生存未遂

万年筆の筆跡
すべらかに
ブルーブラックと淡墨
生存未遂

レタスを齧る前歯
午前11時の無人駅
カーネーションの花束
春———
目を伏せる猫
生存未遂

「若者への接種」
を聞き流すゆとり
灰汁を呑むことをおぼえた
昼下がりの推敲
まあ、それでもいいよねって
笑い合って生きていたいだけ
生存未遂
シャクナゲの淡さくらいで
丁度いいから
はずだから

今日もカレンダーに
バツをつける

銃撃戦、いざとなったら逃げました
準備してたのに
揺れるエレベーターで25階まで往復しました
つまりは
生存未遂
未だに解りません
あの人達の
眼差しのひかり
生存未遂

秋の田圃
田圃田圃
田圃田圃
田圃田圃
田圃田圃
田圃田圃
蜻蛉
いや
海だったかもしれない
探しにいくものではなくて
向こうからいずれ気づくもの　
いつの間にやら与えられるもの
捜しすぎたのかもしれぬ
生存未遂
本能と
理性の嵐と
夾竹桃
葉の裏に木洩れ日
あの人達の
そのあとの行為