●生物の実験場となったカンブリア爆発はなぜ起こったのか
宇宙と地球と生命の相互作用が大量絶滅と突然変異のうねりをつくり、数十種だった大型の生物がいっきに1万種以上に広がる「カンブリア爆発」が起こった。
●急激な生命進化の3つのパターン
急激な環境変化に伴う生命進化には3つのパターンがある[1]。
カンブリア紀直前の1.5億年間に3つのパターンのすべてが絡み合う急激な環境変化が微生物を襲った。
●7~6億年前: 全球凍結と超大陸の分裂が引き金となる生命の大進化
■全球凍結
銀河衝突による超新星爆発の影響で磁場が弱体化し、大量に降り注いだ放射能の影響で地球全体が凍りつき(全球凍結)大量絶滅を引き起こす。
極寒期と極暑期の繰り返しが、光合成を行うシアノバクテリアの大量絶滅と大繁殖の波をつくり、酸素濃度を乱高下させながら現代の値(大気の20%)に近づいていく。
■超大陸ロディニアが分裂
放射性マグマ地溝帯の周辺に生命の素材となるリン酸塩の鉱床が発生し、突然変異した生物を量産する。この影響はカンブリア爆発の直前まで続き、分裂した各大陸で種の多様化が進む。
●浅い海に巨大生物の楽園が誕生
全休凍結が終了した直後に、酸素の増加による酸化や浅瀬が増えたことにともなって豪雨や風化浸食が促進され、大陸から海中へ生命の栄養塩が大量に流れ込む。
■6.3億年前:巨大多細胞生物
カイメンなど、単細胞真核生物の100万倍の多細胞生物が現れる。栄養塩による生物の大量発生が捕食されないための大型化を有利とし、大量の酸素と栄養塩がそれを後押しする。
■5.8~5.5億年前:エディアカラ動植物群
ディッキンソニアなどのエディアカラ動植物群が現れる。その多くは海水を濾過してバクテリアを捕食、群内に捕食者がいないため「エディアカラの楽園」と呼ばれる。
●小氷河期と超大陸の形成が生物の大爆発を加速
・5.8億年前: 小氷河期
・5.4億年前: 大陸が集まり超大陸ゴンドワナを形成
小氷河期が終わるとともに、大陸から海中へ生命の栄養塩が大量に流れ込み、超大陸の形成がそれを加速する。
- 大陸辺縁地下のマントルの温度低下により、海水(含水鉱物)がマントル深部へ運ばれるようになり、海水量が低下し陸地と大陸棚を広げ、
- 異なる大陸が合体した部分で近縁種間での交雑が進む
■5.4億年前: カンブリア爆発
大陸棚の大量の太陽光のもとに自らエネルギーやタンパク質合成する光合成生物を獲物として、エネルギーや生体物質を搾取する草食動物の誕生が軍拡競争の始まりとなる。草食動物は、植物よりも多くのエネルギーを必要とするため、より多くの餌を確保する「移動能力」と「口」や「内臓」を進化させたのが最初のブレークスルーとなる。
草食動物は、植物よりも多くのエネルギーとタンパク質を保持するため、これを餌とする肉食動物という戦略が生まれる。肉食動物は、移動する草食動物を捕獲するためにより性能の高い「移動速度」が必要となり、それを維持するためにより多くのエネルギーを獲得する「牙」や、太陽光を利用して獲物を探す「眼」を進化させたのが次のブレークスルーとなる。そして、肉食動物間でも捕食競争が発生し、軍拡競争がよりいっそう激化する。
草食動物は少量のエネルギーを使う防衛戦略を生み出す。移動する影を感知して敵の襲来から逃げる「眼」や、地下に逃げ込む短距離の「瞬発移動能力」だ。肉食動物も捕食されないための「強固な殻」をまとい、そのエネルギーを稼ぐための「高速移動能力」と殻を食い破るための「強力な牙」を得る。
アノマロカリス
図. アノマロカリス
(ウィッキペディア:https://ja.wikipedia.org/wiki/アノマロカリス)
1.5億年の間に起きた、宇宙放射線、全球凍結、酸素の乱高下と急増、超大陸分裂と新たな超大陸形成という環境変化の連鎖が、大量絶滅と爆発的な生物進化のうねりを生んだ。新たに広がった大陸棚は、生物の軍拡競争、眼・筋肉・武器と鎧の工夫を強要し、現代に続く動物グループの系統を網羅することとなる。これ以降の時代、獲得した構造をプラットフォームとして改造しながら環境変化に適応変化してゆくこととなる。
参考書籍:
[1] 丸山茂樹(2020),"最新 地球と生命の誕生と進化:[全地球史アトラス]ガイドブック", 清水書院
[2] 山下美紀, いとうみちろう(2017), "地球のあゆみえほん :46億年のれきし", 丸山茂徳監, PHP
[3] NHKスペシャル「生命大躍進」政策班(2015), "教養・文化シリーズ NHKスペシャル 生命大躍進", NHK出版
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