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★未来出版研究会が考える『50 年後の書店』 2/4 「無くなる本でいうと、まずは細切れにできる実用情報ですね」

(2)見識を備えるための本と読書

K(編集者):
50年先の未来を考えて舵を取っていければ、低迷する出版業界が再び盛り返す可能性は十分にあるということですね。そのためには、読書や本の価値を改めて問い直し、社会に発信していく必要もあると感じました。

S(書店長):
読書や本の価値について考える時には出版社のあり方も考え直さないといけないね。業界が低迷する前の出版社は、"世の中に必要だから"と本を出すのが本来の姿だった。読者に ”読んでみなさいよ、この本”という気持ちで出していた。でもいまは、“ウケそうだから” “売れそうだから”が先に来てしまっている。会社を経営していくための仕事である以上、売れることはもちろん必要だけど、偏りすぎているように思う。中庸をとるということは全くなくなってしまったし、そのような状況を繰り返すうちに、中庸をとる智慧が出てこなくなってしまった。本当に世の中に訴えたい内容の本をつくろうとしても、「そうは言っても売れないから」という姿勢になっているのではないかな。

S(本おじさん):
おそらく近年は、日に200 点~250 点くらいの単行本が出ていると思いますが、これからじわじわと刊行点数は減っていくんではないかな。それぞれが全体的に売れていないですしね。出版社自体はお金をどこかからもってくるために、自転車操業的に出版を繰り返しますが、必ず厳しくなって行き詰まるように思います。

K(編集者):
どんな本が無くなっていくでしょうか?

S(本おじさん):
無くなる本でいうと、まずは細切れにできる実用情報ですね。商品を買ったり、サービスを受けたりといった消費を促すための実用情報。これに関わるようなものというのは、 本では使えなくなっていくだろうなと感じています。

Y(編集者):
インターネット上で実用的なものは調べられますもんね。必ずしも本という形態でなくても情報を得たり、発信できたりします。

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