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からだのこと。 ~ メタボリックシンドローム ~

メタボリックシンドロームはご存知の通り、21世紀の伝染病と言われ、高度肥満指数、高血糖、高血圧、高血中トリグリセリド(中性脂肪)、高ウエストサイズ、HDLコレステロール(善玉コレストレール)の減少など、多くの諸症状を含む生活習慣病です。

メタボリックシンドロームの原因として従来は食事カロリー摂取量の過多と運動によるエネルギー消費量の過少によって生じた、エネルギー過剰であり、上記の諸症状はその結果であると考えられていました。

しかしながら、なぜ現代の太り過ぎの人々が昔よりも糖尿病になりやすいのか、なぜ諸症状が現代では幼児期から表れるのか、なぜ貧しい国々で増加しているのか、従来の仮説では説明できない矛盾が生じているのも事実です。

今回はメタボリックシンドロームに関わる新説をご紹介しながら、メタボリックシンドロームとの付き合い方について考えてみたいと思います。

メタボリックシンドロームの原因から考える新説

例えば、睡眠時無呼吸や超低カロリー・超低脂肪の食事、断食、低血糖を促進する食事、睡眠不足、病気、怪我、手術、寒さ、栄養不足、抗酸化物質不足、酸化ストレス物質への暴露、ミトコンドリア病などではエネルギー供給を減らすか、需要を増やすものであるにも関わらず、メタボリックシンドロームを促進させる原因となることがわかっています。

また、エネルギー不足から守ってれる抗酸化物質であるココアやシナモン、ミトコンドリアを活性化させるコエンザイムQ10などは、逆にメタボリックシンドローム症状を軽減すると言われています。

これらの事実から、メタボリックシンドロームはエネルギー欠乏への適応反応と考えられるようになってきました。

蓄積脂肪もブドウ糖も、トリグリセリドもそもそもは補助エネルギー源であり、血圧はこれらを組織に運搬するために高くなる必要があります。

細胞エネルギーは細胞と生物の生存に不可欠であり、常時必要とされていますので、細胞にエネルギー不足が生じる、もしくは生じている結果、その適応として、身体に過剰にエネルギーを貯蔵しておいているとの考え方が、エネルギー欠乏仮説です。

以前の世代がエネルギー不足を経験した集団では、肥満とメタボリックシンドロームが増加しており、また、胎児期における子宮内のエネルギー供給不足は成人後のメタボリックシンドロームの要因となることがわかっています。

このエネルギー欠乏仮説は先の矛盾点を説明することができるばかりか、
カロリー摂取の増加と運動の減少という一般的なメタボリックシンドロームもエネルギー適応の一環として説明することができます。

メタボリックシンドロームがエネルギー消費を抑えるために疲労や睡眠時間が増加することにも関連しています。

先進国でメタボが多い理由

では、なぜエネルギー不足とは無縁と見られるアメリカや日本などの先進国でもこれほどメタボリックシンドロームが増えているのか?

それはエネルギー生産を阻害する、低栄養、低抗酸化物質、高酸化物質の食品が増えた食生活ミトコンドリアの機能不全を引き起こす、環境中の酸化ストレスの爆発的増加と言われています。

つまり、体内の「ミトコンドリア」の機能不全によって低エネルギー状態となり、それに適応する形でメタボリックシンドロームが増えているのです。

環境中の酸化ストレスを引き起こす物質には、金属および重金属(魚に含まれる水銀や高果糖のコーンシロップ)、プラスティック、日焼け止めや化粧品、合成洗剤、衣類の柔軟剤に含まれる化学物質、ホルムアルデヒドを含む家具や衣類、石油化学製品、携帯電話や電子機器による電磁場、芳香剤、殺虫剤、除草剤、処方薬と一般薬、抗生物質、空気中の汚染物質および水中の汚染物質、食品の合成添加物、抗菌石鹸などと枚挙に暇がありません。

これらは我々のすぐそばにある日用品であり、避けることが難しいものが多くあります。

これはあくまで仮説の一つですが、エネルギー欠乏説はその症状の関連性と有効な治療方法についても矛盾なく説明しています。

メタボと寿命

感覚的にメタボのヒトは血圧が高く、心不全や糖尿病のリスクも高いため「早死」しそうなイメージがありますが、大規模疫学調査の結果では、メタボは高齢者の自立喪失(要介護発生もしくは死亡)に関与していませんでした。

東京都健康長寿医療センター研究所の研究チームは65歳以上1524人を対象に、メタボと要介護の関係について平均7年にわたる追跡調査を行い、65歳以上の人が7年後も自立して生活できるかどうかは、男女ともに、その人がメタボか否かとは相関関係がありませんでした。

また、日本の男性高齢者の場合、腹囲76センチ未満のやせ型の人のほうが、逆に死亡率が高いというデータも別の追跡調査で示されており、これらの結果も先の「エネルギー欠乏への適応」という仮説を裏付けています。

つまるところ、メタボリックシンドロームは私たちの身体に起こっているエネルギーの欠乏を補い、私達の身体を守ろうとした結果起こるものなのかもしれません。

これらの酸化ストレスをすべてなくすことは、もはや私達の生活において不可能かもしれませんが、親として、社会の一員として食生活や住む環境について考え、どのような環境を次世代に残していかなければいけないのか、
少し出てきたお腹を眺めながら考える必要があります。

まとめ

メタボリックシンドロームはエネルギー欠乏の適応反応である。

エネルギー生産を阻害する、低栄養、低抗酸化物質、高酸化物質の食品が増えた食生活とミトコンドリアの機能不全を引き起こす、環境中の酸化ストレスの増加がエネルギー欠乏の原因となる。

メタボリックシンドロームを持つヒトのほうが、要介護度の割合が低く、寿命が長くなる可能性がある。

至上の処世術は、妥協することなく、適応することである。
ゲオルク・ジンメル(哲学者・社会学者)

お腹のお肉はエネルギーの貯金。
最後までお読みいただきありがとうございました。

メタボを正しく理解するための読書

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