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出版業界、起死回生の道

"傾き"が険しくなってきた出版業界に、起死回生の道はあるのか。

取次業の営業利益は赤字、書店は廃業に追い込まれ、出版社は自転車操業を止められない。おしなべて苦しい状況が続いている。業界にはびこる慣習を少しでも改善していこうと、新たな仕組みが登場したり、効率化を考えたり、あの手この手で現状を打開しようとしている。

しかし、方法論には限界があるのではないか。もっと抜本的な変革が必要ではないか。

まずは「あたりまえ」を疑ってみよう。たとえば「返品制度」がなくなったら……。

出版社や取次は、一度注文の入った書籍が戻ってこないから、売上の見込みが立ってうれしい。書店は在庫リスクを抱えることになるが、そのぶん出版社や取次が掛け率を下げられれば、粗利があがる。ひっきりなしの品出し・返品作業がなくなれば、書店はもっと本を売ることに注力できるかもしれない。売れるまで書店に本が残ることになるから、書店は一生懸命本を売る。注文してくれた書店で一冊でも本が売れるように、出版社も販売の支援をするだろう。出版社への注文は返品制度下よりは減るだろうから、出版社は1冊あたりの企画に力を入れ、いまよりも良質な本が作れるかもしれない。

取次は、配送のコストが大幅に減るだろうか。全体の流通量は大幅に減るかもしれないが、返本が無い分、輸送の復路は異業種との協業が生まれるかもしれない。

思い切って、慣習を捨ててみる。ここで語るほど現実はあまくないし、想定できないデメリットやリスクも無数にあるだろう。しかし、逆転の活路は、“捨てる勇気”の先に見いだせるかもしれない。業界は、自らを守ってきた鎧に、メスを入れるときがきたのかもしれない。

逆転の活路の先に、笑うは業界人ではない。本を愛するすべての読者である。

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