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ビッグバンの冷却とともに徐々に形づくられる宇宙-- 4つの相互作用の均衡が宇宙を作る

●ビッグバンとともに誕生した4つの相互作用[1][2]

 138億年前、宇宙は超高温高密度のエネルギーの塊から一瞬にして体積が指数関数的に膨張し熱エネルギーが解放され、1000キロメートルほどの火の玉宇宙の膨張=「ビックバン」が始まる。

 膨張とともに冷えていくなかで、集合-分散を繰り返しながら少しずつ宇宙の物理法則とそのかたちを創っていく。ビッグバンの直後は1000兆度を超え超高温高圧であったため原子すら存在できなかったが、宇宙の膨張・冷却という環境変化とともに質量をもつ素粒子(陽子、中性子、電子)や重力・電磁気力などの相互作用がつくられた。

 本書でいう、「ミクロ・マクロ・ネットワーク」のもとは4つの相互作用であり、138億年のときをかけて、宇宙を、星を、生命を、人間を、社会をつくりあげてゆくことになる。

 学生のころに習った「力」や「相互作用」は、この世界を説明するものとして存在したわけだが、宇宙誕生から歴史をひもとくと4つの相互作用によって集散を繰り返し、あるときは創造のもととなる環境を、あるときは互いに影響をおよぼす相互作用を、あるときは自身を構成する仕組を創りながら徐々に今ある世界を組み立てる。

●宇宙は4つの相互作用の均衡で創られている[1][2]

 我々の知覚する宇宙は宇宙創生の直後、宇宙の冷却とともに段階的に発生した4つの相互作用によって形成されている。4つの相互作用は、宇宙環境の中で物質が断片化、連結・再集合を繰り返すことにより、宇宙の構造そして生命をより複雑な仕組みへと導いていく。

1)重力相互作用(宇宙創生から10-44秒後)
 リンゴが落ちるときにはたらいている相互作用。あらゆる粒子にはたらくけれど力は非常に弱い、が、宇宙のマクロなレベルでは重力だけで語られる。「重力子」の交換により伝わる。無限遠まで作用して、距離の自乗に反比例し、質量に比例する。質量が極端に小さい原子、分子のレベルでは、ほとんど影響しない。

2)強い相互作用(宇宙創生から10-44秒後)
 陽子、中性子、原子核を形づくる相互作用。「グルーオン」の交換により伝わる。電磁気相互作用より強いが、原子核程度のきわめて狭い範囲にしか働かない。「強い相互作用」がなければ電荷がプラスの陽子どうしは反発して2つ以上の陽子が核内に存在することはできない。中性子が核内にあると「強い相互作用」の方が強く働くようになって2つ以上の(元素表の)陽子が核内に存在できるようになる(例えば、ヘリウムは陽子2+中性子2)。つまり、原子核は「電磁気相互作用」の反発力と「強い相互作用」の引力の均衡の上になりたっている。

3)弱い相互作用(宇宙創生から10-11秒後)
 原子核の種類を変えてしまう錬金術な相互作用、太陽のエネルギー、原水爆、原発、星の内部の核反応に関係する。「ウィーク・ボソン」の交換により伝わる。水素の原子核(電荷+1)からヘリウムの原子核(電荷+2)となるとき、逆に水素の原子核(電荷+1)=陽子が中性子(電荷0)となるときに働く。もちろん、この連鎖で水素が金となる際にも働く。この相互作用がなければ、周期表に記載される原子のバリエーションは存在しなかった。こうやってみると、陽子と中性子って状況により姿を変えるだけのものなんだなーと。だが、そう言ってしまうと、元素はみな水素になってしまうわけで。

4)電磁気相互作用(宇宙創生から10-11秒後)
 我々が普段経験する重力以外のすべてにはたらいている相互作用。地震、雷、磁石、化学反応、物を押して移動する、木を折る、ボールを投げる、飛行機が飛ぶ、そして電子と原子核を結びつけて原子をつくるときにはたらいている。「光子(フォトン)」の交換により伝わる。無限遠まで作用し、距離の自乗に反比例し、電荷の積に比例する。我々が体験できる重力以外のすべては、電磁気相互作用によっているという万能・ビックリな相互作用。

参考書籍:
[1] 佐藤勝彦(2015), "宇宙137億年の歴史 -佐藤勝彦 最終講義-", 角川学芸出版
[2] 吉田直紀(2018), "地球一やさしい宇宙の話 - 巨大ブラックホールの謎に挑む! - ", 小学館



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