〈10.日本の萌え文化〉

 アンさんは日本の萌え文化について語った。

「日本の少女マンガに描かれる萌え、トキメキ、女の子の夢を守るという発想は海外ではなかなか見られない価値観だと思うわ。」

 ロリポップさんは共感した。

「私も日本のカワイイ文化好きよ。特にサンリオはカワイイわよね。」

「ロリポップっていう名前もカワイイ名前ね」

「サンリオキャラにいそうな名前でしょ」

 ロリポップさんは笑った。


 それに対してケイティさんは、

「でも日本のカワイイ文化は、カワイイ女が弱くて男性に守られるだけみたいで、男性に都合のいい女になってる気がするわ」 

 と言った。ケイティさんはカリフォルニア出身、肌の浅黒い黒人女性で性格はギャルだけど、男女平等や同性愛問題などに意識が高い。


 するとアンさんはこう反論した。

「男性のように強くなるのがいいことなら、女性のように可愛くなるのもいいことなはず。ケンカに勝とうとするなら強さが必要。でも仲直りしようとするなら強いだけじゃ駄目。社会を平和にするには女心や和心が役に立つわ。

 女の子の可愛さは武器になるのよ」


 アンさんは続けた。

「日本のアニメ、マンガ、ファッションなどは誤解されてると思うの。日本の文化について知らない人によって悪口言われてるの。だから私はそんな偏見と戦ってるのよ。

 それには日本の企業にも意識を変えてほしいと思うの。日本のアニメ会社はハリウッドやディズニーとコラボしたがるけど、日本のアニメは世界中の国々で愛されてる。アメリカ以外の国にも日本のアニメとコラボしたがる会社はたくさんあるのよ。そのことに日本のアニメ会社はちょっと気づいてないかなと思う」


 それにロリポップさんは共感した。

「それは日本企業の現状と同じだと思うわ。日本の起業家の多くがGAFAと組みたがる一方、世界中の国々の中に日本企業の実力を理解してコラボしたがる企業はたくさんある。それに対して日本企業はそんな企業がいることに気づかずミスマッチが起きてるわ」


 アンさんはまた話題を変えた。

「私は原宿ファッションが好き。特にロリータファッションがね。ロリータファッションは礼儀正しくて独自の美学を持ってて、それをストイックに守ってるの。

 ロリータファッションは日本生まれのファッションよ。フランスのロココ調の真似だっていう人もいるけど全然違うと思うわ。18世紀のロココ調の文化はちょっとだらしないところがあったからね」

 アーサーくんは共感した。

「私もそれには共感する。18世紀フランスのロココ調はデカダンのようなもので堕落してふしだらなものになってしまった。現代日本のロリータファッションの方が高貴だと思う」


 それに対してキングくんは反対した。

「俺はフランスのロココ調も高貴だと思うな。宗教に厳しすぎるバロック調や労働に厳しすぎるヴィクトリア調と違ってロココは平和的だったと思うよ。

 フランスには紳士淑女の文化があった。」


 中国人の李さんが発言した。

「私の祖国中国では稲荷神社のお祭りをしたことがあります。神社を建てて屋台を並べて日本の稲荷神社のお祭りとそっくりに再現しました。

 日本の稲荷神社は中国ではアニメの中のワンシーンとして知られています。ファンタジーの世界だと思っていたものが日本では現実にあると知って体験したがる中国人は多くいます。

 日本の文化や宗教に抵抗のある人の多い中国で、そんなお祭りが意識を変えるきっかけになればいいと思います」


 僕は以前経験した話をした。

「僕はサンリオのおかげで豊かになったよ。僕は昔、借金で首が回らなかった時期があったんだ。でもその頃ちょうど日本のカワイイ文化が世界中で流行ってるということが日本でも知られ始めたんだ。

 日本のカワイイ文化は貧困、治安の悪さ、宗教の厳しさ、男尊女卑などに悩む世界中の若者に夢を与えてる。そのことを知った時、僕は日本のアニメを通じて日本人と世界中の人が交流し合えばいいなと思った。」

 アンさんはこんな提案した。

「世界中のアニメ好きな人と交流するっていう活動はアニメ会社だけに任せるんじゃなくファンが自ら実行すべきだと思うわ」

 僕は続けた。

「世界の平和のためにキキララにお祈りしたんだ。

 ちょうどその頃、サンリオはサンリオキャラを世界中で広めようと努力していた。それで僕はサンリオ株が上がると予測した。1年後予測通り株が上がって僕は借金返済できたって訳。」


 アーサーくんは感心した。

「何という先見性だ。素晴らしい」

 ロリポップさんは、

「きっと神様に願いが届いたのかもしれないね」

 と言った。アンさんは、

「キキララは星だからまさに星にお願いしたんだね」

 だけどアーサー君はこう言った。

「キキララはただの絵だ。本当に存在するわけじゃない」

 僕は反論した。

「サンリオファンはサンリオキャラが本当に実在すると信じてると思うよ。

 日本では最近、推し活っていうのが流行ってる。好きなキャラやアイドルのぬいぐるみを買って、いつも持ち歩いたり同じ趣味の人と仲良くなったりするきっかけになる。そして悩みがあればスマホじゃなくてぬいぐるみに相談したりする。

 2次元萌えって言ってアニメキャラを好きになって空想の中でアニメキャラと結婚して子供としてオリジナルキャラを描いたりもする」

 その言葉を聞いてアーサーくんは、

「ナンセンス。そんなのただの妄想だ」

 と一蹴した。


つづく

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