〈鈴々ちゃんと人形の旅⑦〉

 次の日の朝、私たちは近所にある乙文殊宮にやってきた。そこは丸木の階段を登った山奥にある小さな祠で、そこには文殊様が祀られてた。


 私たちはお参りした。


「こんにちは、文殊様。」

「よく来たな、人間よ。」

 文殊様は姿は見えないけど声が聴こえた。鈴々ちゃんは質問した。

「文殊様、昨日は怖い夢を見ました。巨人が暴れる夢です。巨人が暴れる理由は何ですか?」

 すると中から文殊様の笑い声がした。

「ハッハッハ。何にも心配要らんよ。夢の中で暴れても目覚めればなにも壊れてないからな。」

「私は巨人が歩いて足音を立てるのが聴こえるんです。」

「人に聴こえない音が聴こえるのは空想力が進歩しておる印だよ。精神修行のようなものと考えなさい。音を聴いても慌てず平然としていれば何も怖いことはない。

 巨人は私の味方。もし会ったらかる~く挨拶しとけばよい。」

「でも以前、ホントに町が壊れたことがあるんです。」

「それは地球の浄化のためだよ。今地球は環境破壊で壊されておる。環境破壊の原因になっとるものを破壊して、これ以上地球が壊されないようにしとるだけだよ。」


 隆弘くんが話を挟んだ。

「そういえば乙文殊宮の山道も土砂崩れで崩れたことがありました。それも地球の浄化ですか?」

「ハッハッハ。ちょっと姿勢を変えただけだよ。

 隆弘、土砂崩れは君のために私が起こしたんだよ。」

「僕のため?」

「君は乙文殊宮に登って修行をしていたな。私はそれを観察しておった。

 乙文殊宮を掃除したこと。乙文殊宮の山道を登ったこと。そしてそんな時に土砂崩れが起こり、君は土砂崩れを乗り越えた。」

「確かに僕はそうしてました。文殊様と仲良くなりたくて。」

 隆弘くんは頷いた。

「私が試練を与えておったのだ。そして試験は合格だ。君の望み通り魔法の力を与える。」

「魔法?」

「さよう。その力を使えば、風を操り、雨を降らせたい時に降らせ、つむじ風を起こし、カラスをてなづけることが出来る。」

「ホントにそんなことが出来るんですか?」

「すぐには使えない。これからも修行を続けるとよい。」


つづく

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