きなマイナスの値となっており、全体的に強い減少傾向を示しています。特に、三大都市圏や地方都市圏は、その他地方と比較して、より強く減少傾向を示しており、自粛要請の影響が強かったことがわかります。

このように、都市部で消費額減少の影響が強く出た原因は、都市部の飲食店はより密になりやすい環境であることから、敬遠されたためと考えられます。

7-9月期以降の消費はだんだんと回復傾向にあり、今年の1-3月期には増加傾向に転じるまでもう一息のところまで来ると見通されていましたが、今回の第3波にともなう緊急事態宣言では特に飲食店への時短要請が中心に据えられており、一気に回復の勢いが削がれてしまいそうです。

運動やスポーツへの消費

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上図は外食同様に、運動やスポーツの項目を抜粋したものです。4-6月期は全体的に大きなマイナスとなっており、運動やスポーツへの消費支出が強い減少傾向にあることがわかります。また、「三大都市圏」と「地方都市圏」の都市部が、「その他」地方よりも減少の傾向が大きいことがわかります。

運動やスポーツをする公園やフィットネスジム、各種競技場等も、都市部では密になってしまう環境ですので、そうした施設での運動やスポーツの機会が減少し、それらに関する消費の減少の影響が、地方より強く出たものとみられます。

今回の緊急事態宣言は、以前と比較して制限が緩やかなものとなっており、また人々には感染予防対策に対する慣れが生じており、飲食店と比較すると、こうした運動やスポーツの分野への影響は軽微になると予想されます。

学びや自己研鑽、スキルアップへの消費

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最後は、学びや自己研鑽、スキルアップへの消費額について抜粋したものです。4-6月期に「三大都市圏」「地方都市圏」は「その他」と比べてより減少の傾向が強く出ています。

しかし、その後、7-9月期以降「三大都市圏」の学び等への消費額は他地域と比べ急速に回復しています。

「三大都市圏」での学びやスキルアップ等への消費額は、4-6月期に外出自粛の影響を受け、都市部の学校や教室などの密になる環境が敬遠されたことにより、一旦は「その他」地域よりも消費支出減少の影響が強くでたものの、その後、他の地域と比較して、オンライン化など、積極的な感染対策やリモート化などの対応が進み、回復が急速になったものと考えられます。

運動やスポーツ関連の消費と同様、「三大都市圏」での学びやスキルアップ等への消費は、4月の第1波からこれまでにwithコロナの体制が整っている事業者が多いと想定され、今回の影響は比較的軽微に済むと考えられます。

いずれにせよ、一刻も早い緊急事態の解除が望まれます。

出典:Withコロナ社会の消費者心理の変化を捉える定点調査2020

※本シリーズの投稿内容はすべて執筆者の個人的な見解を示すものであり、執筆者が所属する団体等を代表する意見ではありません。また、投稿内容はいかなる投資を勧誘もしくは誘引するものではなく、また、一切の投資の助言あるいはその代替をするものではなく、また、資格を要する助言を行うものではありません。






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