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攻略、シリーズA:第2話、Valuationの相対比較

まずこのグラフに注目をしたいと思います。
ヤフーファイナンスの各種ランキングのうち、
東証グロースに上場する企業の時価総額下位15位を機械的に取り上げたものです。
https://finance.yahoo.co.jp/stocks/ranking/up
(2023年12月29日付。下書きを書いてから1ヶ月経過してしまった・・・)

この15社のうち、2020年以降に上場した企業を調べたところ(赤線囲い)
6/15社、つまり40%が該当し、
この6社の時価総額は約10億円〜13億円のレンジでした。

次にこちらの資料にも目を向けていきます
2022年に上場した「M&A総合研究所」社の成長可能性に関する資料です。
https://www.nikkei.com/nkd/disclosure/tdnr/20221222582586/

この資料及び同社HPによれば、
・成約単価:約6,000万円
・手数料率:約4%(3~5%が同社のメインターゲット)
ということがわかります。

このことから、
・6,000万円/4% = 15億円
となりM&Aの譲渡金額を推計することができます。
(ざーーーくりの計算です。)

つまり、
・IPOという「大成功」済み企業の時価総額が10~13億円
・M&Aでも15億円(10~20億円のレンジでしょうか)の譲渡金額
という結果が見えているなかで、
シリーズA、希望時価総額10億円の会社に出資することは、
慎重にならざるを得ない
わけです。

VCファンドのリターンは2-3倍と言われることがチラホラあります。
ファンドに出資したら、出資額が2-3倍になって返ってくれば、まあ合格という意味合いです。

しかしながら上記の通り、時価総額10億円で出資した企業が、
全てM&A or IPOができても1〜1.5倍のリターンで終わってしまう可能性が十分あり
そもそもベンチャー業界では清算する企業や、
M&AもIPOもできずに所謂Living Deadと呼ばれる状態になってしまう会社も一定存在します。
つまりLP投資家の出資額を増やすどころか、むしろ減らしてファンド解散という可能性がそれなりにあり、そのVCは次のファンド組成ができず、ということに繋がります。つまりVCの倒産・廃業です。

そして、このように上場企業と比較されることもあれば、
スタートアップ同士で比較されることもあります。

第一話で記載しましたが、VC担当者は1社出資する間に大凡50〜100社との面談を繰り返しています。
当然のことながら、面談を実施したA社、B社、C社、、、とあるなかで、
どの会社への出資が「最もリターンが出せそうか」と相対比較をした上で出資先を絞り込んでいきます。

さらには投資レコードがあるVCは、既存出資先との比較をします。
・業界
・ビジネスモデル
・PL
・KPI
などを中心に、既に株価がついている既存出資先との比較を行い、
割安なのか、割高なのかという検討を行っていくことが多いのです。

シードステージの頃は、
仮説、起業家のバックグラウンド、想定市場規模などをベースに投資検討が進むことが多く、
Valuationも個別企業毎に詳細に検討を進めるのではなく、
例えば「PostValuation2億で、2,000万円の出資」というようなVCファンド内で決められたルールに基づいて、システマティックにValuationが決まることも多くあります。なので(交渉の幅もない為)スムーズに行くことが多いのです。
著名アクセラレーターのY combinaterはHP上で、出資額・Valuationなどを明示しています

このようにシリーズA、つまり本格的なVCラウンドに突入すると、
Valuationに関する考え方が厳しく変化し、常に比較される
という事実をまずはご理解いただければと思います。
その上で「他社と比較した時に、この会社は割安だ、なので本格的に投資検討をしよう!」と思ってもらえるようなIR活動が必要になるのです。

===連絡先===
「フチエと壁打ちしたい」
「資金調達の相談をしたい」
「早くから接点をもちたい」
と言った方々はこちらをご覧ください。
できる限り対応させていただきます。
https://note.com/future_fuchie/n/n5733342d9d8e

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