アオハライド

見た。アオハライド。
私の青春、咲坂伊緒。

当時小学生だった私は、少しませていたから、
みんながちゃお、だの、なかよし、だのを読む中、
『アオハライド』を読んでいた。

古本屋さんで偶然出会った、当時の私にはまだ理解できていなかった、
そのタイトルとかわいい絵に惹かれて、
どきどきしながらレジに行ったのを覚えている。

それから読んでみて、自分の知らない、
でもきっと、未来の私が経験するだろうステキな物語が描かれていて、
ドキドキが止まらなくて、2巻が出るのを待ちきれなくて。
お母さんを連れて古本屋さんに行って、
同じ作者の作品をたくさん買ってもらった。
それが私の人生と咲坂伊緒先生の出会いだ。

ああ、制服を着るって、こんなにもキラキラしているんだと、
ものすごい憧れを抱いたのもつい最近のことみたいだ。

そんな私も華々しく中学生になり、高校生になり、
それなりに恋という気持ちも知った。
でも、あのキラキラした毎日は訪れなかった。
片想いは実らないし、私を好きになる人も現れない。

あれ?咲坂伊緒先生の漫画に出てくる女の子たちはみんな、
片想いが実るか、もしくは自分を好きになってくれる男の子と新しい恋を始めてたよね?
主人公もその周りの友達たちも。
帰り道に一緒に電車に乗ったり、文化祭の準備で手が触れちゃったり。
体育祭で応援とか、バンドのライブとか。
何もない。
なんで?あれ?
そう思っているうちに、私の制服生活は終了した。

そう、終わってしまったのだ。
人生のアオハルと呼ばれるに相応しい時間が。

それからの私は、もう本当に馬鹿みたいだった。
高校時代の片想いを、いつかステキな人に出会える!という気持ちを引きずり、
咲坂伊緒先生に、いや、少女漫画に引きずられ続けた。
そして今の今までまともに恋愛ができなかった。

そんな今、アオハライドのリメイクドラマがはじまった。
私は、もともと実写化反対派だったけど、見たら結局ときめいてきてたし、
今回もどうせ、いつもと同じだろうと思っていた。

特報を見たときに心を死ぬほど揺さぶられてしまった。
何あの音楽。焦燥感って感じ。
なんとも言えない焦りを感じる音楽、
そんな音楽をものともしない主人公たち。

見始めて、双葉と洸が再開してから涙が止まらなかった。
ストーリーに感動しているわけでもないのになぜかずっと泣いてた。

きゅんともしないしときめきもなかった。
ドキドキという感情は忘れていた。
ただ、見ていて恥ずかしいという気持ちになるわけでもない。

ずっと、ずっと、涙が止まらなくて、奥歯が痛かった。
締め付けられているような痛みだった。
ああ、これは心があの瞬間を求めている痛みなんだと思った。

自分の過ごせなかったあの時間を、
この先何を頑張っても、願っても、
戻ることのできないあの時間を、
この物語の主人公たちは生きていた。

ただただ羨ましかった。

もう一度あの頃に戻れたら私はどんなアオハルを過ごすだろうか。
ちゃんと『アオハライド』できるだろうか。


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