見出し画像

ビックバンの冷却とともに徐々に形づくられる宇宙(2) -- 初めての元素の作り方

 最初の元素が誕生するまでの宇宙はあまりに熱く、水素とヘリウムの原子核、光子と電子が激しく暴れる荒ぶる宇宙が広がっていた。

●水素とヘリウムの原子核が広がる暗黒の宇宙[1]

 ビックバンからおよそ3分後宇宙の温度が10億度に近づくにつれて陽子や中性子に作用する「強い相互作用」「弱い相互作用」の影響が強まり、ビックバン原子核合成がはじまり、水素とヘリウムの原子核が合成されはじめる。

 宇宙が急速に広がり冷えていき、それ以上の核合成が進む前に、水素の原子核(75%)ヘリウムの原子核(25%)(と極極微量のリチウムなど)だけが宇宙空間に広がる。

 このまま穏やかに広がってゆけば、水素・ヘリウムガスが何百光年も広がった空間が宇宙となるはずだった。実際、最初の元素が誕生するまでは、原子核と電子が宇宙空間に散乱し光子が直進できない「宇宙の暗黒時代」とよばれる真っ暗な空間が広がっていた。暗黒の宇宙というと穏やかなイメージだが、今よりも狭い宇宙空間の中で光子と陽子、電子ぶつかり合う激しい運動を繰り返していた。

●原子の誕生とともに晴れ上がる宇宙[1]

 ビックバンの後、3000度に冷えた38万年後、陽子と電子の運動がおだやかになり「電磁相互作用」が働くようになると、原子核+と電子-とがお互いに引きあい、最初の元素である水素原子とヘリウム原子が誕生する。

 元素といえば「すいへいりーべー」で覚えた周期表が思い浮かぶ。周期表に記載されている元素は最初から宇宙に存在していたわけではなく、ビックバンから38万年後の宇宙に広がる元素の99.9%が水素(約75%)とヘリウム(25%)、と極々微量のリチウムなどしか存在しなかったということに驚く。

 現在の宇宙全体の元素の比率も大きく変わらず、99.9%は水素とヘリウムで満たされており、残りの0.1%に他の元素がひしめき合っている。原子が生成されるようになると、ようやく光子が直進できるようになり「宇宙の晴れ上がり」をむかえる。我々が137億年先に宇宙の光をみるとき、それはようやく直進しだした光子の光なのだ。

参考書籍:
[1] 佐藤勝彦(2015), "宇宙137億年の歴史 -佐藤勝彦 最終講義-", 角川学芸出版



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?