ペルソナに意欲を喚起しよう!
バックキャスティングによって、未来に起こるであろう問題解決について議論してきた。ここでは問題解決に取り組むエンジニアの視点で、ペルソナが共鳴する価値について考えてみたい。事例として『街の住みやすさと魅力』という、しばしばマスコミに取り上げられる街の主観的な比較を取り上げてみる。住みやすさも魅力も、極めて主観的な評価指標であって、絶対値で比較できるものでは無い。それ故に未来の視点で考えやすい。
街における住みやすさを主観的に「生活のしやすさ」という表現で置き換えるとする。これは主観でしか無いので、あくまでも筆者の例え話である。すると、指標として物価の高低、文化施設や病院の有る無し、公共交通機関の有る無し等々、数字で見える指標、即ち定量的に他と比較できる指標が存在していることに気付く。一方の「街の魅力」という観点においては、感性で感じ取るものであり、主観から切り離すことが出来ない。感動、夢、希望、活力源等々、その場への価値付けが、評価者個々人の価値観が尺度となっている。
「もの」が無いと言われる時代においては、住みやすさは、インフラを含めて『便利さ』を感じて頂けることがアウトカムズであり、その創造がエンジニアの他律機能であり、価値として評価されていた。「もの」が行き渡った時代においては、感性によってのみ評価される『魅力』を創造し続けることがエンジニアの価値として評価されている。「もの」から「こと」へ、そして「こと」から「場」の創造を主体的にリードできる企業のみが桁違いの利益を上げている状況は、正にそれを表している。そして、それは「図面請負業」の企業の退場を意味している。エンジニアがソーシャルを意識して、街の在り方を考え、そしてそれをビジョンとして提案することで、多くの若き起業者がビジョンの共鳴者として活躍できる時代と感じる。ペルソナが「住みやすい」という噂を聞くだけでなく、ペルソナに「住みたい」という感情を湧き上がらせるビジョンを、能動的に形作ることが出来る時代である。