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遊んでいるつもりだったのに「頑張っている」と褒められた話

大学院に進学して、嬉々として研究に打ち込んでいる仲間を見て、ああ、こういう人には敵わないなあ、と思った僕。

その話は、前回の記事に書いた。

そのころ、僕にはのめり込んでしまったものがあった。
それは、トライアスロンというスポーツだった。

僕は、大学院生の本文である研究をないがしろにして、トライアスロンのトレーニングばかりをしていた。
本当はもっと、自分の勉強と研究に時間を割かなければいけないのになあ、と、後ろめたい気持ちを持ちながら、遊んでばかりいる自分を責めつつ。

トライアスロンにのめりこんだ経緯

大学4年の夏に、遊びでテニスをしていた時に足首を捻挫してしまった。大学時代はテニス部に所属していた僕だったけれど、4年生になってからはあまりテニスをしていなかった。そのおかげか、当時はちょっとだけ太ってしまっていた。

足首を捻挫した僕は、このけがはウェイトオーバーが原因だと思って、この夏にダイエットをすることを決意した。

ダイエットの知識はなかったけれど、食事制限と運動をすれば痩せるであろうことはわかっていたので、何らかの運動をすることを考えた。

でも、足首を捻挫してしまっているので、できる運動は限られる。

ラッキーだったのは、季節は夏で、大学のプールは使い放題だったことだ。足首を捻挫しているので、走ることはできない。
しかし、水泳ならできると考えたのだ。

ところが、実際に泳いでみると、水泳も足首にかかる負担が大きいことが分かった。バタ足はできなかったし、平泳ぎも出来なかった。仕方がないので、バタ足を極力せずに、上半身だけのクロール、つまりプルだけで泳ぐことにした。

この泳ぎ方で毎日、大学のプールで泳いだ。
そうしているうちに、プルだけで1km泳げるようになった。

丁度そのころ、本屋のスポーツ雑誌コーナーでトライアスロン専門誌に出合た。そこで、トライアスロンというスポーツがあるということを知ったのだ。プルで1km泳げるなら、トライアスロンもできるのではないか。
そう思ったのが大学4年の時だった。

大学院に進学した僕は、近所のスポーツサイクルショップに出かけて行って、トライアスロンをやってみたいと相談してみることにした。その時、店内にたまたま地元のトライアスロンクラブの人がいて、僕をトライアスロンの観戦に誘ってくれたのだ。

その観戦を機に、僕は一気にトライアスロンにのめりこんでしまったのだ。

先輩の衝撃の一言

当時、僕の所属する研究室に、大学を一度卒業して、企業に就職した先輩が研究生として戻ってきて、研究に明け暮れている人がいた。

その先輩は、僕なんかと違って、本当に真摯に研究に取り組んでいた。その姿勢は素晴らしかったし、人柄も素晴らしい方だったので、僕は彼をとても尊敬していた。

それに引き換え、僕は、走って、泳いで、自転車を転がしてばっかりで、真っ黒に日焼けしていた(笑)

こんなに遊んでばかりでいいんだろうか。
そんなことを思いながら、でも、やめられなかった。

そんなある日、この先輩が、僕に向かってこんなことを言ったんだ。

「ふっちーはすごいなあ。毎日毎日、たくさん走って。俺にはできないなあ。本当によく頑張ってるよね。」

僕は、彼の人柄をよくわかっていたし、その言い方も含めて、別に茶化したり、嫌みを言っているのではないことは明らかだった。
本当に、素直に、「すごいなあ」と言っているのはよくわかった。

まさか、先輩が僕のことをそんな風に見ていたなんて思ってもみなかった。
それは、僕には驚くべき言葉だったのだ。

いやいやいや、あなたのほうがすごいですから。僕なんか、遊んでいるだけですから。と、心の中で思った。

でも、その時に思ったのは、「自分では遊んでいるつもりだったのに、傍から見ると頑張っていると見えることがあるんだ。」ということ。

頑張っているつもりは全くなかった

当時の僕には、「頑張っている」という感覚はまるでなかった。
「勉強をさぼって遊んでいる」という感覚だった。

それなのに、尊敬している先輩から「頑張っている」と言われたことが衝撃的だった。

自分が本当に好きでのめり込んでいることは、人から見ると「頑張っている」と見えるということ。
その事を、僕はこの時に知った。

頑張るって、「嫌なことでも、自分に鞭を打って無理やりやり通す。」みたいなイメージがあったんだけど、遊んでいることでも頑張って見えるんだということは、新鮮な気づきだった。

遊んでいたんだから、苦しさも何もなかった。
楽しかった。
好きなことをやっていると、「頑張ること」も楽しいのだ。

好きなことをやっている人は、こんな気持ちで物事に取り組んでいるのだから、「嫌なことを無理やり自分に鞭うってやっている人」が適うわけがないのだ。僕は、改めてそのことを実感した。

(つづく)

自分がうつ状態に陥って、そこから這い上がってくる過程で考えたことなどを書いています。自分の思考を記録しておくことと、同じような苦しみを抱えている人の参考になればうれしいです。フォローとスキと、できればサポートをよろしくお願いします!