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”UXと自由”が社会の規範を創りあげる時代に|藤井 保文さん

8月10日、武蔵野美術大学 大学院造形構想研究科 クリエイティブリーダシップコース クリエイティブリーダシップ特論Ⅱ 第13回の授業内にて、「アフターデジタル」を執筆されたビービット社の藤井保文さんのお話を聴講しました。

デジタルの次の世界を描いた「アフターデジタル」を昨年出版されて9万部ほどの人気が出ていることとアフターコロナにおける日本の動向にもマッチする第二版として、7月23日に「アフターデジタル2 UXと自由」を発行されています。

中国・台湾で活動されたご経験を経て中国で視察をしていたレポートをまとめられ本になったということですが、中国の状況をとら前ながら日本の社会への示唆がわかりやすく大変面白いです。

サブタイトルとしてついている「UXと自由」を中心に皆さんにもポイントをお伝えしたいと思います。前提として、リアルとデジタルの関係性について正しい認識が必要となります。デジタルは、リアルチャネルにくっつくようにできたデジタルではない、ということです。リアルを包含するようにデジタルの体験が中心となることと、リアル接点というレアな貴重な場をどう活用するか?が非常に重要になるという点の理解のシフトが重要です。過去にデジタルネイティブのZ世代にインタビューした際に、まさにこの概念で自然に行動していることがわかりました。企業を支える団塊ジュニア層以上の方は考え方を真逆にしないと理解し得ないことだということも合わせて知ることになりました。バイアスを外したUnlearnした状態でこれ以降を読んでいただければと思います。

まずは「UX」、昔言われいていたデジタル上でのUXデザインとは異なります。属性だけでジャッジして製品を販売する際に磨くだけのUXでもありません。人は状況の集合体・モードの集合体で感情が動くものであり、属性だけでジャッジして製品を提供するだけでは顧客が満足できません。よりできなくなった時代とも言えるでしょう。つまり製品主体から体験へとシフトする必要性があります。さらに、顧客を理解するためのデータを収集したら良いとそれを主目的にしてしまうケースがあるが、まずは体験を提供しないと、データを集めることはできないた、体験を提供してデータを集めることで、またさらに良い体験を与えるというループを回すことが重要と語られています。

UXの話のなかで最も面白いと感じた点は、UXが行動変容をもたらすということです。ローレンス・レッシグによる「行動変容をもたらす4つの力(法・規範・市場・アーキテクチャ)」でいうアーキテクチャに着目すると、UXが社会のアーキテクチャの一端を担うということです。中国のDiDi社の事例にあるよう、タクシードライバーの振る舞いとUXが常に紐づくように設計することで、企業としても社会としても民度の高いものを作っていけるという点です。

ここを重要なポイントとしながら、「自由」の話も語ってくださいました。デジタルとリアルが融合する社会としては、企業側がなし得たいビジョンを、UXとテクノロジーで作ってしまうことができる、つまり社会の規範となりうるものを作れるということに等しい。国しかできなかったものが企業や想いを持った人たちが分散的に作れるようになる、そして国民・顧客がこれが良いなと選ぶことが続くと社会の規範になるということです。

自由には、自らを由縁とする生き方としての意味レイヤーと負や不から解放される便利レイヤーがあり、便利レイヤーは大きなプラットフォーマーがつくりあげているので、意味レイヤーを作っていくような自由な生き方を表現していくことを提案されています。

意味のレイヤーでの提案というのは、こういうのがあったほうがいいのではないかという自身が好きな世界観を世の中に提示していくということです。自身の好きな世界観を正しい秩序に基づきながら創っていける会社が今後選ばれ続けるのだろうと思いました。一人の人間としての生き方としては好きの世界観を提示し新しいUXから社会の規範を作っていく生き方を選びたいと感じました。


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