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炎の夢



ゆめがほしいの
おかあさん
さんたさんにゆめをお願いするの
完熟のりんご
へたが抜けちゃう位にね
おかあさんのタルト・タタンが
好きなの
りんごは酸っぱい方が
お菓子に向いている みたいな
幻想に恥かかせてあげたいの
わたし星のうさぎだから
月を飛び越えてしまう
そのまんまでいいって言って
をお願いするの
都会の空は明るく滲んでいて
まっすぐ泣くことすらできやしない




物語は続かない
本を閉じて、はい、おしまい
おやすみね
夢はみない
こころあたり
あることばっかり
髪を毟って
私の代理人さん
生まれ直したら太陽が昇っているなんて!
聞いてない
ないことばっかり
鰓だってまだのこっているのに




まだ
探したりないまま
物陰に連れられて
見透かされている
わたしの肋骨
ひまわりの笑顔は
すでに誰かの手垢まみれ
その背骨を灼く火が
とうめい で
薄い縁に触れてみたくなる
滑りやすい坂
連なる未熟なつぼみ

呼吸がまだ深い




投身




炎のかおり
懐かしい
やさしいふるさとのかおり
まだないふるさとのかおり
誰も待ってはいない よ
ゆうぐれは
待っていないよ
長い長い影の分
生きてきたみたいに
足元の影の方が
ずっと暗いみたいに
ゆめをみたいの
麒麟の瞳に
視線を合わせてみたいの
四肢をほどいてみたいの
尾をゆらす
海辺の図形
にだらかな報復
八千代のゆくすえ
輪郭を淡くして
もどかしい煙
(誰も待ってはいねよ)
もう電灯に照らされないから
ゆめがほしい
炎の夢が


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