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フューチャーリテラシー :「可能性の未来」を読み解くために

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本マガジンでは、2022/12/12に出版した、『フューチャーリテラシー Futures Literacy :過去から未来へ,「可能性の未来」を読み解くために』についての情報を掲…
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書籍『フューチャーリテラシー 』関連情報リスト

Futures Literacy :過去から未来へ,「可能性の未来」を読み解くために 本マガジンは、2022年12月12日に出版を契機にリスタートいたしました。 書籍『フューチャーリテラシー Futures Literacy 過去から未来へ,「可能性の未来」を読み解くために』に関連する情報を掲載していきます。 【記事】1)『フューチャーリテラシー』出版記念トークイベント開催(12/20) 【読書のポイント】1月)宇宙・生命・脳の進化に見る、ネットワーク連鎖の入れ子構造

未来創造につながるコミュニケーションの歴史編:ダイジェスト

「未来」を読み解くために、なぜ過去の歴史を読み解く必要があるのだろう。 1)「未来」は「過去」からの流れの上にある 未来を読み解くときには現在の注目する事象と変化があり、それが起きた要因は過去に、そしてそれが未来へとつながる。可能性の未来を読み解くには、それにつながる過去からの道筋を読み解くことが近道となる。 2)ネットワークの基本的なパターンをつかむ 物理は化学の、化学は生命の、生命は社会のネットワークを構築してプラットフォームとなり、プラットフォームの上に新たなネ

集団、文化、ヒトの共進化

集団内で技術や社会習慣などの文化を記憶・学習する能力を得たことがサルからヒトへの分岐点となる。文化を老人の知恵や道具として維持し継承する文化の記憶は、集団としての新しい生命進化の手段となっていく。 ●ヒトと文化の共進化ヒトの想像が創造するものは道具・技術だけではない、調理方法や言語、獲物や脅威に対する知識、狩猟や調理などのノウハウ、集団を円滑に運用するための社会習慣や社会規範、宗教、芸術があり、これらの集団で獲得し継承するものを総称して「文化」と呼ぶ。 ヒトと文化の遺伝子

コミュニケーションするサルへの脳進化

 生命が誕生して以降、急激な環境変化によりほとんどの生命が絶滅する大量絶滅が5回発生した。大災害が急激な進化を促進し、環境に適応した生物種が勢力図を書き換ていく。 ●上陸にせまられる魚類 3億7000万年前の海洋生物の大量絶滅は海からの脱出=上陸を加速し、魚類から両生類への進化をうながす。使わなくなった浮き袋を肺に転用し、ヒレを手足に代える。  上陸して一気に広がる視界、匂い、音、そして地面の感触を活用したものが生き残る。陸環境に適応して、五感による空間情報形成と記憶・学

五感と脳の共進化

 6.3億年前に浅瀬の大陸棚が広がり大量の光と栄養塩と酸素が海中にあふれたとき、豊富な素材を活用して繁殖する生命たちの生存競争が新たなステージをむかえる。 ●神経組織の誕生 6.3億年前のエディアカラ紀の大陸棚で、急増した太陽光と栄養塩を背景に光合成を行う微生物(シアノバクテリアなど)が大量増殖し酸素を急増させる。  豊富な素材を活用する多細胞生物の最初の戦略は、捕食されない大きな身体を得ることだ。大型化のためには、それを維持するエネルギーが必要となる。「多細胞組織」を使

メッセージ物質の相互作用ネットワークがヒトの身体をつくる

 単細胞の微生物の化学物質によるコミュニケーション・ネットワークは、多細胞生物にも継承され、より複雑で自律分散で会話する細胞・臓器ネットワークとして進化した。 ●胎児をつくる細胞間の自律分散ネットワーク ヒトの身体は、たった一つの受精卵が細胞分裂することにより形成される。2個、4個、8個と細胞分裂して数が増えていくにつれて内側と外側の立体構造がつくられ、ついに最初の1つの分化が起こる。1つの細胞が他の未分化の細胞に向けて、違う細胞に分化するようメッセージ物質(化学物質)を送

●生物の実験場となったカンブリア爆発はなぜ起こったのか

 宇宙と地球と生命の相互作用が大量絶滅と突然変異のうねりをつくり、数十種だった大型の生物がいっきに1万種以上に広がる「カンブリア爆発」が起こった。 ●急激な生命進化の3つのパターン  急激な環境変化に伴う生命進化には3つのパターンがある[1]。  カンブリア紀直前の1.5億年間に3つのパターンのすべてが絡み合う急激な環境変化が微生物を襲った。 ●7~6億年前: 全球凍結と超大陸の分裂が引き金となる生命の大進化 ■全球凍結  銀河衝突による超新星爆発の影響で磁場が弱体化し

●脳誕生への道:微生物のコミュニティ

 38億年前、核のない単細胞の原核生物=細菌(古細菌、真正細菌)が誕生した。最も単純な生命である細菌はコロニーをつくり、細菌間のコミュニケーションにより協調して環境に適応しながら生存競争を生きのびたのだった。 ●細胞間での最初の情報交換=遺伝子交換 生命初のコミュニケーションは、細胞間での遺伝子の交換だ。細菌は、細胞分裂により増え続ける。細胞核が存在しないため、細菌間での遺伝子の交換が発生しやすく短期間に遺伝子が伝搬する。遺伝子の交換は、細菌の接合による交換だけでなく、死に

ロールプレイングゲームという仮想世界

 ゲームは、人と人の知的コミュニケーションとイマジネーションのツールとして紀元前より深くかかわりを持ってきた。現代の花形、ロールプレイングゲームは、なぜヒトを魅了し続けるのだろうか。 ロールプレイングゲームという仮想世界 最も古い時代の遊戯盤は紀元前3000年頃のものが残されている。例えば、古代エジプトで遊ばれたツタンカーメンのゲーム盤として有名な「セネト」は、1対1で対戦する双六、バックギャモンのルーツであり、相手の移動を阻むことができることから、偶然だけではない戦略性が

【閑話】:ヒトと道具の共生って?メディア論おさらい

 「ヒトと道具の共進化」がヒトを進化の枝から分岐させ、「脳と道具(メディア)の共進化」「言葉と脳の共進化」がヒトの「思考」を変化させる。「ヒトと道具(言葉)の共進化」は「文化」をつくる。世代を超えて「文化」を伝える遺伝子として「ミーム」を提唱したドーキンスの着眼点に今更ながらに唸る。[3] 整理してみよう 【ヒトと道具の共進化】 ・ヒトは環境変化に「道具」を発明・改良して適応する。  ・「道具」は「文化」を形成し、世代を越えて伝えられる。  ・「道具」は、利用の学習に

「言葉」が変わると考え方も変わるということ:「言葉」使いとともに成長するヒトの「意識」

 ヒトは生まれた後に何年もかけて「言葉」を覚え「意識」し、自身に問いかけ、そして他者とのかかわりの中でしだいに「語彙」と「文法」を増やし、社会生活の中で「言葉」と「意識」を作り変えてゆく。 ●「言葉」使いとともに成長するヒトの「意識」  ヒトは、誕生から3年、10年、20年以上かけて、「言葉」の扱い方を学習・習熟する。最初は親に自分の欲求を伝えるために、しだいに他者と協調生活をするために「言葉」使いを覚える。「言葉」の扱い方が変わるということは、脳内での意識(認識・想起・思

「言葉」が変わると考え方も変わるということ:考えるって、どういうこと?

 ヒトは、外界や体内からの入力、「言葉」と「イメージ」の「記憶」をもとに、「感情」で即応し、「言葉=論理」で判断して行動する。 ●情報統合のための「イメージ」 「五感(外界)」「内臓」「骨・筋肉」で受けた刺激を情報として「脳」に運び、「イメージ」として大脳皮質で統合・抽象化し、脳内で再構成して、最終的に抽象化して「言葉」として理解する。同時に発生する「イメージ」には、「感情」「意識」や「記憶」している「経験」から再構成されるもの、「イメージ」の相互作用により新たに構成される

道具との共進化への道:「脳」と「道具」の共進化

 生命は環境変化に対処し、世代を超えて記憶する手段として「遺伝子」と「進化」の仕組みを構築した。そして、ヒトは環境変化に対処し、世代を超えて記憶する手段として「道具」と「道具とヒトの共進化」の仕組みを構築した。 ●「脳」と「道具」の共進化[1]  「好奇心」が新たな環境への進出を促し、変化する環境に「道具」を使って適応する。「道具」は環境変化に適応する手段としてだけでなく、世代を超えて受け継ぐ記憶手段でもある。「道具」の利用方法は、「道具」を介して大人から子供に受け継がれ、

道具との共進化への道:残念な進化と脳の発達

 生物では、生き残る確率を高めた能力がプラットフォームとして残り、その上に様々な能力をつみあげ、時に辻褄合わせを繰り返しながら生き残ったものが今にいたる。 ●「直立二足歩行」の辻褄合わせと「脳」の進化 ヒトの「直立二足歩行」は、サバンナ化する環境で家族を養うために優位だが、その選択が様々な課題をうみだした。その典型的な例が、他の哺乳類にはみられない「難産」だ。「直立二足歩行」のために、産道がS字に曲がり、内臓を支え歩くために発達した筋肉が出産のじゃまをし、死の危険をおかす難