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○○デザイナーと名乗ってしまった時点で良い作品は生まれない!?|川上 元美さん

6月8日、武蔵野美術大学 大学院造形構想研究科 クリエイティブリーダシップコース クリエイティブリーダシップ特論Ⅱ 第4回の授業内にて、川上元美さんのお話を聴講しました。

〇〇デザイン、〇〇デザイナーという一言の呼び名では語り切れないほどの、幅広い作品紹介を時代の流れと共にご紹介いただきました。椅子や家具を作られているイメージが強かったのですが、実際には食器やインテリア、オフィス、橋やガラスのオブジェ、テレビから、テニスのラケットまで様々でした。

一貫して作品紹介の中で出てくるコメントはどのような素材をどのような技術を使ってその作品が出来上がったのかを理系少年のような視点でお話になられていた点です。ガラスの中でもXXというガラスを本当は使いたかったけれど、これになったんだ、畳をこうしてみると椅子の背もたれになるなと思って、、等、使われる素材も活かし方も多岐に渡ります。

1960年頃から2020年まで長くデザインの世界で生きられていることからも、IT機器がなかった時代やまだ高度な加工技術が発展していなかった時期においてのその時の最新の素材や技術を取り入れておられ、そしてそれが時代の流れに合わせてアップデートされていく、常に川上さん自身がアップデートされているのと同義のように感じました。そのように、自身をアップデートしていける動機や根っこにある強い想いが何かと思うと、やはり学生時代からそのような素材や技術に対する好奇心があって、仕事とは関係なく夢中になって探究してしまう姿勢が、結果的にたまたま物作りに活きているということでした。

あの時気になってた素材で作ったらこの作品面白いんじゃないか、この作品を具現化するにはどんな素材がいいのか、を行ったり来たりしながらも、ふとしたときに組み合わさり良いアイデアが生まれると言っておられました。「アイデアのつくり方」(ジェームス・W・ヤング)の本にも書かれているように、アイデアが生まれるのは実は理論がある。全く関係がなさそうだなと思うものを組み合わせることがアイデアをうむひとつのステップであり、その理論や方法論を自然体で体現しているのが川上さんだと感じました。

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デザインの世界はフレームワーク化してしまうと、デザインに必要な姿勢がそぐわれてしまうという欠点があると世の中的にも言われています。フレームワーク化された方法論に沿って、組み合わせの仕方を考えても川上さんの作品は生まれないことは目に見えています。好奇心と探究心で日々考え続けることで、結果的に生まれるものであり、デザインの世界ではやはり好奇心や探究心こそが重要なのだと気づかされました。

最後にもうひとつ、川上さんの言葉をご紹介します。

デザインにセクションを分けていることがおかしい。本来的には一緒にあるはずのものなのだ。

多岐にわたる対象物をデザインされている川上さんだからこそ出てくる言葉だと思います。確かに椅子デザイナー、建築家、といったように、既定された言葉に縛られた範囲で振る舞っている時点で、職種という殻に囲まれ一種のフレームワーク化されたものの上で発想しようと振る舞ってしまうということを意味しており、良い作品は生まれないということを語っていらしているのではないでしょうか。

人間らしくする椅子を作ってみようと考えている私の姿勢として、椅子という固定概念や椅子をデザインするんだという言葉に既定されぬよう、探究心を持って、最終的に成し遂げたい世界や空間をデザインしていきたいと思います。




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