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ファーストスターが銀河の種をつくった --- 鉄までの元素の作り方

 今私たちがあるのは、初期の宇宙のわずかなゆらぎが水素とヘリウムのネットワーク=ファーストスターを編み出し、集散離合のリズムの中から今ある元素を生み出したからだ。

●ファーストスターが宇宙空間に光りをもたらした

 水素とヘリウムで満たされた宇宙では銀河を作る材料もなく、薄いガスが静かにただ広がるだけのはずだった。しかし、実際には水素を超える大量のダークマターが宇宙に広がり、重力により影響を与え合っていた。

 「宇宙の晴れ上がり」から1億年の時をかけて、太陽質量の100万倍のダークマターの塊の重力に20万倍のガス(水素とヘリウム)が引き寄せられ、最初にあった密度の差が濃くなり編み目のような模様をつくりはじめる。

 さらに、密度の濃い部分では1000度の高温の乱流状態となり、分子同士が近接し、「電磁気相互作用」によって集まり、一部は化学反応により合体し、さらに「重力」による収縮が始まる。わずかに回転していた「分子雲」は、収縮にともない高速に回転する円盤となり、中央部は「重力」によりさらに中央に向かって落下を続ける。やがて、重力による「落下する力」と、落下のぶつかり合いがおこした熱による「膨張する力」が均衡し収縮が止まり、内部の熱により輝く「原始星」が誕生した。この時の大きさは太陽の直径の5倍、太陽質量の100分の1ほどと軽く、宇宙に初めてかすかな光りをともした。

 「原始星」へ向けて高速のガスが流れ込み続け、太陽質量の20倍の重さになったときに1500万度を超え「核融合反応」を繰り返すようになり、太陽の10万倍もの明るさで輝き照らす。この光がまわりのガスを暖め、ガスが星にふりつもるのにブレーキがかかる。さらに7万年後、太陽質量の42倍、表面温度10万度の高温で燃えさかったとき、核融合による大規模な爆発「膨張する力」と重力による「落下する力」が均衡し、ついにその成長を止めた。

●ファーストスター内部で鉄までの元素をつくろう!

 周期表の水素とヘリウム以外の元素はどのように創造されたのだろうか。

 水素(陽子1)、ヘリウム(陽子2)、順に陽子を足していけば水素をもとに他の元素をつくることができそうだが、お互いにプラスのため反発し合う陽子同士は近づくことができない(電磁気相互作用)。かの錬金術師たちが、どのように頑張っても他の元素から金をつくることができなかったわけだ。

 ところが恒星内において原子核が超高温・超高圧状態にさらされると、電子と原子がばらばらになり、陽子同士が衝突することができるようになる。陽子どうしがぶつかると陽子過剰となって陽子から陽電子(プラスの電荷)とニュートリノが飛び出して中性子となり(弱い相互作用)、陽子と中性子が結合することにより水素原子核(陽子1)⇒重水素原子核(陽子1+中性子1)⇒ヘリウム原子核(陽子2+中性子2)へと形を変えていく(強い相互作用)。いったん、ヘリウム原子核が構成されると、低温低圧状態にもどっても結合がほどかれ水素にもどることはない(強い相互作用)。恒星内の反応としては、水素からヘリウムへの核融合の期間がもっとも長い。

 恒星内の中心にヘリウムが蓄積され、さらに高温・高圧状態がすすむと、炭素、酸素、ネオン、マグネシウム、ケイ素、硫黄、カルシウムなどが連鎖的に生成される。より大きな元素番号へと核融合反応が進むにつれてエネルギーを放出しているため軽くなり結合力が強く働くようになる(強い相互作用)、一方で鉄よりも陽子が多くなると反発が強まり(電磁気相互作用)、最も安定した元素=鉄を生成したところで核融合反応が終了する。ファーストスターが誕生してから数百万年かけてようやく鉄(元素番号26)までの元素が創造することができた。

参考書籍:
[1] 佐藤勝彦(2015), "宇宙137億年の歴史 -佐藤勝彦 最終講義-", KADOKAWA
[2] 吉田直紀(2018), "地球一やさしい宇宙の話 - 巨大ブラックホールの謎に挑む! - ", 小学館




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