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本を読むこと。 ~ 森の生活から学ぶ生き方 ~

私の人生に影響を与えた本を紹介している「本を読むこと。」。

今回ご紹介する本はH.D.ソローの「森の生活」です。

H.D.ソローはアメリカの詩人、思想家で、ソローのウォールデン湖畔での生活を描いた「森の生活」は1854年に刊行され、150年以上たったいまも読み継がれるアメリカ文学を代表する古典作品のひとつです。

本書は自然とともに生きた著者の生活録であるとともに、「どう生きるべきか」という人生の問題を探求した哲学書ともいえ、シンプルに生きること、ミニマムに生きることが見直されている現代においてもソローの思想はミニマリズムの古典として輝き続けています。

アメリカの工業が発達し、鉄道が敷かれ、生活が劇的に変わっていくなかであえて「自然」といきる道を選んだソロー、その生き方について書かれた美しい言葉を引用しながら、いくつかご紹介していきます。

心の埃の落とすこと

大抵の人が「家とは何か」を考えてみたことがないらしく、隣人たちと同じような家を持たないといけないと思い込んだために、一生、しなくてもいい貧乏暮らしを強いられている。
ときにはいま持っているものよりも少ないもので満足できるように努めてみたらどうだろうか?
われわれの家は家具でごった返しており、けがされている。
心という家具のほこりはまったくまだ払えてないのに、家の家具のほこりは毎日のように落とさないといけないのはなぜだろうか?
わたしはむしろ戸外に座っていたい。
人間がそばで土でも掘り起こさない限り、草には塵ひとつつきはしないのだか。
「森の生活」 岩波文庫  69項より

身の丈に合わない大きい家に住むこと、不必要な家具を置くこと、そうしたことを争うように焚き付けられる私たちの暮らしですが、それらの管理に費やさなければいけない時間は増えて、自分たちの時間がなくなります。

自分の時間がなくなれば「心」には埃が貯まっていく一方です。
自分に本当に必要なものを見極め、考えること、シンプルに生きることは自分の心の埃を落として、自分らしさを取り戻すことなのです。

放っておいてもよいものの数が多いほど、人間は裕福なのである
「森の生活」岩波文庫 114項より

朝の時間

朝は、一日のうちでもとりわけ記憶すべき時間帯であり、目覚めのときである。
「森の生活」岩波文庫 160項より 

朝のこの時間に機会的な揺さぶりや、工場の始業ベルの音で目覚めるとしたら、その日一日に多くを期待することはできないとソローはいいます。

ギリギリまで寝て、目覚まし時計に何回も起こされ、慌てて着替えて、食事を済ませて、満員の電車で移動する私たちの朝の生活。

朝は一日のうちでもっとも汚れのない時間帯であり、曙光によって満たされた時間は私たちの内なる霊性を目覚めさせ、活力を取り戻すことができます。

多くのエグゼクティブやトップリーダーも朝の時間を大切に過ごしています。

朝日とともに目覚め、読書や瞑想、運動などは精神を安定さえ、脳を目覚めさせ、より活動的な一日の準備となります。

「すべての叡智は朝とともに目覚める」
ヴェーダ(仏教古典)

森の生活

私が森へ行ったのは、思慮深く生き、人生の本質的な事実のみに直面し、人生が教えてくれるものを自分が学び取れるかどうかを確かめたかったからであり、死ぬときになって、自分が生きてはいなかったことを発見するようなはめにおちいりたくなかったからである。
「森の生活」岩波文庫  163項より

ソローは自然の厳しさ対する畏怖や自然の中で人間が本能的に生きることによって気づくことできる「人間の真の価値」について考えていました。

物質的な豊かさと引き換えに増える労働時間と奪われる思考、それは本質的に人として「生きている」ことにはならないとソローは考えます。

森の生活はソローにとって「生きる」ことそのものであり、ヒトとしての本能と感覚を取り戻すことでした。

「自然」のまっただなかで暮らし、自分の五感をしっかりと失わずにいる人間は、ひどく暗い憂鬱症にとりつかれるなどあり得ない
「森の生活」岩波文庫 236項より

自然の身体における効用については現代では盛んに研究されており、うつ病の治療や予防への効果もエビデンスがでてきています。

150年前にからソローはそのことに感覚的に気づいていていました。
また、物質的な豊かさを求める生活が「憂鬱」を増やしていることも同時に指摘しています。

自然に身を浸し、自分を取り戻す時間が現代においても必要とされており、キャンプ人気が高まっているのも偶然ではないと思います。

全身がひとつの感覚器官となり、すべての毛穴から喜びを吸い込んでいる。
私は「自然」の一部となって、不思議な自在さでその中を行きつ戻りつする。
「森の生活」岩波文庫 233項より

まとめ

ソローは人間が人間らしく生きるためには、物質的に満たされることではなく、必要最小限の物と仕事があって、自分の時間を最大限にすること、そして自然の豊かさや厳しさ、美しさを身体全体で感じ取り、五感を刺激することで健康的にそして謙虚に生きることできると考えます。

最近ではミニマムに生きること、自分の時間を持つこと、自然の中で過ごすことの身体に与える影響について、様々な研究がなされ、ソロ−の思想が実際にうつ病の予防や生活習慣病の予防に効果があることが示されてきています。

自分らしく生きるために、自分なりの「森の生活」を見つけ、生活に入れ込んでいくことが、健康的に、そして活動的に「生きる」ためには必要なのかもしれません。

人生は、地球上で過ごした年数で
測られるのではない。どれだけ楽しんだかで測られるのだ。
ヘンリー・デイヴィット・ソロ−(思想家、作家)

最後までお読みいただきありがとうございました。


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